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2021年11月05日(金)

自力建設2021「木立のこみち」丁張、根切り編

皆さんこんにちは。木造建築専攻の宮森です。

前回までのブログでは、番付け、墨付け、刻み、さらには仮組みまでを終え、長いようで短かった大工合宿が幕を下ろしたところまででした。今回からは場所をアカデミーに戻し、「根切り」から始まった基礎工事についてお話をさせてもらおうと思います。

10月20日、この日は地鎮祭が行われました。地鎮祭では、鯛や野菜が祭壇に供えられ、非常勤講師の田口さん指導のもと厳かに行われました。私たち木造建築専攻の学生のほか、建築専攻の先生、施主の前野先生が参加され、全員で工事の無事を祈ります。

自力建設2021丁張り

まずは、おなじみとなってきました用語解説です。「丁張」「根切り」とは?というところから始めたいと思います。

丁張」とは

丁張とは工事を始める前に、建物の正確な位置を出す作業のことで、水盛(みずもり)りや遣り方(やりかた)とも呼ばれます。丁張は建物の配置の基準を出す作業なので、丁張がずれてしまうと工事のいたるところで支障が出てしまい、建物を建てることができません。なので、水貫(みずぬき)と呼ばれる板材で正確な水平ラインを出すことがとても重要になってきます。そこから糸を張り、図面を描く時にも一番最初に描く「通り芯」を出していきます。そして、その糸からの距離で捨てコンの高さ、砕石の高さなどを出していき、基礎を作っていきます。昔は実際に水を使って水平を出していたため丁張を水盛と言ったり、使う道具も水貫、水糸と名前に水の字が入っていることが多いです。

「根切り」とは

根切りとは、「掘り方」とも呼ばれ、簡単に言えば地面の掘削作業のことです。基礎や地下室を作る際に地面を掘り、掘った土砂や石を積み込み、決められた場所へ運搬するまでの一連の作業を指しています。基礎を作る場合は基礎形状によって、布基礎なら布掘、独立基礎なら壺掘、ベタ基礎なら総掘と呼ばれます。

では、実際に行った作業のお話をしようと思います。まず、はじめに、掘るのに邪魔なスロープとウッドデッキを解体していきます。

自力建設2021丁張り2

自力建設2021丁張り3

ウッドデッキの板材は再利用するので、元に戻せるようにナンバリングをしておきます。

自力建設2021丁張り4

そして、ついに根切り作業!ここで「ん?」と疑問に思われた方も多いと思います。そう、今回私たちは「根切り」から基礎工事を始めました。基礎工事の基準を作る「丁張」をすっとばして…。今回は諸事情により、丁張から作業を始めることができなかったのです。非常勤講師として20年間にわたり自力建設プロジェクトの指導を務めていただいているT-PLANの田口さんでさえも丁張なしの根切りは初めてのことだそうです。しかも、今回の自力建設では周辺環境的に機械を入れることができないため、すべて手掘り作業となりました。すでにアクシデントの予感しかありませんね。

今回は島状に4か所に分けて穴を掘るのですが、面積としてはそこまで広くはないものの、深く、また、大きな石が多かったり、すぐ脇のコナラとサクラが根を張っていたため障害となるものが多くなかなか掘り進めることができません。田口さんの指導の下ツルハシ、クワ、角スコ、剣スコ、ジョレン、掘削機などを駆使して、エンジニア科を含めた17人総出で固い地面を掘り、掘った土を猫車に積んでは捨てるの繰り返し。筋肉痛や腰痛と戦い、手のひらにマメを作りながらの3日間にわたり、ただひたすら地面を掘り続けました。

自力建設2021丁張り4

作業の後半からは道具の使い方や体の使い方にも慣れて、作業ペースが徐々に上がっていきました。そして、そのときに作業効率を飛躍的に上げた秘密兵器があります。それは「ジョレン」という耳慣れない名前の道具でした。ジョレンとはハグチとも呼ばれる道具で、単に掘った土をかき集める道具でしたが、ただそれだけの道具が作業効率をグンと上げてくれました。しかし、現場にジョレンは一つしかなかったので、ジョレンを持った人は引っ張りだこでした。

自力建設2021丁張り

そして、ジョレンのおかげで根切りを終え、ついに丁張です。丁張ではまず、水貫が基準の高さ、今回であればBM(ベンチマーク)からの高さを設定し、施工範囲を囲います。この時に大切なのは水貫がきれいな水平であることです。水貫が水平でなければ基礎の高さや位置を正確に出すことができません。水貫を据えた後は、図面から通り芯を出します。ここからはコンベックスで距離を測りながら、地道に一本一本水貫に水糸を張っていきます。最後に、張った水糸でできた四角形の2つの対角線の長さを測り歪みがないか確認(矩出し)します。

自力建設2021丁張り5

自力建設2021丁張り6

 つらい根切りを終え、丁張もこれで完成!と達成感に浸っていた時に問題が発覚。根切り位置、結構ズレてる…。前述のとおり、本来であれば丁張→根切りの順番ですが、今回は根切り→丁張の順に行いました。案の定、芯からそれなりにズレたところを掘っていました。しかも、ちょっと掘りすぎていました。

自力建設2021丁張り7

後半の追い上げで勢い余って掘りすぎてしまい、汗水たらして一生懸命掘った穴を自ら埋め戻すというとんでもない徒労感を味わいながら今回の根切り、丁張編は終わりです。ズレた場所をどう対処したのか?はたして基礎工事は予定通りに進み、無事終えることができるのか?気になる続きは次回のブログで!

 

木造建築専攻1年 宮森庸介