事前に1ステップ:morinos構造計算の流れ(morinos建築秘話35)
一見、複雑な構造に見える建物ですが、事前準備を1ステップ追加するだけで、あとは一般的な構造計算をしています。
構造計算の流れについてお話しします。構造計算の流れが分かると一般的な木造住宅などでも大空間を構成するために構造架構を利用しやすくなるのではないでしょうか。
水平力を負担する構造要素として、構造架構と耐力壁を併用し、開放的な空間と高強度の構造を実現しました。
耐力壁については一般的な構造計算により検証できますが、構造計算に入る前に構造架構は事前準備が必要になります。
その構造架構の事前準備では、東西方向と南北方向では構造架構の強度は異なるため、各々の方向で許容耐力を求める必要があります。
構造架構の許容耐力を求める方法として、コンピュータを利用した構造解析を行います。
コンピュータ上での構造のモデル化をする際には、完全な剛接合ではないため木造の接合部の特徴を捉えたモデル化が必要になります。
構造架構の許容耐力を構造解析により求めることで、一般的な耐力壁の構造計算と組み合わせています。
一般的な構造計算(許容応力度計算)とすることで、一般的に設計可能な構造を実現できました。
次に、構造架構を有する木造建築の構造計算の流れの概要をステップに分けて示します。
【Step 1】 一般的な構造計算に先立ち、構造架構の許容耐力を構造解析により求めます。この時に設計用の許容耐力に変換(低減※)する必要があります。
※ 構造架構を構成する木材の材料品質のばらつき・乾燥のばらつき・施工精度のばらつきなどの不具合を構造設計時に考慮した低減
【Step 2】 構造架構の許容耐力を耐力壁と同様に扱い、一般的な構造計算(許容応力度計算)を行います。
◆morinosの構造架構の構造解析について
構造架構の構造解析は、一般的な線形構造解析により、構造架構の許容耐力を求めています。
構造架構をモデル化し、3次元構造解析により特定変形時の耐力を構造架構の許容耐力(東西方向:168kN、南北方向:157kN)とし、1mあたりの等価耐力壁の壁倍率(東西方向:8.58倍、南北方向:16.03倍)を算出ています。
ここから安全側に判断し、設計用の等価耐力壁の壁倍率(東西方向:7.20倍、南北方向:13.30倍)とし、面材耐力壁を考慮して構造計算を行っています。
教授 小原 勝彦