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2016年08月05日(金)

昆虫・魚類同定実習2016|魚類編

教員の津田です。報告が前後しましたが、8/2にクリエーター科の「昆虫・魚類同定実習」の魚類編を実施しました。

魚の実習?どうしてアカデミーの実習で?

森林とは直接的な関係はないように思われがちですが、昆虫と同様に多くの魚が里山環境に棲息しています。林に隣接する谷津田、水路、ため池、あるいは平野部の用排水路。それぞれの環境に多様な種類の魚類、水生生物が棲んでいます。ひとくくりに雑魚(ざこ)と扱うのでなく、それぞれをきちんと把握することは地域の生物多様性をどう保全するか、どのように自然と関わっていくかにつながります。森林環境教育の現場でも水辺の生き物を見る機会は多く、それらを同定する能力は必要不可欠です。

フィールドにでる前に、最初に魚とはどのような生き物か?というお話をしました。まず何も資料無しで魚の絵を描いてもらいましたが、種まで想像できる絵もあれば、なんだか良く分からない絵も。それらの絵をネタにして魚の体のつくり(ひれの位置、枚数、形やえら、うろこ、側線など)を説明します。それらの特徴は同定に必要不可欠なものです。
また、絵を描くことによって生き物って知っているようでいて(しかも魚は食べ物として見慣れているはずなのに)、きちんと見ていないことも実感してもらえたようです。

アカデミーの近くの水路に移動して、魚を捕獲し、同定を行いました(こういった淡水魚の捕獲には様々な規則があります。この実習では特別採捕許可、水路の使用許可をいただいて行っています)。

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捕獲した魚を観察用の水槽に入れて、観察します。水路に入っての捕獲では皆童心にかえって楽しんでいたようでしたが、観察の際も興味津々な様子でした。じっくりと見る機会は重要ですね。

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これはヌマムツ。かつては同属のカワムツと混同されて扱われていましたが(ヌマムツはカワムツA型、カワムツそのものはカワムツB型と呼ばれていました。ややこしいですね)、いまではきちんと別種扱いです。カワムツも採れたので、鰭の色の違い、鱗の粗さの違いをきちんと把握できました。

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つぎつぎに採れた種を観察しました。じっくりと見て行くとあっという間に時間が過ぎていきます。

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地域の生物多様性を脅かす問題のひとつに外来種があります。今回もアメリカザリガニのように誰でも知っているような外来種が採れました。そのような国外外来種は比較的知られているのですが(それでもアメリカザリガニの若い茶色の個体をニホンザリガニと思っている人は多いと思います。ニホンザリガニはもともと北海道、東北地方の一部にしか棲息せず、岐阜にはいません)、国内の別の地域からやってきたもの(国内外来種といいます)は軽視されがちです。これもそういう魚で、本来は琵琶湖・淀川水系以西にしかいないカネヒラというタナゴの仲間です。繁殖期の雄は非常に美しい婚姻色が出ます。おそらく他の水産魚種に混入していたか、愛好家による意図的な放流がなされたものと思われます。どのように侵入して来たのかは想像にすぎませんが、他の種と競合する可能性もありますので、安易な放流はつつしみたいですね。近隣の自治体ではやはり西日本にしかいない魚種が入り込んで定着してしまい、問題となっています。その種の場合は肉食性が強く、他の水生生物ヘの影響が懸念されています。

その後、同じ地域の素堀りの水路を見学しました。田んぼと水路の高低差がなく、ニゴイ類、オイカワの幼魚やメダカ、ドジョウなどを観察することができました。昔ながらの懐かしい風景でもあり、ゆっくりと見ていたかったのですが、雲行きが怪しくなってきたため引き上げることに。
そしてアカデミーに帰り着いた途端にバケツをひっくり返したような豪雨となりました。水路に入るため濡れても良い格好ではあったのですが、間一髪で濡れ鼠にならずに済みました。

今回の実習を通して、魚などの水生生物の同定能力だけでなく、よく見かけるけれども実は良く知らない身近な生き物について知るきっかけができ、自然をみる視点を増やしてもらえたのではないかと思います。樹木の同定もそうですが、分からない種を自分で図鑑で調べ始めると格段に同定能力が上がり、それに伴って地域の自然のこともよく見えてくるようになります。それは今後のそれぞれの進路にもきっといきてくるものだと思っています。