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2016年11月05日(土)

生材をわずか3週間で!〜進化する広葉樹乾燥技術

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学生たちが実習で使う材料を購入するために、高山市を訪れました。広葉樹の製材・乾燥が専門の株式会社カネモクです。
広葉樹といえば、スギやヒノキなどの針葉樹に比べて乾燥が難しいことで知られます。上の写真の背景に見られるように桟積みをして半年から1年天然乾燥させ、さらに人工乾燥機で6〜8%まで下げるというのが常識でした。しかしこの会社では乾燥技術の研究を重ね、ついに、製材したての生材をすぐに人工乾燥機に入れ、わずか3週間足らずで6〜8%まで下げる技術を確立したのだそうです。

天然乾燥を省略することのメリットは、いくつもあります。まず、顧客の注文に即応できること。長期間にわたる保管場所を必要としないこと。天然乾燥中に生じる腐れや虫食いが生じないこと。さらに、天然乾燥を経るよりも色が良く仕上がるのだそうです。この点に関しては、逆の通説もよく聞かれます。北米から輸入されるブラックウォールナットなどは、人工乾燥をかけられると黒紫色の木肌が灰色がかってしまうため、天然乾燥のみの方がよいというものです。しかし、この会社では北米材のように高温の乾燥をかけないため、木の色が保たれるのだそうです。
また、天然乾燥中に放射組織に沿って細かな割れが入るナラは、生から乾燥させるとほとんど割れが入らないとのことでした。

まさに良いことずくめの技術ですが、唯一のデメリットが天然乾燥を経るよりも収縮率が大きいこと。天然乾燥+人工乾燥では厚みが5%減りますが、生から人工乾燥では8%減ります。そのため、これまで45mmで挽いていた板は、48mmで挽くようにしているそうです。

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解説していただいたカネモク社長の森本敏さん。

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上の写真2枚は、乾燥機から出てきたばかりのウダイカンバ(マカバ)。65mmで製材したものを生材から20日間乾燥させました。含水率は6.5%を指しています。

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白い木肌が美しい、製材したてのトチノキ。触るとしっとり濡れています。65mmで挽いてありますが、これもすぐに乾燥機に入れます。このトチのように白い木肌のものや、ブナやイチョウのようにカビが入りやすい木は、生から乾燥した方が美しい木肌を保てるそうです。

木材乾燥の常識を覆す新技術。森本さんは燻煙乾燥、蒸気乾燥など過去60年間の広葉樹乾燥のデータに、数々の実験を重ねてこの技術を確立するに至ったとのこと。森林文化アカデミーの富田守泰前教授(現・岐阜県森林研究所勤務)の針葉樹乾燥のデータも参考にしたそうです。
ブレークスルーは何だったのかお尋ねしたところ、「乾燥機のファンの故障」との答えが返ってきました。空気を循環させるファンが壊れて止まった時、乾燥機内で何が起こっていたか・・・。日頃から研究の姿勢をお持ちだったからこそ、何気ない設備の故障から大きなヒントを得られたのだと思います。

 

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森本さんの魅力は、広葉樹乾燥の技術にとどまりません。上の写真のような直径30センチにも満たない丸太は、市場ではチップ材にしかなりませんが、森本さんはそのような丸太も製材、乾燥させ、有効活用してくれる使い手に届けます。そのために自ら木工作家の工房などへ足を運び、どんな材がどんな作品に使われるか見て、要望も聞いているとのこと。このサイズのヤマザクラなら、カッティングボードを作ってくれる作家さんがいるんですよ、と話してくれました。

カネモクで扱う樹種は30種類を超え、その多くは岐阜県産材です。地域の材に高い価値をつけて使い手のもとへ届けたいという思いにあふれる森本社長に、大きな刺激を受けた1日でした。

 

カネモク
〒506-0035 岐阜県高山市新宮町112番地の11
TEL 0577-34-0655
FAX 0577-34-0656
http://kanemoku.jp/
info@kanemoku.jp

文・久津輪 雅