自力建設塗装編。塗装の極意は心を込めることから。
さて自力建設は塗装の時間です。部材を刻み、基礎を打ち、上棟式も間近に迫り、みんなの顔にも焦り、、、否、気合いの色が見て取れます。久々にエンジニア科の若き精鋭達も参加しての塗装作業です。
今回は塗装メーカーオスモさんの全面的な協力により、塗料レクチャーから、塗装道具の使い方、メンテナンスの方法まで、ワークショップ形式で手とり足取り教えて頂きました。それで自力建設の部材まで作成してしまうという何とも貴重な時間です。
さてさて塗装といって侮るなかれ。ただ塗ればいいというわけじゃありません。そこには理論に裏付けられた塗装スキルがあるわけです。塗装以外でも、準備を疎かにしたがために残念な出来栄えになってしまったり、手戻りが発生したり、ここまでの他の作業でも身に沁みて感じておりますから、その道の専門家の方に手とり足取り教えてもらえる機会というのは非常に有り難いです。
塗料を塗る面はどちら?
さて塗装についてのレクチャーを受けたあとは、早速塗っていきます。
実は今回準備した木材の表面は表裏で仕上げた状態が異なっています。左の写真がかんな盤で仕上げたもの。右は丸太を製材したままの状態。仕上げるとツルツルしていて綺麗ですね。
<塗装前の部材(左:製材機→かんな盤仕上げ、右:製材機のみ)>
“仕上げてある”ぐらいなんで元々はこの仕上げ面(左側)に塗装していく予定でした。でも塗料は表面が荒いほうがしっかりと吸着するとのお話。ということで急遽両方の面に塗ってみて、その風合いを見て選ぶことに。
<塗装後の部材(左:製材機→かんな盤仕上げ、右:製材機のみ)>
わかりますかね、この違い?
ちょっと写真だと分かりづらいかもしれませんが、実物だと明らかに違います。皆さんならどちらを選ぶでしょうか?
両者とも結構良い感じに発色していて甲乙つけがたいような気もしますが、今回の自力建設は製材棟ということもあり、木材に濃い黒が現れる方(右側)が選ばれました。結構ガツンと黒が入ったワイルドな風合いです。無垢の質感はもちろん良いですが、塗装されると雰囲気が変わって別の建物になる面白さがありますね。
奥深い塗装の世界
アカデミーに来る前は塗装について考えたこともありませんでした。塗装について知っていたことと言えば、塗ったら色が変わることくらい。もちろんデザイン、見た目の影響が大きなことは言うまでもありませんが、建築ではそれ以上に塗装の保護、強化の役割が重要であることがわかってきました。使用される塗料の特性、家のどこに使われるのかをよく考慮し、定期的なメンテナンスを怠らなければ、家を快適に、長く使っていくことができるということです。
そして印象的だったのは最後に頂戴したこの言葉。
「塗装の極意は心を込めること」。
写真は心を込めて塗り込んでいる我らが棟梁。
そう言えば大工さんからも似たようなお話を頂戴しておりました。「心の迷いが線の曲がり」。どちらも頂いた言葉を私なりに若干拡大解釈はしていますが、何事もいい加減に作ったものは、それなりの品質にしかならないということでしょう。
自力建設Cobikiの建て方までもう少し。我々の心が試されるときです。そのためにもまだまだ材料づくり、塗装作業は続きます、、、。
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ご存知ない方のために、オスモとは?
(実は私もオスモを知ったのはアカデミーに入ってからです)
オスモ(OSMO)はドイツ企業で、正式名称はOSMO&EDEL、建築界隈の人にオスモといえば、植物油由来の自然塗料メーカーとして有名な存在のようです。木材フローリング、ブラインド、果てはワインまで商品ラインナップにあるんですね。
塗装用の缶オープナーにビールの栓抜きが付いているのはドイツ企業らしい遊び心でしょうか。ついつい締切に、作業に追われて余裕を失いがちな我々にもピッタリの一品です。
森と木のクリエーター科1年 木造建築専攻 下田