ドイツで設計ワークショップをしてきました(その1)
【“持続可能な暮らし”を目指して、ドイツの建築と日本の建築の良いところを互いに模索し、新しい技術と文化をつくろう!】
岐阜県立森林文化アカデミーとドイツBW州ロッテンブルク林業大学は、2014年に連携協定を締結し、各専攻で幅広い交流を行っています。
今回、両校の建築専攻学生による「設計ワークショップ」のため、日本からロッテンブルク林業大学へ旅してきました。学生2名と建築教員1名の、貴重で豊かな経験の旅になりましたので、全3回に分けて報告いたします。
1日目(2月24日 日曜日)
今回、我々一同はずっとロッテンブルクに滞在しました。一つの町に一週間近くいると、路地やお店なども覚えて、建築的な見聞と町づくりの視点も芽生えてくるのです。きっと。
初日は、ロッテンブルク林業大学の建築教授デデリッヒ先生の案内で、ロッテンブルク周辺の視察を行いました。
学生さんは2人とも初めてのヨーロッパ。日本の急峻な山ではなく、なだらかな丘が続き、まるで止まっているような穏やかな川の流れに、日本と大陸文化との違いを感じながら、出発です。
「はじめに最も高い場所に行って、それから低いところを案内しよう」とデデリッヒ先生。早速素晴らしい。民俗学者宮本常一のお父さんと同じことを提案してくださいました。町のことを知るには、高いところから地形を含めてよく観察することが、とても大切です。
向かったところは「Schönbuchtタワー」です。森の入り口に車を停め歩きだすと、所々にタワー建設に関わる解説看板があります。デデリッヒ先生の丁寧で熱のこもった解説を聞きながら進み、8本の柱が一つの根本から上空に向かって朝顔のように拡がる形状の、木造タワーが現れました。昇り降りが別れた二重らせん階段になっています。上まで登るとかなり遠くまで見通すことができ、ロッテンブルク、チュービンゲンなどいくつかの街と森、川と地形が理解できます。
近寄って見るとジョイントは鉄骨、構造はワイヤーで包むように補強しています。「基礎部分は小さく、最上段の床面積を最も広くするこのデザインは、意匠と構造の見事な融合」とデデリッヒ先生も絶賛。
続いてはロッテンブルクの街を案内してもらいました。ロッテンブルクはドイツの伝統的な木造建築が多く残る美しい街です。広場があり商店があり教会があり、いつも鐘の音が聞こえます。古建築の解説から、モダンな建物の解説まで、デデリッヒ先生によるツアーで、ロッテンブルクの街の建築的な理解を深めました。
そして、ロッテンブルク林業大学へ。この日は日曜日なので学生は少なく、施設や設備の見学を行いました。ロッテンブルク林業大学は森林文化アカデミーとそっくりな専攻分けになっていて、林業、建築、森林環境教育についての学びの場ですが、科学的な研究開発に力を入れており、実験設備が充実しています。
初日はここで終了。
2日目(2月25日 月曜日)
晴天の朝。気温はアカデミーのある岐阜と同程度です。今年は例年になく暖かいとのことで、昼になると、まるで春でした。
この日の視察は「シュトゥットガルト教区の財団カトリック自由学校管理事務所」の見学から開始。シュトゥットガルトのキリスト教はプロテスタントが強いため、カトリック教会は少し離れたロッテンブルクに本部を置いています。近年増築して建築賞を受賞したその事務所を見学させていただきました。
全開口部に「外付け電動ルーバー」が設置されており、夏の日射遮蔽に気を遣っていることがわかります。内部も遮音性能の高い間仕切りや、木造なので防火にも尽力しており、ハイレベルな性能です。
次は1時間ほどアウトバーン(高速道路)で移動し。ガーデンエキスポ会場跡地に向かいます。
ここはガーデニングの博覧会が行われた後、公園として利用されている場所。ドイツではこうしたガーデニングの博覧会跡を公園にして町の景観や治安に寄与する政策をとることが多いとのこと。ここには最新の機械技術で設計・加工された「フォレストパビリオン」と展望台がありました。
「パビリオン」は243の異なったパターンの板が組み合わされて建っており、3Dの設計情報を機械にそのまま入力し自動で板を刻み、全体をわずか4週間で建設しています。材はブナの構造とカラマツの断熱材です。今、ブナ材の利用はドイツ林業では非常に重要で、全土を覆うブナの木をどう使っていくか、研究が繰り返されています。この建物はその先進的な試みの一つです。
そしてこの日のメインスポット「KANPA K8」。
地下一階、地上7階の「木造ビル」です。
これは、後日学生の牧原くんに解説してもらいましょう……。
ということで2日間が怒涛の情報量で過ぎていき、三人は英語のリスニングで頭がクラクラ、夜は知恵熱が出そうでしたが、3日目はワークショップが始まります。
次回へ続く。