林業事例調査2024(1)高丸山千年の森さま視察(2024/7/21PM)
クリエーター科林業専攻1、2年の合同科目「林業事例調査」では、毎年、学生が主体となって訪問する林業事例地を選び、現地へ見学に伺っています。今年は徳島県、高知県へ足を延ばし、2泊3日の行程で事例地を視察して周りました。それらのうち、今回は1日目に訪問した徳島県立高丸山千年の森について報告します。
高丸山千年の森は「森に親しみ・森を育て・森に学ぶ」をテーマとして、県民参加型の森づくりをはじめ、森林環境教育、木工などのイベントを行っている場所となっています。もとは徳島県の公共事業として、県民参加型の「千年の森」構想からはじまり、現在は地元有志からなる「かみかつ里山倶楽部」が指定管理団体として、施設等の管理と高丸山千年の森の運営を担っています。
そして今回は、高丸山千年の森における数ある活動のうち、主に県民参加にて行われている森づくりについて、現地の視察をしながら、かみかつ里山倶楽部の飯山様にお話を伺いました。
高丸山千年の森は大きく3つのゾーン分けが為されており、ブナの原生林からなる保全ゾーン、ボランティア団体等により管理されている育成ゾーン、千年の森の理念に賛同した周囲の森林所有者による協力ゾーンとなっています。今回の見学では、このうちの保全ゾーンと育成ゾーンの一部を案内していただきました。
保全ゾーンは古くからの信仰もあって、ブナをはじめとした広葉樹が保護されてきた区域であり、徳島県自然環境保全地域に指定されています。高丸山千年の森ではこの保全ゾーンをモデルとした森づくりが行われており、皆伐跡地を自然林として再生させるために、広葉樹の植栽が行われています。その際に、保全ゾーンをモデルとした植生調査・地形区分を行い、地形に応じたゾーニングと植栽計画が立てられました。そうして実際に植栽されたエリアを見学させていただくと、カエデやハリギリ等の様々な広葉樹が成林しており、植栽地の選定が難しいとされる広葉樹を育てるには、事前の調査を踏まえた適切なゾーニングと植栽が重要であると感じました。
一方で、植栽後の下刈りや除伐といった育林作業が予算の都合上、計画通りに行えていないというお話も伺いました。森の価値を認識して、森づくりにお金を投じてもらえるようにするにはどうしたら良いのか?そのためにはどのような森づくりが良いのか?自分でもまだ答えはわかりませんが、考え続けていきたいと思います。
また、高丸山千年の森の特徴として、県民参加型の森づくりという点が挙げられます。上に紹介した森づくりの一部は県内の企業やボランティア団体、家族といった団体によって管理がなされており、ボランティアというかたちでそれぞれに森林の管理が任されています。区画管理では応募制を採っていますが応募は多く、実際に現地ではブナ林をはじめ散策がしやすいように登山道が整備されていたり、様々なプログラムやイベントが催されるなど、一般の方々が参加しやすい環境が整えられていました。森づくりは畑とは異なり、成果がすぐに現れるものではありません。それに伴って、ボランティアの方々の高齢化や長期的なモチベーションの維持といったものも課題の一つであると伺いました。他方で、仲間と一緒に森に関わることが最大のモチベーションとなっているというお話を伺い、森という環境へのニーズがあること、人が楽しんで森と関わる仕組みを考えていく必要性があることを学びました。
以上、今回は徳島県立高丸山千年の森についての報告でした。日々、林業という観点から山について考えることが多い中で、広葉樹林の再生や県民参加の森づくりに取り組む高丸山千年の森には学ぶ点が多くありました。森林について木材生産のみならず、水源涵養や防災、空間利用といった多面的機能も求められる現況において、今後どのような森づくりを行っていくのか、どのように町や人とつなげていくのか、今回の学びをもとに考え続けていきたいと思います。 報告はクリエーター科林業専攻1年 唐木田、2年 梅村、佐藤でした。
(林業専攻教員 津田)