自力建設2021「木立のこみち」建方編
自力建設ファンの皆様、お待たせしました。
塗装が終わり、ついに建方です!
プロジェクトのおさらい
今回のプロジェクトをおさらいしておきましょう。与えられた課題は、「屋根付き自由通路」です。その自由通路には、通行としての機能だけではありません。
木工専攻の拠点であるウッド・ラボ前のデッキで行われる、グリーンウッドワークの活動を支援する役割も求められました。そこで、通行のための通路に加え、既存建物(ウッド・ラボ)の庇を増築するという、「木立の通路」と「木立の庇」、2つ合わせて「木立のこみち」を建設することになりました。
建方の準備―ウッド・ラボの既存格子の解体
新たに建設する「木立の庇」の格子は、既存の格子とは異なる位置につくるため、既存の格子を丸ノコや手ノコで解体しました。
また、通路を建設するために、一部デッキを剥がし、スロープの解体などを行いました。
建方の準備――通路側の土台・庇側の土台の設置
以前のブログ(捨てコン打ち、基礎打設編)で施工した基礎の上に、柱を載せるための土台を設置します。きっちり水平を確保した土台が設置できないと、柱や桁や梁などの精度も出せません。そのため土台は厳密につくる必要があります。
ですが、4つの基礎の天端(上端の平らな面)の高さが少しずつ違っていて、そのままでは土台を載せられない。そこで木材やプラスチックのパッキンで高さを調節して、土台を設置しました。
同時並行して、「木立の庇」の土台も設置していきます。
建方の手順-「木立の通路」と「木立の庇」の交点から建て始める
図のように、通路の終点の柱から建てます。この柱は、通路と庇の両方の部材が交わる“交差点”にあたります。この柱を起点にして、まず通路の建方を行い、次に庇の建方を行うことにしました。
いざ、「木立の通路」の建方開始!
まず、通路の土台の設置作業から開始。
次に通路と庇の交点となる柱を建て込んで、格子組にしていきます。10月22日のブログ「大工合宿編」でご紹介した「ラスボス差し」部材はここに差し込まれます。
【難易度が高かったポイント】
ここでちょっとわかりにくい話をします(興味ない方は読み飛ばしていただいて結構です)。今回の工事で難しかった点は、前述の通路と庇の部材の“交点”の割り出し方(マーキング)でした。図左の赤い線の交点のことなのですが、複数の条件が合わさり、部材同士の芯がいくつもズレを生じている場所のため、どこがどうズレているのか一目で把握しにくい。そのため学生・教員・大工さんにて何度もコミュニケーションし合い、マーキングの際に間違いがないかを確認しました。
ということで、まずは交点の柱を建て込みます。そして格子組をして、方杖を差し込みます。
次に、方杖が取り付く柱(樹状柱)を地組して、土台にはめ込み、桁を載せて建てていきます。
方杖の接合
本プロジェクトは細い方杖の接合部が数多く、金物を使わない木組みだけでは接合部強度が確保できないので、木造用のビスを積極的に使いました。
使用したビスは、シネジック(2017年に東日本パワーファスニングから社名変更)社の「パネリード」。国内の木構造業界では名が知られています。今回は同社にご協力いただき、「パネリードⅡ+」を3種類ご提供いただきました。
続いて「木立の庇」の建方!
通路の建方がひと段落し、次は庇の建方です。方杖を柱にあらかじめ取り付け、建て起こしロープで吊り上げて所定の位置へ。カケヤで叩いて垂直にします。
上棟式
時間を少し前に戻して、通路の建方が完了した時点で、無事建方を終えたこと、今後の工事の無事を祈念する「上棟式」を行いました。
建物の四隅に塩・米・酒を撒きます。左はわたくし橋本。中央は今回の想定施主である木工専攻の前野先生、右は東濃ヒノキ製品流通協同組合の大工の鈴木さん。
ついに架構が組みあがり、これまで図面や模型でずっと考えてきた架構を実際に組み上げることができました。今後は屋根板設置、ルーフィング、屋根葺き工事、照明工事、デッキやスロープの復旧工事など、まだまだ沢山やることがあります。あともう少しで完成です!
クリエーター科 木造建築専攻
橋本剛