見せる収納のランダム格子(morinos建築秘話15)
morinosは日本で初めての「森の入り口」で、人と森をつなげるイベントをたくさん開催する施設です。
イベントプログラムには、さまざまな道具が登場します。一体どんな面白いモノが使われるのか、楽しみですよね。
そんな楽しい道具を収納庫に仕舞っているだけではもったいない。
ただの納戸ではなく「見せる収納庫」にすれば、来た人がワクワクするような道具を覗き見ることができます。
だからmorinosの収納庫は普通の壁ではなく「木の格子」。向こう側が見えて、光と空気が行き来できるようになっています。
あと、中が見えているのでいつも綺麗に片付けながら運用する効果も狙っているのです。
今回はこの「格子」の話です。
格子というのは普通、寸歩の同じ材をたくさん並べていくのですが、morinosの格子デザインはちょっと変わっていて「見込み寸法」の違う三種類の材を等間隔に並べています。「見込み寸法」というのは、材木を前から見たときの奥行き寸法のことですね。三種類を規則性なく、ランダムに並べて壁をつくりました。
どうしてこんな面倒なことをするのか?
それは規則性のないランダムな配置が、室内を、ちょっと有機的な空間にするからです。それがmorinosに合っていると判断し、このデザインにしています。
「えー?本当?そんなに違うの?」と思うかもしれませんが、これがもし、普通の格子だったら……
ね?同じ寸法の格子だと、無機質で、カタい印象でしょう?morinosに合わないですよね。
morinosは空間全体を、丸太や土壁などの有機的な曲線と、梁や柱の軽快な直線でバランスをとって空間構成しています。
しかもこの場所は、室内のシンボルとなる土塗り壁のすぐ裏。室内空間の主役級であるこの土壁は、岐阜県の誇る左官職人挟土秀平氏とアカデミー学生のワークショップでつくられ、想いのこもった壁です。
その後ろで、無機質につまらなそうにしている格子より、温かみと愛嬌のある格子にした方が、その場所の構成として素直だと思いませんか。
でも三種類でランダムに、とは言っても、どのくらいの寸法にするべきなのでしょう?
そういうデザインの塩梅って、どうやって決めたらいいのでしょう。
答えは「原寸でつくってみて考える。」ですね(笑)。
身も蓋もないですが、これが一番です。
でも全部正確にはつくれないし、見込み寸法と間隔を何回も検討する度に配置し直すのは原寸模型では大変すぎる。ということで3Dモデリングソフトの登場です。
このように何度も検討し、2Dの図面に書き直して、現場に送ります。
いかがでしたか?
morinosには、morinosのコンセプトを一貫させるための、こうした細かなデザインの検討結果が、いたるところに散りばめられています。
ご来場の際には、ぜひランダム格子にもご注目ください。