身近な生き物を知り、新たな視点を得る〜「昆虫・魚類同定実習」
先日、クリエーター科の学生を対象に昆虫や魚類などの同定について学ぶ実習を実施しました。
クリエーター科では樹木同定実習において、木本植物の見分け方を学びます。林産物という点では木本植物の見分け方は必須ですが、それ以外にも山菜、きのこ類などもわかっておきたいところです。そのために「特用林産物実習」「有用植物実習」などを1年後期以降に用意しています。ただ、里山やその周辺の環境にはそれ以外の分類群の生物も当然数多く生息しています。例えば森林や草地には昆虫類が、水辺にはそれに加えて魚類や両生類が見られます。それらは直接人々に利用されるものではなくても、人々の生活や生業と何らかの形で関係しています。
昆虫類は最も身近な野生動物ですが、アカデミーでの学びと関連するところでいうと、林業、林産業において害を及ぼす種があります。また森林環境教育の現場では様々な昆虫の生態を題材にすることも多いと思います。ただそれらの種は現場によって異なっているため、特定の昆虫を知っておくだけでなく、自分で調べて見分ける力をつけておかなくてはなりません。
魚類も身近な野生動物ですが、食用とされるもの以外は「雑魚」と総称され、一般に気にかけられることがあまりありません。しかしそれらもその地域の自然を形成するメンバーであり、周囲の環境と密接に関わっています。山—川—海の連関においては、魚に代表される水生生物の生息する環境と森林環境をつなげて考えてもらいたいと思っています。
1日目は昆虫の同定実習。市内の少し標高の高いところに移動して昆虫を採取します。
ある程度の昆虫が取れたら持ち帰って、標本作成と同定を行います。
脚や触角を伸ばして形を整えてから、各自で図鑑で調べます。これらの作業を通して各分類群の特徴を自分たちで掴んでもらいます。
あまり昆虫をじっくりと見たことのない人も多かったようで、その造形や生態に興味を持った人も多かったのではないでしょうか。
翌日は魚類の同定実習。最初に魚類の形態、分類群、河川形態などについて簡単に講義をしました。さらに他であまり伝える機会のない文化財保護法、種の保存法、外来生物法、漁業調整規則など魚類などの採取に関連する法規制についても話しました。その後、近隣の用水路に移動して、いよいよ採取。
採取したものはその場で同定します。それぞれの特徴を観察しながら、必要に応じて説明を加えます。
例年より種数は少なかったですが、主要な魚の種は見ることができました。捕まえることはできなかったですが、ナマズと思われる大きな魚影が見られ、興奮していた学生もいました。
またコオニヤンマ、ハグロトンボなど複数種のトンボ類の幼虫(ヤゴ)やミズカマキリなどの水生昆虫、アメリカザリガニやウシガエルの幼生などの外来生物も確認されました。
採取は行いませんでしたが、昔ながらの素掘りの用水路が見られるところ、無農薬栽培で米作りをしている田んぼなども見て帰りました。
たった二日間の実習でしたが、これまであまり目を向けたことのない生き物について知った学生も多かったようでした。授業アンケートではもう少し時間をかけて学びたいといった意見もありました。とりあえず今回の授業で大まかな分類群の見分け方はマスターできたと思いますので、今後は自分たちで調べることを繰り返してもらいたいと思っています。そして身の回りの生物から、地域の生物多様性や自然環境のあり方に目を向け、自分たちがこれから関わっていく仕事とどのように関連しているのかを考え、役立ててもらいたいと思っています。(津田格)