森林文化特別講座「美しい国土づくりと地方創生」金野 幸雄さん
金野幸雄さん(国土計画家・コンセプター)をお招きしての森林文化特別講座。予想通り刺激的な一日でした。
※1 クリエーター科・建築専攻学生、エンジニア科・林産業コース学生と教員は、20周年記念特別講演および引き続き実施しました授業「(Cr)木造建築病理学」・「(En)先端建築学」を受講いたしました。
※2 また、20周年記念特別講演部分については収録をさせていただき、学生向けにオンデマンド配信しています。
金野さんとアカデミーの関わりは、2014年から2016年の3年間にわたって企画した専門技術者研修の「古民家リノベーション事業プランニング講座」から始まっています。
この時は金野さんが中核で携わられた兵庫県篠山市の視察に行き、地方創生の実例を目の当たりにし、美濃市でも実現したいという思いを抱きました。
この講座の成果で立ち上がった(一社)インクも尽力して、美濃も良い方向に変わってきています。古民家を改修したNIPPONIA 美濃商家町ホテルも開業し、昨年は2棟目、今年はシェアオフィスが完成と、地域が元気になて来ているのが実感できます。
金野さんのお話を聞くと、明るい未来像が描け、ポジティブな思考回路のスイッチが入ることで様々な難題に取り組みたいという力が湧いてきます。
今回の講義の前半は、アカデミー20周年企画で「美しい国土づくりと地方創生」と題して、適切な法規制の改正と、分散型開発の良い事例の2つの側面からこれからの美しい日本を考える可能性を見せていただきました。
最初に取り組まれた集落丸山の事例と成果や篠山市の城下町ホテルなど、数多くの事例のノウハウを惜しげもなく公開いただきました。
その中でも大切なのは、まずは法規制の適正化。篠山市での土地利用条例の制定に始まり、景観法への発展、建築基準法や消防法、旅館業法の改正など、実際に法規制を続々と変えるきっかけを作って、適切な古民家活用を実現しやすい環境を実現されています。
そして、他方では良い開発事例を行い、地域住民が実際に目の当たりにすることで、説得力を持った理解が得られます。そしてさらに人々を巻き込んでという歯車が回り始めます。
ここまでは、アカデミー学生は動画視聴できるようにしています。
午後からは、より専門的な内容に踏み込み、建築学生を対象に実際に古民家を改修したNIPPONIA 美濃商家町で、具体的な実現のプロセスと、これから仕掛けようとしている活動のヒントが聞けました。
最近では重要文化財の活用(保存ではなく)や林業の活性化にも活動の幅を広げられており、まだまだ活動の幅が広がっていました。
また、都市部への集中と地方への分散、大量生産と小ロット・多品種生産など、一見対立しそうな概念も、実はお互い手を取り合って社会構造が成り立っているという視点、つまりグローバルな結びつきとローカルな結びつきは対立する概念ではなく、一つの社会にレイヤーで重なってパラレルに存在していくだろうとの、これからの社会構造の見方のヒントもいただけました。
今回もいろいろ活力をいただきました。
准教授 辻充孝