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2018年03月06日(火)

なんでこの法律があるの?「木造建築法規」

「建築基準法?なんか難しくて、堅苦しくてイヤだ〜〜〜!」
と、みんな感じていると思います。私もそう思います。
特に私のように建築学部を出ていない人間にとってはなおさらです。12年前設計事務所に入社したとき、何か設計する度に「法律の壁」が立ち塞がるのは、芸術の世界から来た自分には衝撃的でした。

そんな建築の世界で私に最初に任された仕事が「建築確認申請」担当です。「建築確認」とは、建てる前に法をクリアしていることを証明する手続きです。つまり、設計中の全物件の法規調整が、私の肩に乗ったのです。今考えても信じ難い人事ですが、とにかく私は何もわからないので、役所に行って建築指導課に質問を繰り返しました。しかし説明を聞いてもチンプンカンプンです。接道義務って何?耐力壁て何?というところからなのですから。しかも当時世間では耐震偽装事件が発生し、建築基準法の審査は、一層厳格なものに変わったところでした。申請書類の量が数倍になったのです。

それから12年、苦心の末たくさんの申請をクリアし、審査の担当者に「施行令第130条の12の適用は?」と言われてもなんのことかパッとわかるようになりました。

そんな私が受け持つ「木造建築法規(Cr科)」「建築法規(En科)」という授業ですので、私自身の経験をもとに「極限までわかりやすい木造建築法規」をモットーにしています。

授業の目的は以下の3点。
1「法律用語に慣れること」
2「設計に係る諸要件の整理ができること」
3「わからないことが起こった時に法令集で解決できること」

そして最後に「即!実務に使える”美しい”適法設計」という講義を入れて半日×4回の授業でした。

限られた時間なので、できるだけ実践的な内容に特化しています。
実務で必ず検討する「面積算定」と「斜線検討」と「採光計算」をしつこいほど計算。実際の確認申請図書を穴埋めする形で、書類をどうつくるかも学びます。

「面積算定」も「採光計算」も「斜線検討」も、規制の厳しい東京の狭小地という設定です。実際に私が実務で苦戦を強いられた物件を例に行いましたので、難しかったかもしれません。でもこういう学びは、難易度の高いものをクリアできるようになると、後から何でもクリアできるようになるものです。みなさん、なんども計算しているうちにだんだん慣れてきた感がありました。

授業では「何のためにこの法律があるのか?」という点を詳しく解説しています。道路からの高さが決まっているのはどうしてか?建物の日影は3Dで見るとどの程度伸びて、どうして規制があるのか?

法律はただ守ればいいというものではありません。とくに建築基準法は第一条に「最低基準」と謳ってあります。
自分の設計している建物は、本当にその性能でいいのか?その寸法でいいのか?法文には最低基準が載っているだけで、心地よく安心できる性能や寸法は書いていません。基準法どおりにつくってもいい建物にはならないのです。法律のせいにするのではなく、自分で判断するのです。

「何のためにこの法律があるのか?」ということを自分で考え「基準と責任は全て自分の中に持つ」のが建築(だけでなく、何かを創造する仕事)をする人間のとしての第一歩ではないでしょうか。

この授業で聞いた法律をキッカケにして、自分で考えてつくることができるようになって欲しいと思っています。

 

木造建築教員:松井匠