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2021年01月14日(木)

冬の日常?~冬の実測その1~(morinos建築秘話49)

2020年暮れから2021年初冬にかけて、寒波の到来とともにmorinos周辺でも降雪がありました。

下の写真は2021年1月8日のmorinosです。
コロナ渦の影響で、不要不急の外出や県をまたぐ行動の自粛のお願いから一般来場者の方はご遠慮いただいていますので静かな年はじめです。
デッキの雪も踏み固められず、きれいなままです。

室内では、スタッフの方だけが日常?(来場者がいないのは非日常?)業務として、いろいろ面白い企画を練っているようです。

morinos周辺のフィールドもこの雪化粧です。いつもの賑やかさとは異なり、静謐な印象が強いレアな写真です。

1月8日は晴れ間もありますが、雲も多く、晴れたり曇ったりの天気。しかも明け方は氷点下5℃という厳しい冷え込み。

morinosでは、夏の実測報告でも紹介した温湿度を記録する装置を設置して来場者の誰もが現在の気温を見れるようにしています。

morinosの冬日常?の温熱環境はどうだったでしょうか。
特に冷え込みが激しかった1月8日~10日の温度データを見てみます。

まずは外気温と日照時間を見てみます。
折れ線グラフが外気温です。
実践がmorinosの建物北側で実測したデータです。寒すぎて計測器がうまく動かずデータが欠損している部分があります。
点線が、気象庁が設置している美濃気象観測所のデータです。長良川添いにありmorinosよりも少し気温が低いですが、概ね同様の変化を示しています。

オレンジの棒グラフは日照時間です。
1時間ごとの集計ですので、右のメモリの1まで伸びているとその時間は晴れていたことになります。

8日は朝の冷え込みが厳しく実測で-4.5℃(気象観測所データは-7.1℃)。日中に気温が上がりますが、最高気温1.6℃という冷え込みです。晴時々曇で日照時間もまばら。
9日の朝は-5.5℃。この日は比較的晴れ間も多いですが、最高気温は3.2℃。10日の朝も-2.8℃、日中にと3.1℃。

美濃市1月上旬の平年値(1981年~2010年の平均)は、最低気温が-0.6℃、最高気温が8.5℃ですので、3日続けてかなり寒い日でした。

では、morinos室内はどうだったでしょうか。先ほどの外気温に重ねてみてみます。

折れ線グラフが4本あり、高さを変えて計測しています。
床下(濃茶)、床上(黄色)、腰高(オレンジ)、頭高(赤)です。

明け方は3日とも10℃を少し切るくらい。
日中は25℃~30℃。かなり暖かいというか暑すぎるくらいです。

morinosでの熱供給は、①日中のたっぷりの日射熱、②薪ストーブ、③床下(床上)エアコン、④その他(人体やOA機器等)です。

熱供給や建物性能については過去の建築秘話も参考にしてください。
断熱と日射熱制御を考慮した温熱性能(morinos建築秘話28)
薪ストーブとエアコンの空調設備計画(morinos建築秘話29)

スタッフの方に運用状況を聞くと、朝morinosに着いたらいつも床下エアコンと薪ストーブに着火するとのこと。
徐々に日射が入ってきて暖かくなったらエアコンをきったり、薪ストーブの炎を緩めたりするようです。
来場者がいる場合は、(冬なのに)扉をあけっぱなすことも・・・Σ(・□・;)。

そこで、電力消費量も合わせて実測していますので、上のグラフに重ねて、エアコンの稼働状況を見てみます。

緑の山が電力消費量で、右のメモリで見ます。
緑の山の大きさを見ると、8日(金)、9日(土)が大きく、朝から夕方までエアコン2台稼働、10日(日)は1台稼働ということがわかります。

さすがに冷え込んだ日は朝から2台運転ですが、平年程度であれば、エアコン1台+日射取得となりそうです。

2台稼働していると、1時間で約2.5kWhの電力消費量です。27円/kWhの電気単価とすると、68円/時間程度。外気温でエアコンの効率も変わりますが、10日(日)の1台運転時は1kWh以下ですので、27円/時間を切っている感じですね。

温度変化を見てみると、頭と腰の高さの温度変化はあまりなくほぼ同じように推移しています。
足元は少し低めですが、朝から同じように温度が上がっています。これは、日射熱と床下エアコンのゆるい熱源のため、上下の温度ムラが出にくい状況にあるためです。安定しています。
例えば石油ファンヒーターだと、120~140℃と高温の空気をを出しますので、一気に上方に行ってしまい上下の温度ムラが出てしまいます。

また、床下は床下エアコンの影響で、ほんのり上昇しますが温度変化が緩やかです。
ここに熱を蓄えておくと、扉をあけ放った際も、暖かい空気が一気になくなるということがない熱だまりになります。
もう一つの冬の建具の開放対策は、床や壁、天井の素材への蓄熱です。蓄熱できていれば、外気が一気に入ってきても、建具を閉めれば壁の熱が放熱されてすぐに元の室温に戻ります。(部材への蓄熱は別の建築秘話で書きますね。)

日中30℃を超えて少し暑めの日もあります。これはエアコン、薪ストーブ、日射熱の3つが合わさってしまっているために発生しています。それぞれの熱供給を分散して取り込めればいいのですが、実はなかなか難しい。

朝の室温がもう少し高ければ、明け方のエアコンをつけずに、日射熱取得まで粘って(+薪ストーブ)熱供給できて良いのですが、建物の運用上、朝の室温を高温に維持するのがなかなか難しいのです。
住宅であれば、就寝時まで使用していますので、例えば0時に暖房を切っても翌朝8時までの8時間程度の室温降下時間ですが、morinosは18時には暖房や日射の熱供給がストップします。朝の8時までは無暖房で14時間。さすがに下がってしまいますね。

例えば上のグラフで、10日の夕方以降も電力消費もあります。これは会議のために夜まで照明を使用していたためで、薪ストーブも使用しています。ちなみに翌日の11日(月)の朝の室温は14.5℃です。この温度であれば、太陽が出るまで薪ストーブだけでもアリかもしれません。

そこで、考えられる工夫としては、帰り際に薪ストーブに薪を多めに放り込んで、流入空気を絞って少しづつ燃焼させることでしょうか。

冬に建具を開け放ったり、夜間使用しないなど、morinosの特殊な運用方法でも、いろいろ考えていくと面白そうです。

准教授 辻充孝

※建物の詳しい説明はmorinos建築秘話シリーズをご覧ください。
morinos建築秘話シリーズ