プチ林業事例調査in佐渡島(2)両津東部森林組合さま作業現場見学(2024/10/16)
佐渡島の植生の紹介に続きまして、島内の人工林間伐現場を見学させていただきましたので報告します。
この日は、島内に4つある森林組合のうちのひとつ、両津東部森林組合さんの作業現場を見学させていただきました。ここでは約9.8haの林分を、2か月ほどかけて20%の定性間伐を行うという計画で作業が行われていました。
伐採はチェーンソー、集材・造材はプロセッサー、搬出は3tフォワーダ、運搬は10tトラックを使用されており、林内で使用する重機は、島内の森林組合の中で共有されているそうです。
以前は森林組合の仕事は植栽・保育が中心で、素材生産は民間業者が行っていたそうです。しかし、佐渡島内での木材需要が減少したため、業務を縮小、もしくは廃業を選択する民間業者が増加し、森林組合が素材生産も中心的に行っていく流れとなっています。
両津東部森林組合も以前は製材工場を所有しており、組合で伐採したものを製材したそうですが、需要の減少が著しく、現在は工場を閉鎖しています。一方で、国からの木材自給率増の方針を受け、平成22年くらいから本格的に利用間伐を開始されました。
私たち見学者のために、森林組合の若手作業員の方が伐倒の実演をしてくれました。「一本切ってくれや~」の一言から、伐倒までの無駄のない動きと作業の正確さに、これまでも伐倒は何度か経験しているはずのアカデミー生たちも大興奮でした。
こちらが伐倒して見せていただいた木の切り株です。立派な大きさですが、迷いのないチェーンソーさばき、とてもかっこよかったです。
新潟大生の方々は、伐倒を見ることが初めてという人も多く、迫力のある作業、技術に感動されていました。私たちが伐ったわけではないのですが、こんなにかっこいいチェンソーマンさんの姿を見てもらえたことに、私たちもなんだかうれしく感じました。
伐倒を実演して頂いた森林組合の方はIターンで佐渡に来られたということでした。おひとりで選木をしながらもくもくと木を伐られる姿や、山での作業は楽しいとお話しされていたのが印象的で、佐渡にはこんな素敵な若者を惹きつける魅力があるのだなあ、とこの佐渡の地に一層深い興味を持ちました。
切られた木は、島内の製材工場にはほとんどいかず、ほぼ島外の合板工場かバイオマス発電所へと輸送されるそうです。
A材として市場に出しても合板工場に出してもあまり価格差がなく、いつ、いくらで売れるのかが不安定なA材よりもB材の方が扱いやすいということで、実際に出すのはほぼB・C材のみとのことでした。
森林組合の方から、「仕分けなどの手間を考えると、A材が出ずにB材だけの方が良い」と伺った時は、とにかくA材が良いと思い込んでした私にとってとても衝撃的でした。それぞれの林分の状況から、最適な戦略があるのだなと勉強になりました。
島外に運ばれる木材が集積されている港も見に行かせていただきました。
こちらは、新潟県や山形県のバイオマス工場で使われるチップになるそうです。
島内は新潟県の中では雪が少なく、根曲がりの少ない通直の丸太を育てやすい環境である上に、大型動物が生息しないことから獣害の心配も無いとのことですが、その一方では手つかずの林分が多く用材生産には課題が大きいそうです。
しかし、最近では中国への丸太輸出の機運が高まっているそうで、地の利を活かした佐渡ならではの戦略ではないかと感じました。
ご案内いただいた森林組合の本間さんは、事業を回していくためにも、あるものを活かして切っていくしかないとおっしゃっていました。
一方で、佐渡ならではの天然スギやアテビ材や他の事業者との連携など、面白い素材が盛りだくさんなので、これからの佐渡林業のチャレンジをぜひ見ていきたいと感じました。
それぞれの土地ならではの林業が各地で行われていく姿に、とてもわくわくする経験をさせていただきました。両津東部森林組合の皆様、ありがとうございました!
(報告:林業専攻2年 後藤)
(林業専攻教員 津田)