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2021年08月25日(水)

木工事例調査⑥「早川木材株式会社」中津川市連携事業

今年も連携協定を結んでいる中津川市の林業振興課にご協力頂き、中津川市の木材産業を巡る木工事例調査を実施しました。中津川市は木曽ヒノキや東濃ヒノキで知られる木材の一大生産地であると同時に、全国でも有数の木工が盛んな地域です。
学生達の目線から報告するレポート第6弾は、製材業からお風呂作り、はたまたドラムの製作もされている「早川木材株式会社」です。

昭和28年創業の早川木材さん。木曽檜・東濃檜の産地である裏木曾に位置する中津川市付知町で、長年製材業を営まれてこられました。東濃檜を中心に、国産材・輸入材の製材・加工され、建築構造材・建具材・檜風呂、その他木工品として使われています。

 今回お話を伺ったのは、専務取締役の小池英仁さん。檜創建株式会社(主に木曽檜を用いた木風呂の企画・製造・施工を行う、浴室総合プランナー)で修業を積まれた後、ご実家である早川木材にて檜風呂の製造をされています。

小池さん

 早川木材の檜風呂の材質は、木曽檜・東濃檜の他に、高野槙(コウヤマキ)を使用しています。コウヤマキは丈夫で朽ちにくく、水に強いという特性を持つため、昔から桶に使われてきました。また、岐阜の伝統である「長良川鵜飼」の木船にもこのコウヤマキが使われています。

コウヤマキのお風呂
水湿に強い特性に加え、死に節※が少ないこともコウヤマキを使用している理由の一つだそうです。
※「死に節」とは、枝や風雪などで折れて自然に枯れてしまった状態で、木の成長と共に内部に取り込まれ、しこりのようになって木の内部に残った節です。すでに枯れてしまいそれ以上成長しないため、製材した時にこの節が抜けて、穴が開いたようになってしまう(抜け節)ことがあります。こうした板は、構造耐力や価値が落ちてしまい敬遠されることが多くなります。
高野槙風呂を依頼する方の中には、ご自身で材質を調べて指定される方もおられるそうです。日々の疲れを癒し、心を穏やかにする『お風呂』という場所に寄せる使い手の思いを感じます。コロナ禍となり、一時注文が減ったという檜風呂ですが、現在では温泉旅館やホテルからの注文が相次いでいるそうです。コロナウイルスが収束した後を見据えての動きなのでしょう。我慢の日々を送っている人々がこの浴槽に浸かる時…、どんなに心が癒され、どんなに深い思い出になるのでしょうね。

 檜創建に入社された理由のひとつを「珍しい檜風呂を作っていて面白そうだったから」とお話されていた小池さん。現在、檜風呂の他にも、桶を作る技術を持って試行錯誤の上作られた“koike drums”(コイケドラムス)の制作にも取り組まれています。koike drumsを作ろうと思ったのは、自らもドラムを叩かれる小池さんが、「桶の制作技術でドラムを作ったらどんな音がするのだろう」「他にないからやってみたい」という思いからだそうです。その思いに「地元の木材でつくることの意味」が加わり、小池さんの静かな、でも確かな思いを応援する人々が集まり、唯一無二のドラムが生まれました。

koike drumus

koike drumsに惹きつけられる学生、教員
現在流通しているドラムは密度が高く硬質なメープル(カエデ)やバーチ(カバ)が使
われていますが、全く製法の違うkoike drumsではクリ、ヒノキ、ケヤキが使われています。ケヤキは昔から和太鼓に使われ、聞き馴染みもあってか音に「和」を感じます。一番人気であるクリは音に深みがあり、また太さがあることでバンドサウンドに負けない音量が実現できるそうです。最近では「パーカッションやコンガを作ってほしい」という声が聞かれるようになり、何台も持つ方も出てくる等、期待以上の反応を感じるようになっているとのことでした。

小池さんのお話からは、作り手としての着眼点や、自分の手を動かして試行錯誤した過程があるからこそ商品の魅力が深まり、愛情を持って語れるものが生まれるのだということを学びました。思いの原点を追い続け丁寧に作られた商品は、思いを受け取った人の手によって、また新たな人の輪を作っていく…。今後ものづくりをしていく上で、何度でも思い返したい視点に気づかせていただきました。
お子さんが生まれてからドラムを叩く時間がなくて…という言葉とは裏腹に、穏やかな笑顔で最後までお話し下さった小池さん。お忙しい中ご案内・ご説明いただきありがとうございました。

岐阜県立森林文化アカデミー 森と木のクリエーター科 木工専攻2年 髙橋久美子、渡邉聡夫