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2020年09月13日(日)

エンジニア科の学生が中津川市の林業文化を学んで来ました

アカデミーと連携協定を結んでいる中津川市でエンジニア科1年生の宿泊研修を行いました。

エンジニア科1年生では春と夏の終わりに野外宿泊実習を行います。今回は中津川市にコーディネートして頂き、2日間の行程で「加子母森林組合」「山守資料館」そして、「裏木曽古事記の森」と呼ばれる国有林の見学を行いました。

加子母森林組合の工場

加子母森林組合の工場でレクチャーを受ける学生達

まず最初に訪れたのは加子母森林組合の工場です。
加子母森林組合は森林組合では珍しく、自前の木材加工工場を持っています。ここでは地元の東農ひのきで作った製品を開発して、多方面に営業を仕掛けています。近年、木材価格が下がる中でどうやって利益を生み出すかが林業現場での課題となっています。加子母森林組合では、先代から受け継がれてきた大切な森林をどう残していくか考える中で、自社製品開発を始め、学校や保育園の家具から玩具にいたるまで、幅広い木製品を作るようになったそうです。

モクモクセンター

森林組合や地元メーカーが作った木製品は隣接するモクモクセンターでも購入できます

森林組合の事務所が入っている建物は、地元の木製品の販売も行っています。中には生産地ならではのお買い得品もあり、学生たちもお土産探しを楽しんでいました。

木材市場の見学

午後は雨の中、木材市場の見学

お昼ご飯を食べた後は、加子母森林組合が管理している木材市場の見学をさせて頂きました。

全ての森林組合が市場を持っているわけではありませんが、加子母森林組合では市場があることで材の相場が直にわかるそうです。自分たちで切った木材にどのような値が付いたか。また、どれくらいの儲けが出てくるのかを肌で感じられる環境にいることで、木材の値や出荷の仕方についても問題意識が高まったそうです。

他の森林組合には無い工場を運営したり、県外にまで積極的に営業をかけるようになったのも、市場があったのが理由の1つにあったようです。しかし、それ以上に説明して頂く言葉の端々から、山を育ててきた先祖への想いや、山や木に対する想いの強さが皆さんのモチベーションになっていることを感じました。

山守資料館

なぜ、この地域ではこんなにも、山や木への思い入れが強いのか?
その答えは次に訪れた山守資料館で見つけることができました。

この山守資料館は1730年に当時の尾張藩から、この地域の山守(やまもり:藩の森林の管理・取り締まり役)に任命されてきた内木家に伝わる古文書や資料を調査し、その一部を展示しています。この日は館長の内木哲郎さんにレクチャーして頂き、この地域の森林や林業の歴史を当時の生活文化から、森林施業にいたることまでを幅広く面白く、たくさんの資料を交えてお聞きすることができました。

内木館長によるレクチャー

内木館長によるレクチャー

館長のお話で「当時の森林管理は晴耕雨読、緩々(ゆるゆる)として行う、これが本来の林業の姿」という言葉があり、現代林業の話題しか耳にしない学生にはけっこう刺激的(?)に聞こえたかもしれません。当時の山守は藩命により財産となる木を厳しく管理して育てる一方で、山で読書をしたり、趣味にいそしんだり、ある日は献上品に納める鷹の雛を追うようなこともあったそうです。

大切に守り育てられてきた一部のヒノキは、今は木曽ヒノキと呼ばれ特別な材として扱われています。明日に行く予定の国有林は、木曽ヒノキが育つ森です。学生たちも内木館長のレクチャーを聞いて予備知識をばっちり入れることができたと思います。

護山神社にお参り

二礼、二拍手、一礼で護山神社にお参りします。

一夜明けて、2日目はいよいよ裏木曽古事記の森(国有林)に入ります。

まずは護山神社で安全祈願のお参りをします。
この神社には、過去に国有林で切られた大ヒノキの輪切りや三ツ緒伐りのサンプルが展示されています。その大きさに一同驚きつつ、マイクロバスに乗り国有林に向かいました。

国有林では、式年遷宮のヒノキを切った斧入れ式の跡地やヒノキとサワラの合体木、2代目大ヒノキなどをガイドして頂き、学生たちも森林の違いや木の違いを目の当たりにし、初めて見る木の切り方や習わしを知ることで、林業についても見識を広めることができたのではないかと思います。

木曽五木クイズ

ガイドの前川さん、三浦さんから葉っぱから樹種をあてる木曽五木クイズを出して頂きました。

斧入れ式跡地で

斧入れ式跡地で三ツ緒伐りの「3」(写真左上の切り株が三ツ緒伐りの跡)

2代目大ヒノキの前で

2代目大ヒノキ

今回、天候が目まぐるしく変わる中、土砂降りやにわか雨に降られるなど、学生たちも大変な思いもしたと思いますが、2日間を通して中津川の林業、そして林業に関わる地域と歴史の関りを深く学ぶことができました。見学地の皆さまには日常の業務の時間を割いて対応して頂きありがとうございました。また裏方に回り各方面を調整して頂いた中津川市の方々に、この場を借りて深くお礼申し上げます。

学生の皆さんは、ここで学んだことを忘れずにりっぱな林業技術者になってください。
2日間、お疲れさまでした。

エンジニア科1年 担任
前野 健

高樽の滝前で記念写真

付知峡の高樽の滝前で記念写真