「空間を感じる」CLTも木造建築(建築見学ツアーin高知)
私たちは普段、住宅を一つの軸として木造建築について学習をしていますが、高知では様々な中大規模建築を見学してきました。その中でもCLTを使用した建築についてこの記事では触れたいと思います。
まずCLT:Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイティド・ティンバー)とはなにか。これは集成材の一つで、木材の繊維方向を直交させて接着がされているものです。下田さんの記事で紹介されていた集成材は繊維方向をそろえて接着させたもので、厚くて長い部材を作ることができます。対してCLTは先述の特徴から、厚くて大きな面材を作ることができます。立てれば壁に、寝かせれば床、梁にすることができます。海外では高さ85m18階建ての木造ビルが建設されており、そこでもCLTが使われています。さらに国内でも大手ゼネコン各社が中高層木造建築の計画を発表、着手しており、木造の中大規模建築はとても盛り上がっています。
その中大規模建築に大きく役立つCLT。木材の使用量も多く、山の更新をしていくためにも重要な役割を果たすであろうCLTを使用した建物を高知県で見てまいりました。
見てきた建物は高知県森林組合連合会事務所、高知県立林業大学校、高知県自治会館の3棟。
<高知森林組合連合会事務所>
まずは南国市にあります高知県森林組合連合会事務所。
構造としては木造軸組構法ですが、壁や床、屋根にCLTが使われています。
耐力壁としてCLTが使われ、その壁倍率はなんと7倍。
現しでCLTを使用し、どんな木でも使えるというCLTの特徴を全面に出しています。
このエントランスの上には展示棚があり(渡り廊下のようですが)、ここでは270mmのCLTが使われています。人が乗っても全然大丈夫。
ガラスフェンスはCLTに差し込まれて保持されています。ガラスだけで自立しているので、それなりに深くCLTに差し込まれているのだと思います。
階段にもCLTが使われています。
この建物で私が一番なるほど!と感心したのがこの階段。
一段につき一つのCLTが使われているのですが、それぞれの間に広葉樹の板が挟まれています。またその板は若干CLTよりも引っ込んでおり、また色も濃いです。こうすることで段ごとに陰影が生まれ、CLTだけだと階段が一つの塊となって重たく感じてしまいそうなのを防いでいるのだと思います。
これは集合写真ではありますが、階段に注目してみると、一段一段が独立しており、なんだか軽やかに感じませんか?
他にも板金の技術の高さや取り合いの難しさを感じつつ、高知県森連事務所を後にしました。
<高知県立林業大学校>
2棟目は香美市にある高知県立林業大学校。
白の外壁が特徴的ですが、これは木に白い塗装がされています。
なかに入ると
こんな感じ。ちょうど日が当たってきて、気持ちのいい光が入っています。北側には教室などの居室。南側には廊下やコモンスペースと呼ばれるちょっとしたスペースがあり、家具もおかれ気持ちよく過ごすことができます。
こちらでは高知林大の学生さんとともに、この校舎を設計された(株)細木建築研究所の細木淳さんの講義を受けました。
高知林大校舎のことだけでなく、これまでに手がけて来られた建物についてもお話いただき、様々なことに挑戦されているようでした。公共建築等では始めから指定されているものもあるとは思いますが、CLTで、無垢材で、と始めから構法を限定するのではなく、建てようとしている物にはどういった構法が最適かを考え、選択されているようでした。
CLTならではの気をつけるポイントはありますか?と質問させていただくと、「地域で昔からされてきた工夫は在来でもCLTでも活かすことができる。CLTに活かすには工夫は必要ではあるがなんとかなるし、無理してCLTばかりを使うことはない。CLTの必要があるところにCLTを使う。」とお答えいただきました。作りたい空間に合わせて素材を選択し、CLTが普及し始めたことで選択肢が広がって新たな表現が増えているのだなと感じました。
ちなみに高知林大はCLT棟と在来棟あり、その二つを木造の耐火棟が繋げていました。
貫工法による小屋組を見ることができます。
他にも
CLT+張弦梁や
樹種や等級を示された壁があったりと、校舎そのものも教材として使われているようでした。
morinosの設計にも関わっていただき、先日アカデミーにもご来校いただいた隈研吾先生が高知林大の学長を務めておられます。その看板の下で集合写真を撮り高知林大を後にしました。
<高知県自治会館>
3棟目は高知市にある高知県自治会館を見学しました。
こちらは高知林大を設計された(株)細木建築研究所さんの設計です。
1〜3階はRC造、4階床は一部鉄骨のRC造、4〜6階は木造軸組工法で1階上部に免震層を設けているという建築的に盛りだくさんな建物になっています。
こちらではCLTは一部の耐力壁や間仕切り、パーティションとして使われています。
構造的、意匠的に考え、木製ブレースとCLT耐力壁を配置しています。
窓側には150mm角のスギ製材が、内側には90mm角のヒノキ製材を用いてブレースを構成しています。窓側のブレースは特にこの建物のシンボルにもなっているように思います。
内側のブレースは隠すこともできたとは思いますが、ガラスで仕切られています。こうすることで圧迫感を抑制し、空間に広がりを出すことができているのだと思います。構造的な要件を満たしつつ意匠的にも作用するという、これぞまさに木造なのだと思いました。
窓の外には高知城を望むこともできます。
高知県自治会館はCLTを現しで使用している箇所は少ないですが、CLTが影に隠れることで木製ブレースが目立ち、また大きな空間も取れているのだと思います。
<最後に>
以上のように私は高知県で見学した、CLTを用いた建築物についてまとめさせていただきました。
3つの建物を見学して思ったことは、どの建物も外からの光がとても心地よいということ。CLTを構造材に用いることで、壁を少なくしたり開口部を大きくすることができるのでしょう。どの空間もとても居心地のよいものだと感じました。
いわゆる集成材を目にすると以前の私なら、「あー、集成材かぁ」という少し残念がるような感想を持っていたと思います。しかし、アカデミーで木造建築について学ぶうちに、集成材には強みがあり、集成材だからこそ選んで使用される場面があることを理解しました。材料について正しく理解し、正しく使用していく。これは木造建築に限らず、ものづくりにたずさわる者として必要なスキルだと思います。
私のなかではどこかCLT建築は木造建築とは別、という意識がありました。しかし今回見学をして、材料はもちろん木材で、現しでも隠しても使うことができる。これは最先端の木造建築なんだと、思いを新たにしました。
最後に、クロス・ラミネイティド・ティンバー。この響きが個人的にとても好きだということをお伝えして、私太目による高知県のCLT建築についてのブログを閉じたいと思います。
木造建築専攻1年 太目