森林文化特別講座「森とつくる いっしょにつくる」古川泰司さん
建築家の古川泰司先生にお越しいただき、森林文化の講義を行いました。
木造建築ついての専門的なお話だけではなく、川上から川下についてのお話までしてもらいました。「ウッドショック」の原因ってなんだと思いますかと言う問いかけから、現在の日本の森林の状況についての講義から始まりました。
「日本の木が使える状況だったら、『ウッドショック』は、もっと被害を抑えられたのでは?」
つまり、日本の木材は大量には使えないということであり、そのことは日本の林業の課題にもなっているとのことでした。
日本の木材を使える状況にするには「品質表示」「安定供給」ができなければならないということです。
この「品質表示」、「安定供給」を解決する1つの方法として、川上と川下のスケール感を揃えることが重要だと仰っていました。川下である工務店や、設計士は自分の地域の山でどのくらいのストックがあって、木の成長量を考えた上でどのくらい使用したほうがよいのか、はたまた川上側は川下ではどのような材が必要なのか、頼まれたときにすぐに搬出できるかなどの工夫が重要になってくるのだそうです。
お互いが断続的に事象を考えるのではなく連続したものだと意識し、自らが足を運び、知ることが「品質表示」、「安定供給」に繋がっていくと思いました。
また、古川先生は地域の森のことをよくご存じで、山に負担を掛けない設計を考えていました。例えば、横架材を全て化粧材にせず一部を大壁にすることによって、化粧材の本数を減らし木材供給への配慮や、構造計算の検討を繰り返して構造材の負担を減らしたりと山側の供給について考えながら、洗練された設計をされていました。
森、林業を守って還元していくには、山を分かっている設計士、構造設計士がおり、設計のことを知っている製材屋さん、山主がいることが大切だと仰っていました。
木造建築において良い設計、デザインとはつかい手のことはもちろん、山のことまで考え、還元できるように設計することが大切であると思いました。
アカデミーでは、川上から川下すべてに関わる人がいる学校なので今回の授業を受けてどう感じたのか、これからの森林はどうするべきなのか意見をぶつけてみる機会を設けてみても面白いと思いました。
森林文化を終えた翌日に、古川さんに「みどりのアトリエ」を見てもらいました。。
まず、木工の方々と考えたテーブルとソファを見ていただきました。
テーブルのコンセプトとして、「自由に使えるテーブル」として作製したのですが、古川さんから「椅子の足によって、座る位置が固定されおり自由に座れないじゃないの」と鋭いご指摘をいただきました。天板を工夫することによって、自由性が生まれると考えていたので椅子の足が座る人を固定してしまっていたのは、使う人を深く想定できていなかったなと思いました。
また、現場にも来ていただき「個室の利用の仕方が日本古来の茶室と似ているね」と意見をもらいました。
茶室という意見は盲点でした……
過去の建物から学ぶことをまだできていないので、もっと過去の建物を見て自分の中の引き出しを増やしたいと思いました。
プロの建築家の方から、意見をいただける機会はそうそうないので大変勉強になる時間になりました。
古川泰司先生、貴重なお時間ありがとうございました。アカデミー生にとって気づかされることの多い講義になったのではないかと思います。
実は、古川先生の素晴らしい講義がYouTube限定公開で、在校生だけでなく卒業生までもがいつでも見れるようになっています。プロの建築家が考える森林についてのお話を聞けるのはアカデミーの特権かもしれませんね。
木造建築専攻 2年 杉山 優真