飛騨市広葉樹のまちづくり学校 森の育て方を学ぶ
10/22〜23、森林文化アカデミーも運営に関わる飛騨市の「広葉樹のまちづくり学校」の第2回研修が行われました。広葉樹活用を軸とした持続可能な地域づくりに挑戦する人材育成のため、飛騨地域の実践者が互いに学び合い、連携できる関係性をつくることを目的とした実践型のスクールです(ウェブサイトより)。森林組合職員、林業家、製材業者、木工家、建築家など、森や木に関わるプロ達が受講生として学んでいます。
今回は飛騨市有林の現場で、飛騨市森林組合が取り組んだ育成木施業の現場を視察しました。育成木施業とは、将来に向けて大きく育てたい樹を選び、周囲の樹を適切に伐りながら育てていくこと。苗を植えて育てるスギやヒノキなどと違い、広葉樹は人が森に手を入れながら使いたい目的に合わせて育てていくのが合理的なのです。講師は広葉樹の森づくりのスペシャリスト、アカデミーの横井秀一教授。現地での講座のようすを再現すると・・・。
「あそこに2本のホオノキが生えていますよね。ここは薪炭用に60〜70年前に皆伐された後に育った森です。同じところに立つ同じ樹齢の同じホオノキなのに太さが違う。なぜか分かりますか?」
「葉っぱの量が違ったからです。左の樹は低い所から枝をたくさんつけていますよね。右の樹は枝が少ない。左の樹は右に比べて3倍以上の葉をつけることができました。樹は葉っぱで光合成をするので、葉が多いほど同化産物が多く得られて太く育つことができるんです」
「直径の太い樹を育てたければ、低い所から枝をつけてたくさん葉を繁らせるように育ててあげれば早く育ちます。でもそれだと幹の部分は短くなりますよね。もし長い材がほしければ、若い時に混んだ状態にしてあげると、枝を伸ばすことができないので幹(枝下高)は長くなります。ただ、葉っぱの量が少なくなるので太く育つには時間がかかります」
「どういう材を求めるかによって、成長のしかたをコントロールするんです。太くしたいのか、長くしたいのか。それが広葉樹林施業の考え方」
さらにこの後、ウダイカンバ、ブナなどそれぞれの樹の育ち方、その個性に合わせた育て方など、より詳しく専門的な話に入っていきます。木を使う側からも、この樹種はこんな用途に使っている、どう育つと使いやすい、などの話も入ります。とてもすべては書ききれないので、この辺で。
かつて森を手入れする人と木で物を作る人が同一であったり、お互いが近いところにいた時期は、経験でこのようなことが分かっていたのではないかと思うのです。それが大規模化、専業化して、森を手入れする人は需要側のニーズがわからず、木を使う人は樹木の育ち方を知らないという時代になりました。だから一度に全部伐ってしまい、わざわざ付加価値の低い用途に使ってしまっているというのが現実なのです。
それをもう一度つなぎ直し、お互いに森や木について学び直し、森としての、さらには町としての価値を高めていこうというのがこの「学校」の趣旨。日本でも初めての取り組みかも知れません。関わらせていただく私にとっても学ぶところが大きいですし、運営者も受講者も前のめりなので、自分が何を提供できるか考えながら参加しています。前のめりになりすぎて転んで顔をすりむかないよう、気をつけようと思っています(笑)。
久津輪 雅(木工・教授)