林業事例調査2024(2)高知県立牧野植物園さま視察(2024/7/22AM)
クリエーター科林業専攻「林業事例調査」の2日目AMは徳島県から移動し、高知県立牧野植物園にうかがいました。「日本の植物分類学の父」として名高い牧野富太郎博士ゆかりの植物たちや、一般非公開の標本庫をご案内いただきましたので林業専攻1年の田中が報告します。
土佐の植物生態園
正門を抜けると、牧野博士を育んだ豊かな高知の自然を表現した「土佐の植物生態園」が来園者を出迎えてくれます。高知県には国内の植物種の約半数が生育しているそうで、この生態園では、山地や海岸など、4つの植生区画で高知県の特徴的な自然の姿が人工的に作り出され、維持管理されています。それぞれの区画で厳選された構成種が、限りなく自生環境に近くなるようストーリーづけられた配置等をご説明いただき、職員の方々の専門性の高さや細やかな心配り、日々のたゆまぬ努力をうかがい知ることができました。見ごろの植物や、牧野博士がモデルとなったNHK連続テレビ小説「らんまん」に登場した植物のネームプレートには分かりやすく印がつけられていて、植物への愛情溢れる空間に、牧野博士が見守っていらっしゃるかのような神々しい光が降り注いでいました。
標本庫
牧野植物園には、34万点もの国内外の標本が収蔵されており、その貴重なコレクションの一部や植物標本を台紙に貼り付ける様子を拝見しました。後世のために、半永久的に研究資料として残すための標本作りの工夫、道具、分類、保管方法に至るまで、惜しみなくご説明いただき、日本が世界に誇る、標本庫の理想像を見せていただきました。素早く、乾燥した標本を美しく台紙に固定していくプロフェッショナルの技や、それまではさんでいた新聞紙に残った欠片までも台紙上の袋に納めて、大切に保管されているのがとても印象的でした。
牧野博士ゆかりの植物
園内には、牧野博士が1889年に国内で日本人として初めて新種として学名をつけ、発表した「ヤマトグサ」も展示されていました。標本や文献が不足していた頃、日本では外国の研究者に種の鑑定を依頼しており、新種と判断されると学名も国外で発表されてしまっていたそうです。このヤマトグサの発表を皮切りに次々に日本人の手で植物に学名がつけられ、新種が発表されることになったとのことで、その意味では日本の植物分類学発展の記念碑的な植物を間近で見ることができ、感慨深い思いに浸りました。
学生の感想
牧野植物園を訪れての感想は、建造物や設備の立派さもありますが、職員の方々の熱意や仕事の丁寧さにあるように感じました。
始めに案内していただいた標本庫では、乾燥を終えた植物を次々と手際よく標本にしていく作業や、地域ごとにフォルダの色をそろえて収蔵する工夫などを拝見しました。また、多くの資料や資材があるにもかかわらず作業スペースや研究デスクは使いやすく整理されている印象を受けました。
正門入口の「土佐の植物生態園」では高知の様々な自然を再現しており、下層植生から高木に至るまで、すべての植物を各々の自然条件に沿った植栽をしていると伺い驚きました。さらに、植栽された植物たちは、いつ・どこで・だれが採取したまで記録されているそうで植物園が学術的な施設であることを強く感じました。
時間の都合上、すべての施設は見られませんでしたが是非また行ってみたいと思いました。(2年 瀬下)
植物園の展示がとても印象に残りました。植物を説明するパネルの大きさや情報量が、道からの距離に応じて変えられていたり、巧みな視線の誘導であったり、剪定面を道側と反対方向に揃えたりと、「魅せる工夫」が随所に凝らされていると感じました。展示の工夫と日ごろの管理により、植物を通じて牧野富太郎の素晴らしさが伝わるような素敵な空間でした。(2年 古川)
まとめ
今回は全施設を見学させて頂くには時間が足りず、後ろ髪を引かれる思いで次の見学先に向かいましたが、短い時間でも、すっかり牧野植物園の魅力の虜となり、再訪を固く心に誓いました。植物についてもっと知りたいという気持ちを掻き立てられる大変刺激的で有意義な時間でした。快く園内の案内をお引き受けくださった牧野植物園の皆様に心より感謝申し上げます。
(林業専攻教員 津田)