日独デザインワークショップ最終回(ロッテンブルク連携デザインWS4)
日独デザインワークショップの最終回となる第4回が、1月24日の夕方(日本時間)に行われました。
初回はプロジェクトの参考となる教員によるミニレクチャー、2回目が学生によるプロジェクト初期案発表、3回目はプロジェクト中間発表+気になるテーマのグループディスカッションでした。
最終回の今回は、それぞれの学生が関心のあるテーマをお互いに出題してのディスカッションです。
まずは、全員が集まってそれぞれのプロジェクトの進捗報告。
・アカデミーからのプロジェクトの進捗
アカデミーからは、「木立のこみち」の進捗報告です。前回までに設計での検討内容や木材加工について報告してきましたので、今回は基礎工事から建て方、屋根仕舞です。
構造材にドイツ製の塗料のオスモで塗装したとのスライドで、HFRの学生たちは、見知った素材が出てきたためザワザワと・・・
最後に、基礎工事から屋根仕舞まで順調に組みあがっていく様子をタイムラプスの動画で紹介しています。これが非常にわかりやすい。
工事の流れと建ち上がっていく様子が、アニメーションでつながっていきます。
プレゼン終了後、デデリッヒ教授から、塗料の選択について、
伝統的な日本の塗料ではなく、なぜドイツ製の塗料を塗ったのかとの質問がありました。
問われて学生も一瞬、ハッとなりましたが、自然由来の成分が強く、耐久性も良いことから選択したことに加え、アカデミー本校舎も同様の塗料が塗られているため、統一感が出るとの返答です。
過去の自力建設でも学生の考えでいろいろな塗料や仕上げを試してきました。
柿渋だけで塗装したこともありましたし、ベンガラを入れたり、米油を塗り重ねたりもしたこともあります。風合いは良いのですが、長期の耐久性となると、数年ごとに手入れが必要になります。
ずっと面倒をみれるのであれば問題ないのですが、2年で卒業してしまう学生にとっては、なるべく手入れの頻度を下げたいというのも本音でしょう。
・ロッテンブルク大からのプロジェクト進捗
次に、ロッテンブルク大からのチャペルプロジェクトの進捗報告です。
前回からの進捗では、1/5の模型を木材で製作しています。
こういった木材加工の設備が学内にあるのはアカデミーと似てます。
架構のイメージが確定したことで、デザインを詰めていました。
前回発表時のイメージは下記のようなデザインです。「木立のこみち」の樹上トラスのイメージも見て取れます。
これを、地域内の7つのチャペルの数に合わせて、建物を7つに分割し各地に点在するチャペルの要素を取り入れデザインしていました。
例えば、パイプオルガンのあるチャペルでは、パイプオルガンの要素を構造やベンチに活用したり、チャペルのアーチを構造に取り入れたり、ステンドグラスを屋根のデザインに取り入れたりと様々です。
アカデミー生からなぜチャペルをキーポイントとして取り上げて計画しているのかという質問が出ました。
デデリッヒ教授より、街の周辺部に存在する7つのチャペルの重要性が語られました。
プロジェクト当初に市役所などを廻ってさまざまな課題を検討していた際に、都市周辺部にある7つのチャペルに注目したとのこと。
都市の中心には観光の拠点であり、マーケットが開催される大聖堂があり、それを囲むように都市の辺縁部に楕円に点在する7つのチャペルがある。その関係はよくわかっていないが、これらのチャペルと街を連続させることで町の発展に寄与できると考えているとのこと。
4つのテーマでディスカッション
続いて、お互いに聞きたい内容を事前にオンラインミーティングで決めて、当日のディスカッションのテーマに決めていました。
1つ目はアカデミー生に「勉強や仕事をすることにおいて、どのような背景がありますか?」
2つ目はHFR生に対して「卒業後、何をしたいですか?」
3つ目はアカデミー生に対して「作りたい或いは好きな建築はどのようなものですか?」
4つ目はHFR生に対して「ドイツにおける一般的な木造住宅の建設方法は?」
それぞれに、まさに学生同士だからこそ関心の高い質問です。
今回で、予定していた4回のデザインワークショップは終了です。
回を追うごとに内容ややり取りが洗練されてきました。
デザインワークショップの進め方の進化
事前打ち合わせや当日の運用も回を重ねるごとに、改善されてきました。
初回と二回目は、教員間のZOOMやメールのやり取りで内容を検討していましたが、3回目の打ち合わせからはそれぞれの学生代表2名で、やり取りをしてディスカッションしたい内容を決めています。
特に4回目に至っては、メールだけでなく、ZOOMを用いて直に英語で話しながら内容を決めていました。お互い流暢とは言えない打ち合わせながらも思いの詰まったテーマが選ばれています。
また、当日の運用も変化してきています。
初回は、ネットのリアルタイム翻訳機能を活用して、プレゼン用の画面と、翻訳用の字幕画面を用意して、日本語とドイツ語でプレゼンしました。
多少齟齬も感じながらも、お互いそれなりに理解できる状況です。
ですが、やはりリアルタイムでやり取りをする際に、言語がバラバラだと発言するにもどの言語で発言するか悩むなど意思疎通が難しいと感じ、2回目以降は言語を英語に統一して、プレゼンやディスカッションを行いました。
内容理解のサポートのため、英語のリアルタイム翻訳画面は表示してあります。
それでも2回目は、プレゼンを聞いた直後に質問するのは、なかなか話はじめにくいとの印象で、3回目からは、3日前にプレゼン資料を事前に共有しておくことになりました。
これで、おおよその発表内容がイメージでき、事前に聞きたいことなどを考えておくことの可能になりました。
4回目の最終回では、学生間の事前打ち合わせの効果もあり、お互いに話しやすい雰囲気になったのか、急な質問に対しても何とか伝えようとする積極性が見て取れました。
文化の異なる両国ですが、共感できる部分も多く、学びの多い機会となりました。
2022/2/2追記
HFRのホームページでも今回のワークショップが報告されました。