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2023年11月11日(土)

小学校の授業でアカデミー生がプログラム実施〜その2「木のものづくり」

アカデミーの学生が、郡上市の市立明宝小学校5年生の「総合的な学習の時間」で、プログラムを実施しました。

10/16、2回目はものづくり。

1回目で、先人が育てた木を倒し、倒した木を使うことを意識したこどもたちに、身近な森からものがつくられること、そしてつくったものを大切にすることをものづくりを通して伝えたい、というのがねらいです。

木育プログラムをつくる授業で、曲げ木をつかったプログラムを開発していた木工専攻2年の堀田陽介さんが担当です。「木育講座の実践」という授業でしたが、いきなり本番での実践です。担当した堀田さんのレポートです。

 


 

2回目は、堀田が「木のものづくり」を担当しました。

間伐体験を通して木の良さを学ぶという内容の授業からの流れを引き継ぐ形だったこともあり、山に生えている樹と身の回りにある木製品へのつながりや、生活道具として木を使い続けるということを意識した講座づくりを行いました。

私には木のいろいろな使い方を知ってほしいという想いもあり、丸太を割る体験や曲げ木の要素を入れた「飾り台を製作する」内容として構成しました。プログラムの流れや内容が、授業のねらいに沿っているかどうか何度も打ち合わせを行い、内容を検討しました。

アカデミーの授業でちょうど曲げ木をつかった講座をつくっていたので、こちらを小学校の授業で実践しました。

クリエーター科 木工専攻2年 堀田陽介さん

まずは丸太を割る体験を行いました。丸太が板になる過程を体験してもらい、丸太の状態では見えなかった木の姿や、木目などの表面の様子や触った感触などを確かめるように注意深く観察しているこどもたちの様子が見れました。

次に木を板にする「へぐ」作業です。飛騨地方に伝わる「マンリキ」と木槌(マレット)いう道具を使って割っていきます。最初、木槌をどのくらいの力でたたいてよいかわからない子も多かったですが、しだいに加減をつかみ、協力しあってへぐことができました。節がある部分をへいだ子どもたちは、力を入れてたたいても、なかなかへぐことができず、周りからは声援が。

「木の中心(髄の部分)は色が濃くて、なんだか弱い気がする」など、木の部分での色の違いや折り曲げてみたときの強さの違いに気がつく子もいて驚きました。

「やったー、割れた。」と自分たちだけの力で木をへぐことができ、うれしさや達成感を感じた声も聞くことができましたが、「大変だった、難しかった。」といった林業に携わる人の仕事の大変さも感じてもらうこともできました。

木を板の状態に加工できたところで、古くから生活道具としても親しまれている、曲げ木を利用した「せいろ」や「おひつ」、そしてこの後に製作する飾り台のヒントになった「曲げわっぱの弁当箱」を紹介しました。

これらに使われる曲げ木について、どのようにして木が曲がっているのか、今回制作した「飾り台」を見せながら。図などを交えて説明しました。難しい言葉を使わないように意識し

「野菜と同じように、木は水分と熱を加えると柔らかくなる」

と、説明しました。

生徒のみなさんに、
「どうやったら木が曲がるのか、知っている?」

と問いかけると、すぐに、
「温かくすると曲がる」

と答えてくれた子もいました。
古くからの生活や木の文化をよく知っているな、と驚きました。

エンジニア科の学生もサポート

いよいよ、曲げ木をつくっていきます。

曲げ木をつくるにあたり、今回、オリジナルの治具をつくりました。
治具やクランプの取り付け方を説明したところ、子どもたちは真剣に聞いています、そして、率先して作業にチャレンジしていました。

3つの班で分かれて作業を行いましたが、子どもたち同士で教え合い、協力して作業をしている姿がとても印象的でした。

また、制作には普段はあまりつかわない、アイロンやノコギリを使います。道具の使い方をどう伝えるか。伝え方を工夫します。不安そうにしている子にはそっと手を差し伸べ、一緒に動かしてあげることで、コツをつかんだ子もいました。

木を曲げるはじめての体験

木を固定して、じわじわと曲げていく作業は難しいです。しかし子ども達は、時には失敗もしながら、時間をかけて「木のものづくり」を楽しんでいました。

「やった!きれいに曲がった!!」

きれいに曲げることができた子は、目をキラキラさせて喜びながらも、ふーっ、と息をついています。
作業にとても集中し、緊張していた様子が伝わってきました。

最後は、木の実や葉っぱなどを飾って完成です。

思い思いに森の素材で飾り付け

 

振り返りの時間では、生徒の皆さんから

「普段経験できないような体験ができて楽しかった」

「木について、いろんなことが知れた」

という感想が述べられていました。

制作では、曲げている最中に折れてしまうケースもありましたが、明宝のこどもたちは自然物を扱うことに慣れているのか、”失敗はつきものだ”ということを心得ている様子が、とても印象的でした。

失敗をもとに新しいアイデアを生み出すのも、こどもの自由な創造力ならでは

後日いただいた感想文には、こんな素敵な声もありました。

「木を曲げるときに1回目は木が折れてしまったけど、2回目は早く曲げるのではなく、型に沿ってゆっくり曲げたらうまくできた。今度木を使うときには、”水を含んで温めると曲がる”ということを思い出してやりたい」

「木に、昔生えてきた枝が、時間が経って年輪の中に埋まっていることを初めて知りとても驚いた」

飾り台を自宅に持ち帰った後も今日の体験を思い出し、明宝の山のことや、生活に身近な木を利用するということを思い出してもらえればうれしいです。(堀田)

 


 

授業の当初は「ふーん」という感じで、一歩引いた感じに見ていた子も、体験が進むにつれて前のめりになっていき、最後には、みんな道具や技術によって形を変えていく木の面白さに魅了されていく姿が印象的でした。

木育プログラムを実際に実施した堀田さんは、今回5年生のクラスを前にして、想定通りに進んだ部分もありましたし、思わぬ想定外が起きた場面もありました。ひとつひとつをふり返って、より幅広い人たちに向けられる講座にブラッシュアップしていって下さい。

<木工専攻 講師 前野 健>