樹皮付き方立(morinos建築秘話3)
morinosではさまざまな方法で木の活用をしています。
前回紹介した「丸太の素性(morinos建築秘話2)」もその一つですが、今回紹介するのは、樹皮付き方立です。
方立(ほうだて)とは、ガラスや開口部の横に取り付けられる垂直の桟のこと。
下の写真の大きな建具やガラスの横に少し黒っぽい縦のラインが入っているのが方立です。
この方立に近寄ってみると、スギの樹皮が付いているのがわかります。
建築で使用する際は、樹皮を取って使用するのが普通です。これは樹皮と木部の間に虫が巣くったり、乾燥過程で勝手にはがれてしまうためです。
今回は、室内外を隔てるガラス壁の部分の方立に使用するため、外部側には、もともと山で生きていた姿を残し、室内部分には、製材・加工された材を見せ、木材の利用過程を視覚的に表現しようと、樹皮付き方立に挑戦しました。
樹皮を残したまま乾燥するには、ひと工夫が必要です。
下の写真は、乾燥機に入れた際の状態ですが、ところどころPPバンドで固定し、樹皮がはがれにくくしています。
また、遠赤外線木材乾燥機を用いた人工乾燥で、極力気流感もなくし樹皮を残した状態で乾燥させることができました。
材の目途がたったところで、どのように方立を設計するか。。。
建物のメイン構造は、V字丸太や大梁で支えて、地震や台風に耐えますが、強い風が大きなガラス面に当たった際に、ガラス面が室内反っていくのを支える機能がこの方立には求められます。
そのため、設計初期段階では、方立を600mm間隔、見込み(奥行)380mmと木材の存在感を出すために大きめに設計していましたが、隈さんへのプレゼン時に、「室内外はなるべくシームレスにつながっている方が良く、方立の間隔を広げて、見込みも短くして、斜めから見た際にも、室内が見えるようにするのがいいのでは」とのご意見もいただき、構造の学生・教員と間隔や断面寸法を検討していくことになりました。
模型や3Dパースで検討し、方立間隔を1000mmに拡張し、見込み260mmに小さくとすることにしました。この感覚で、いい具合に外と内を区切ることができ、内外で独自で活動する際にも邪魔にならない絶妙な距離感が得られるようになりました。
しかし間隔が拡がったために、木材だけでは大きな外壁面に当たる風圧に耐えることが難しく、内部に鉄骨の補強を入れたハイブリッド構造となりました。(下の写真もグレー部分が鉄骨)出来上がった現在では、表面からは木材しか見えません。
内外両側から鉄骨を木材で挟み込むことで、鉄骨の力強さを得つつも、鉄の熱を伝えやすく結露を起こしやすい弱点は木で包み込むことで克服しています。
入口横に何気なく通り過ぎてしまう方立ですが、ちょっと立ち止まって見てください。こんなところにもいろいろな工夫が詰まっているのです。
樹皮ははがれやすいので、はがさないようにあたたかく見守ってくださいね。
准教授 辻充孝