ゾーニング改修を定量的に手計算する(改修版 自立循環型住宅の設計ガイドライン)
専門技術者研修の「改修版 自立循環型住宅の設計ガイドライン」二日目
今回は、このガイドラインで新たに設定された「区画熱損失係数Q*」の実際の計算と活用です。
2階建ての1階だけで2人が住んでいたり、先祖から受け継いだ100坪の大きな家の半分くらいしか使わずに暮らしている家全体改修なんて考えられません。そうなると、家全体を改修するには予算が厳しく、生活している一部分だけ改修するというケースも出てきます。
そんな時、改修後のLDKや寝室などの各部屋の性能がどう上がったか、ゾーニング改修をした効果をしっかり計算したいといった場合には、これまでの温熱指標の熱損失係数Q値や外皮平均熱貫流率UA値は家全体性能を示しているので使えません。そこで、区画内の熱性能を示す「区画熱損失係数Q*」の出番です。
考える要素は単純で、①外気に逃げていく熱と②隣室に逃げていく熱、③壁の中の気流で逃げていく熱をそれぞれ計算して、区画の床面積で除すると出てきます。
といっても、隣室にどのくらい熱が逃げていくのかというと、隣室の温度に影響されますので一筋縄ではいきません。
私がつくったドリル形式の演習シートをもとに、ガイドライン片手に手計算で追いかけていくと概ね理解が進みます。
この区画熱損失係数Q*を使っていろいろなことがわかります。
明け方の室温、改修前後の暖房エネルギー削減効果(光熱費削減効果)、各部屋の適切な設備容量です。
これらも手計算で追いかけて計算できるようになりました。
午後からは用途分解。電気やガスの明細から、各用途(暖房や冷房、給湯など)にどの程度使用しているか計算していきます。
この用途別のエネルギー量がわかると、計画時にいろいろ参考になります。
例えば、給湯が多いとわかれば、給湯を如何に省エネに改修できるかを重点的に考えればいい訳です。
すでに給湯エネルギーの削減要素はわかっています。
・暮らし方を考える・・・回数を減らすなどの我慢する必要はなく、家族が続けて入ったりお風呂の蓋を締めたりちょっとしたことでも結構変わります。
・高効率給湯器に替える・・・エコキュートやエコジョーズに替えると同じようにお湯を使っても知らない間にエネルギーが減ります
・水栓や配管などを節湯型のものに替える・・・節水型のシャワーヘッドや水栓に替える水道代まで安くなります。
・太陽熱を利用する機器を入れる・・・太陽熱温水器やソーラーシステムなどで、晴れていれば給湯器無しで温水が使えます。
つまり、暮らしの分析が建築計画の出発点。この辺りが伝えられたかな。
次回は今年度の最終回。実践的な計画をしようかと計画中です。
准教授 辻充孝