オーダーを理解してモノを作る「家具をつくる(自力建設)」
年度の終わりにかけて、木工専攻の学生と建築の学生が協力して家具を作ります。この家具が入るのは、建築の学生が1年かけて取り組んできた自力建設です。建築の学生は施主の使いやすい家具を考えて、木工の学生は1年間かけて習得した技術でそれを形にします。今年の自力建設は「里山獣肉学舎」、有害鳥獣として捕らえた動物を解体するための施設です。さて、この中にどのような家具を計画し、製作をしたのでしょうか?
まずは建築の学生が考えた家具のプランを持ち寄っての打ち合わせです。ただ、この絵のままに形にするのは木工専攻の学生から見ると難しそうです。さて、どこの部分の要望を残し、どこの部分を改善していくか?皆で意見を出し合います。
今回の製作は木工の学生と建築の学生が共同して行います。もちろん、建築と木工では普段から扱う機械や技術が異なりますので、お互いに違う視点でもって課題に取り組むことになります。それぞれが自分の意見を押し通すのではなく、相手の持っている知識やスキルを聞きながら良い答えを探していきます。しかし、今回難しかったのは架台と呼ばれる獣を吊るす台。場合によっては100㎏近い大物を吊るすこともある家具 (道具?)です。これはもちろん、教員だって作ったことが無いものです。なかなか意見がまとまらず、最後にはとりあえず進めて問題があれば修正する方針でスタートすることになりました。
今回、製作する家具の構造はあえてシンプルなDIY的な技術で作る設計にしています。これは工房の木工機械を使えない建築専攻の学生が共同で作れるようにという意味もあります。それでも、木工の学生が加工する精度は普段の建築のそれとは段違い。また、木工の学生は建築の学生が用意した普段使わない金具を用いることで、普段と違った構造の作り方に触れることができます。
「建築的な家具」や「木工的な収まり」といった表現をすることもありますが、それぞれの分野は近いようで異なる部分が多くあります。そんな「違い」をお互い知ることも、この授業の1つの側面になっています。
そうこうしたやり取りを経て作られたのが、これらの作業台と架台です。今回は5日間の製作日程を取っていたのですが、製作物に耐水性が求められたために多くの塗装時間(乾燥時間)が必要になり、工程の管理に苦労させられました。しかし、その甲斐あってかなかなか良い物が出来上がったのではないでしょうか?
これらの家具は、里山獣肉学舎で行われる今年度からの実習で活用されていく予定です。今後、使っていく中で課題が出てきた場合は、再度修繕、改善を施して使い続けていくことになると思います。目下のところの悩みは、使われているところ(動物の解体)を見に行くかどうか・・?という内面の葛藤ですね。
さておきまして、こうした実用のフィードバックをしながら作り・学ぶことができるのがアカデミーの木工や建築の面白さだと思います。学生の皆さん、お疲れ様でした!
木工専攻 講師
前野 健