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2024年12月23日(月)

プチ林業事例調査in佐渡島(1)佐渡島の植生および演習林見学(2024/10/15~17)

こんにちは。

10/15~17日に、新潟大学農学部の「森林生態学特論」という授業に林業専攻の学生4人で参加させていただきましたので、その詳細について報告します。

実習場所は新潟県の離島「佐渡島」。内容としては、講義と野外見学があり、講義では森林生態学や林業の課題・木材利用に関すること学ばせていただきました。野外見学では新潟大学の演習林や島内の人工林間伐現場及び製材所等を見学しました。

まず最初に佐渡島の植生と演習林について報告します。
佐渡島は新潟県の北部に位置する日本海最大の離島(面積は東京23区の1.4倍)で約5万人の人が暮らしています。長年にわたり日本の金生産の中心であり、最近では世界文化遺産にも認定された「佐渡金山」や国際保護鳥に指定されている「トキ」で有名な島です。豊かな土壌と気候を生かし、農業や漁業、畜産も盛んにおこなわれています。

佐渡地図

佐渡島の地図

金山

佐渡金山

佐渡島は北に標高1,172mの金北山をはじめとする「大佐渡」、南は標高645mの大地山をはじめとする「小佐渡」、中央部には国中平野が広がっています。島の中央を通る北緯38度線が南方系と北方系植物の分布の境界とされており、それらの北方系と南方系の植物がひとつの島内で見ることができるのが佐渡島の特徴です。そのため、島の中でも場所によって植生が大きく異なり、大佐渡の標高が高いところではブナ・ミズナラ林、海岸沿いにはカシワ林が見られます。一方、小佐渡は標高が低く、山間ではコナラ二次林、海岸沿いにはシイ・カシ林が形成されています。

 

ハクサンシャクナゲ

ハクサンシャクナゲ

大佐渡で見ることのできた樹木を少し紹介します。写真のハクサンシャクナゲは本土のほうでは通常1,000m以上の標高の高いところに見られますが、佐渡島では1,000m以下の標高でも生息していました。佐渡島ならではのおもしろい特徴です。

エゾユズリハ

エゾユズリハ

オオバクロモジ

オオバクロモジ

ハイイヌガヤ

ハイイヌガヤ

また、日本海気候に見られるエゾユズリハ、オオバクロモジ、ハイイヌガヤ等も見られました。これらの樹木は地を這うように低木に成長し、多雪地に適応してきたそうです。

 

続いて新潟大学佐渡演習林について簡単に紹介します。佐渡演習林は大佐渡山地北部の稜線沿いに約500haの面積を持ち、その大部分は標高600m以上にあり、スギの天然林や針広混交天然林などの固有の森林群集が形成されています。演習林内には約500種もの植物と、多数の動物、菌類が生息するそうで自然度の高いフィールドとなっています。

佐渡の天然スギの樹齢は300~500年と言われているそうです。冬の北西からの季節風や雪圧により変形した枝や地面に伏した枝から新たな幹が成長する「伏条更新」などが見られ、整備されたスギ人工林とはまた違う神秘的な雰囲気を感じました。

天然スギ

天然スギの切り株

演習林内には雪解け水による湿地帯が多く存在し、クロサンショウウオ等の両生類の貴重な産卵場所にもなっているそうです。

湿地

湿地

また、風衝地と呼ばれる谷沿いから強風が吹き上げることにより樹木が成長できずに草地化している場所がありました。生えている木々も風上側の樹冠がなくなっており、風の影響力の強さを感じました。

風衝地

風衝地

風しょうのスギ

強風にさらされたスギ

今回、演習林を見学させていただいた中で印象に残ったのは、演習林の広大さとそこにある林分の多様性です。500haの面積の中には、スギの人工林と天然林、広葉樹林、針広混交林、風衝地、草原等の様々な環境があり、こんなフィールドで研究できる新潟大学の学生さんをうらやましく思いました。
また、これだけ広大な面積にもかかわらず、全体的に林道が開設されており、車で現場まで向かえる点もすごいなと感じました。(報告:林業専攻2年 佐藤、栗林)

(林業専攻教員 津田)