ひとが育つまちは実在する?〜「教育のまちづくり」in島根
<2024.6.15-18>森林環境教育専攻の選択科目「教育のまちづくり」は、森林を抱える山村など、人口減少に悩む中山間地域の生き残りには「森林文化から”まちづくり”に関わる”ひとづくり”が必要だ」という仮説から始まった科目です。
卒業生が中山間地域に住んで環境教育を続けるるために、新しい生業づくりも必要になってきます。しかし、小さな地域で教育に関わることは、なかなかお金になりません。
そんな中、全国で展開されている「高校魅力化プロジェクト」の動きはひとつの可能性を示しています。ここから「教育コーディネーター」など、教員以外で公教育に関わるしごとや、さらには教育を通してまちづくりにも関わるような、新しいかたちの職業が生まれています。
地方での「ひとづくり」に関わる事業の今後の可能性を探るべく、昨年度から(一社)ココラボ伊藤大貴(いとう・まさき)さんに外部講師をお願いし、現地を見に行かせていただいています。昨年の徳島県に続き、今年は伊藤さんの出身地である島根県へ。地域の生き残りをかけた「高校魅力化プロジェクト」発祥の地です。
4日間のスタディツアーに参加したのは、クリエーター科2年生で森林環境教育専攻の野田さん、葭田さん。そして、林業専攻の梅村さん。
さらにスペシャルゲストとして、今年からココラボの外部取締役に就任された河田佳美(かわだ・よしみ)さんです。河田さんは大手オフィス家具メーカーで「共創空間」の立ち上げや、「探究学習」のプロジェクトをてがけられています。
林業専攻の学生と、河田さんに参加いただいたことで、環境教育とは違う、新たな視点で学び合うことができました。
地域・教育魅力化プラットフォーム(松江市)
小泉八雲が愛した美しいまち、松江市では「高校魅力化プロジェクト」を始めた、(一社)地域・教育魅力化プラットフォームに初訪問。憧れの地を訪れ、熱気あふれるスタッフの方々とお会いすることができました。
今、全国で展開されている「高校魅力化プロジェクト」、そこからつながる「地域みらい留学」は島根県が発祥です。さらに正確にいうと、「地域・教育魅力化プラットフォーム」から始まりました。「地域みらい留学」は、受け入れ校が34校だった2018年から、現在では全国で145校にまで広がっています。(2024.6時点)
オフィスは随所に”遊び心”と”ウエルカム感”あふれたクリエイティブなデザイン。現在は、伊藤さんのような兼業スタイルのスタッフも含め、全国で約60名の方が従事されているそうです。教育と地域に新しいムーブメントを起こしている現場を直接感じることができ、感動しました。
つわの学びのみらい(津和野町)
「山陰の小京都」と呼ばれ、美しい城下町が残る津和野町では、(一財)つわの学びのみらいの教育魅力化コーディネーター、舟山 喬子(ふなやま・きょうこ)さん、中山純平(なかやま・じゅんぺい)さんにお話を伺いました。お話を伺ったのは、元・教育魅力化コーディネーター 玉木愛実(たまき・まなみ)さんが設立した「(一社)津和野まちとぶんか創造センター(TMC)」が運営する素敵な「cafe & hostel TMC」です。
人口7千人弱の津和野町が取り組んでいるのが「0歳児からのひとづくり事業(ゼロプロ)」。
そのために、公営塾の運営や高校魅力化。そして高校だけではなく、保・小・中学校まで全てに「教育魅力化コーディネーター」を配置するなど、学校と地域がつながり、学び合うしくみを財団法人を設立して推進しています。
町に一つだけある高校では、地域とつながる活動が多くあります。外から移住した中山さんは、元高校教員。同じ教員として、学校の立場も理解しながら、高校の先生と協働しながら様々なプロジェクトを手がけています。
東京出身で、大阪で公立高校の教員として勤務された後、隠岐島前高校、益田高校と島根県内の高校で教員をされた中山さん。島根県の教育状況について、こう述べられました。
「新しい取り組みに、先生が柔軟です。それは、島根県全体に浸透しています。津和野でも、地域で人が育つ、新しい学びに求められていることへの教員の理解度がとても高いんです」
「高校魅力化プロジェクト」から始まった島根県の「教育魅力化」。新しい学びのあり方とそこにつながる地域づくりが、島根県では確実に浸透していっているということが伝わってきました。
では、「ひとが育つまち」が実現するとどうなるのか?
そのヒントを、益田市が示していました。ここからは、3日間にわたる「益田のひと」の皆さんからの学びを紹介します。
Day – 1「益田のひと」との遭遇
益田市は島根県西端に位置し、人口約4万3千人。森林率は86%で、人口の多くは海側に集中しています。「過疎」という言葉は、現在は益田市の匹見町が発祥とのことです。
隠れ家のような通称「SAWAE BASE」を訪れると、そこには10名以上の方々が。
あいさつもそこそこに、「まずはアイスブレイク!」と場が始まりました。
ファシリテーターは、今回伊藤さんといっしょに益田のコーディネートをいただいた、桐 雅幸(きり・まさゆき)さんです。
その後、4名の方から自己紹介&自身の活動についてのプレゼンをいただきました。
樋野さん(写真左上)Uターン/自称「ただの主婦
「ヨシダリーダーズ」「何もしない合宿」「中学校PTA」「カレー屋イッタク」「ゴッチャ楽団」石飛さん(写真右上)小学校教諭
「アイスブレイカーズ」「エデュブラリ」「若手教育グループ」ニュートン理奈さん(写真左下)Iターン / 地域コーディネーター
「ボランティアハウスでお年寄りと子供のつながりづくり」「小学校で育てたお米で、炊いて食べる・販売体験」「味噌づくり」和田さん(写真右下)看護師
「看取り士」「哲学対話」「公民館でスナック」「カレー屋イッタク」
これを見た方も、活動のタイトルだけで、キャッチーで、ググっときたものが多いのではないでしょうか。みなさん数多くの、そして多様な活動をされています。しかしそれが自発的・自主的に、無理なく、そしてなにより楽しく活動されている雰囲気がビシビシと伝わってきます。
どんな方が集まっている会なのか分からずお邪魔しましたが、ようやくここで気づきます。
ここに集まっている方々は、地域の方、民間で教育に関わる方、そして学校の先生なのです!
驚いたのが、先生が地域の方に混ざって「あれがやりたい」「これをやろうと」、和気あいあいとお話をされていることでした。
この会の名称は「シャカイノマド」。発起人は、やはり学校の先生である谷上元織(たにがみ・もとおり)さん。聞けば、今回プレゼンをされた方は、谷上さんから声をかけられたからとのこと。
「谷上さんに、”おいで、おいで”と言われたから来た」
「谷上さんに『当選したよ、おめでとう!』と、に言われたから来た」
そんな谷上さんも、小学校の先生です。いただいた名刺がこちら:
益田で何が起こっているのだろう・・・。初日から強烈なインパクトを受け、夜が更けていきます。
Day – 2 社会教育でまちづくりを推進
翌日、お話を伺ったのは大畑伸幸(おおはた・のぶゆき)さん。「ひとが育つまち」の骨子をつくり、推進してきた中心的人物です。
2015年、益田市は総合政策の基盤を「ひとづくり」と決意しました。政策を進めるにあたり、中心になったのが「社会教育課」というのが驚きです。大畑さんは、小中学校の教員、そして教育委員会で社会教育を長年手がけ、社会教育課長としてその策定に携わりました。2017年からは「ひとづくり推進監」を兼務し、益田市の政策を推進してきました。
ひとづくり推進監として大畑さんは移住推進にも関わり、”大切なのは個々の生き方である”と見出します。そこで市の政策「ひとが育つまち益田」のテーマを「ライフキャリア教育」としました。
こどもたちが多様な生き方を知り、自分らしい生き方を見つけるためには、「こどもが地域でロールモデルに出会えることが大切だ」と大畑さんはいいます。そのために、益田市では人と人が出会う機会が多く生まれています。人と人が出会い、成長し合い、次の出会う機会が生まれるーーー。
「”ひとづくりの好循環”ができてきた。ひとづくりを、学校教育と社会教育の両輪でおこなったのが益田市なんです」
また、益田市は「小学校を減らさない」という決断をしました。それは「コミュニティにはこどもが必要である。そして、こどもはコミュニティで育つ」という考えに基づいたものです。こどもが多様な大人と出会う場として、各地域の公民館が大きな役割を果たしているそうです。
「人間の原動力は偶発性。公民館でこどもと大人が繋がり、何かを始める。大人は、こどもを”まちの仲間”として対等に接します。活動を通して、子どもは”仲間と思える大人が増えた”、と感じます。こどもたちには、「学校での学び」と「地域での実践」という『学びの往還』が生まれています」
初日に感じた「益田びと」のエネルギーのヒントが、ここにありそうです
熱く、深く、3時間に渡って私たちと「対話」をいただいた大畑さん。ここに書ききれない膨大なお話の端々から、大畑さんが大切にしてきた人とのつながり、人が成長することへの思いやり、そして慈しみが伝わってきました。
Day – 3 「やりたい」を応援する社会教育
そしていよいよ3日目。最終日は、豊田公民館で、西益田地区の公民館を中心とした社会教育の取り組みを伺いまじた。
初日の「シャカイノマド」でアイスブレイクを担当した桐さん、実は「協働のひとづくり推進課(社会教育課)」の「派遣社会教育主事」です。桐さんの説明でまず、益田市の”ひとづくりに関わる人の配置”に衝撃を受けました。
- 益田市では20の地区にそれぞれ「公民館」がある。それぞれの公民館には公民館長と、公民館主事が3名配置されている。
- 学校運営協議会を設置して「コミュニティ・スクール」になった地区には、「社会教育コーディネーター」が配置できる。「社会教育コーディネーター」は小学校に在籍して、公民館と連携・協働しながら「地域学校協働」を推進(現在「コミュニティ・スクール」は7地域。うち、「社会教育コーディネーター」は5名が就任)
- 各地域には「地域自治組織」があり、そこに「地域魅力化応援隊」が配置されている。この隊員も公民館とつながりながら活動を行う。
- さらに、市の教育委員会からは活動支援のために「派遣教育主事」が担当の公民館をサポートする。
・・・人口4万人規模のまちで、公民館を核とした活動に専従で関わる人がこれだけ配置されている事例を、私は初めて知りました。少なくても、岐阜県とは大分事情が違うようです。
「社会教育コーディネーター」の石井七実(いしい・ななみ)さんは3年前、東京から採用募集を見て移住されました。
コーディネーターとして小学校に在籍しているので、先生とのコミュニケーションが取りやすく、さらに公民館とも連携しているので、地域との接続も柔軟にできるとのことでした。
- 「放課後こども教室」と「放課後児童クラブ」の連携
- こどもの活動をみて、保護者もやりたい!と始まった「図書館リノベーション」
- 移動してきた先生に地域の人を知ってもらうきっかけづくり「Withの会」
- 保育園の園長先生の発案で始まった、保・小・中・特別支援学校の体験交流
・・・など、石井さんのお話からも、益田イズムがひしひしと感じられます。
前日の大畑さんの会に続き、オンラインで参加してくれた、現在、島根大学1年の大庭 馨(おおば・かおる)さん。 2020年、中学3年生だった大庭さんは、「地域を元気にしたい」と考え、公民館に相談に行きました。
「人とは違う、面白いことをしたいと思ったんです。益田には、”大人と話せばなんとかなる”という環境があったのが良かった。言ったら、公民館に呼ばれたんです。公民館は日常的に近い、『サードプレイス』みたいなところでした」
公民館を通して地域の大人とつながり、他の中学生も巻き込みながら、竹灯籠の祭りのアイデアへと発展。開催すると、1,000人が参加する大イベントになったそうです。
企画から開催に向けて、大人は「こどもの夢を実現する」という姿勢ではなく、「対等な企画者」として中学生たちと向き合い、いっしょにつくりあげていきました。その会議は主に夜に行われ、そこに中学生が親の同伴なしで参加していたという話に、私たち全員、驚きの声をあげます。
公民館主事の石川有里(いしかわ・ゆり)さんは、その時の様子についてこう語ります。
「公民館は、家族を通して地域とつながっています。だから親御さんも安心して送り出してくれていました。また、こどもが地域の活動に参加するのは、保護者として嬉しいのです」
「西益田の灯火祭」は、代々中学生に引き継がれています。大庭さんが後輩たちの「ロールモデル」となり、先輩への憧れを持って活動が今も続いているそうです。
エネギッシュな益田の人々と出会い、そうした人が育まれる秘密を、徐々に紐解いていっていただいていったような、3日間でした。仕組みや起きた出来事を知るだけではなく、現地で、人との交流を通して体感的に感じることできたからこそ、ようやく「ひとを育むまち」で今起きていることの片鱗を理解することができました。
アカデミー生のふりかえり
インパクトがある濃密な時間を共にしたアカデミー生のみなさん。様々な気付きがあったようです。
葭田さん(森林環境教育2年/しゅうちゃん)
行って、見てきてよかったなって思うことがいっぱいあります。「前向きな気持ち」を、益田の人たちからすごく感じました。「誰が前向き」とかではなく、「前向きの連鎖」が循環をつくっている、そう感じました。大畑さんの言葉が印象に残っています。
「今起きていることに悩むのって、時間がもったいないから、進んでみて、振り返ったところに、答えがあるよ」益田では、子どもたちの選択肢が広がって、そこで大人たちもいっぱい混ざっていた。「学校が嫌だ」とか「生きづらさ」を感じるこどもが多いが、子たちが前向きになるためには、益田市の取り組みがヒントになるのではないかと思いました。
自分の好きな場所をフィールドにして、その地域で生きていきたい ―― 今回のスタディツアーで、その気持ちが強くなりました。
野田さん(森林環境教育2年/きょうちゃん)
益田の人々の”明るさ”みたいなものに、すごく衝撃を受けました。今回のキーワードとして、「専門家じゃなくても、普通の人でも、やりたいことをやる」というのがあったと思います。自分には、「専門家でなければ発信してはいけない」という思い込みがありました。「誰かから教わる」という形式で育ってきた、刷り込みの賜物かもしれません。
専門性は大事ですが、一方で、普通の人が”伝えたいから伝える、表現したいから表現する”ということだってあっていい・・・。 舟山さん(津和野)との対話の際に出てきた、「一番伝えたいメッセージとは、結局は、学校や社会で生きていく中で周りの目を気にして取り繕うのではなく、”その人が生きているだけでいいんだよ”という、人が生きていく上での安心感」という話にもつながります。
必ずしも専門的じゃなくても、なにか表現したい気持ちが芽生えたら人は行動していい。今回のスタディーツアーは、そのことを頭の理解だけでなく体感し、自分が「共に学ぶことを目指していく」ということを再確認する、素晴らしいきっかけとなりました。
梅村さん(林業専攻2年/ばいそん)
社会教育というものを本当に何も知らず来た状態で、1日目の夜に洗礼を浴びせられました。「社会教育」とGoogle検索しただけでは理解できなかったものを、頭ではなく、身をもって、肌で理解させてもらいました。印象に残ったことの中で、「お互いが変わること」というのがすごく大きくて。大学生の(大庭)かおるくんの「自分がいいと思ったことをやっただけです」という言葉に、 「やりたいをやろう。それでいいんだ」って、すごく背中を押してもらえました。
改めてこの4日間を振り返って、林業とまちづくりは、やっぱり通ずるものがあるなと思いました。その地域で生きていきたいと思えるためには、人と人とが、思いを伝え合う時間をとることが大事なんだな、と思えたんです。
「ひとが育つまち」を観る視点の考察
こうして終了した4日間の濃厚な島根スタディツアー。学びが多く、消化しきれていませんが、「ひとが育つまち」を観る視点をいくつか整理してみます。
1.「ひとづくり」の本質をとらえているか?
行政における総合計画や総合戦略、それに基づく施策の中で、「ひとづくり」を単なる人の数や経済効果から捉えるのではなく、市民一人ひとりの「幸福度(ウエルビーイング)」を念頭においているかが重要になる。「個を尊重する」、「多様性を高める」「変化を良しとし、むしろ歓迎する」などが明言されているかが、「ひとづくり」を中心とする「まちづくり」に大きく影響すると考えられる。
さらに、「ひとづくり=教育=学校のこと」とせず、「小学校を減らさない」「学校教育と社会教育の両輪でとらえる」という益田市の事例のように、時代の変化に合わせた新しい地域のしくみづくりを構想することが盛り込まれているかも着目点になる。
2.「人への投資」ー 地域にコーディネーター、サポーターが配置されているか?
「人が学び、成長し合う場づくり」が重要である。行政は当然人への投資をしているが、地域でのひとづくりに、専従や専門的に担うことができる中間支援的人材を配置する「人的投資」が行われているかが着目点になる。
津和野町では、保小中高校すべてに「教育魅力化コーディネーター」を配置していた。また、そのマネジメントのための一般財団法人を設立し、運営してる。
益田市は「学校教育と社会教育の両輪での活動」を目指し、主に小学校区を地域ととらえ、公民館への手厚い専従職員の配置の他、小学校、地域自治組織に専従職員を配置している。また、中央から「派遣教育主事」のサポートもある。
また、津和野町、益田市とも、教育に関わる人同士のネットワークがある。相互につながることで、情報交換や連携が行え、そこから新たな取組も生まれていた。
3.「やりたい」を応援するコミュニティがあるか?
益田市の人々から感じたのは、圧倒的な明るさだった。「やりたい」という気持ちが生まれ、それを実現できる「土壌」が熟成されていた。
「やりたい」を「言える・実現できる」にはいくつかの要因がある。最も大きいのは、「やりたい」という思いを聞いてくれる隣人がいる、というコミュニティではないだろうか。さらに、本人が活動の広がりを通して様々なコミュニティに属することで、”聞いてくれる隣人”は多様になる。「多様なコミュニティがあり、多様なコミュニティに属している人が大勢いるか」というのも、「ひとが育つまち」の着目点だろう。
特に益田市では、こどもの「やりたい」を大人がいっしょにやっている中で、大人自身も「やりたい」と思う事例を多く聞いた。こどもと大人がつながることで、これまでなかった新たな関係(狭義のコミュニティ)も生まれている。そのハブに、公民館が大きな役割を果たしていた。さらに公民館は、「こどものサードプレイス」ともなっていた。人が交わる機会が増えることで、他年代における新たなコミュニティが形成されることも期待される。
さらに学校、特に教員と地域の人々がフラットにつながることによって、学校教育だけではできない多様な活動が「自主的・自発的」に生まれている。これも新たなコミュニティが創造された結果だと考えられる。
4.活動する人々は対等の関係=「仲間」か?
益田市では、こどもたちのやりたいを応援しつつ、大人が「手伝う」「与える」のではなく、「対等な企画者」として、こどもと大人がいっしょに考え、いっしょに取り組むことを推進していた。その結果、世代をこえて名前で呼び合える「仲間」という認識が生まれていた。
大人同士も、役職や職業にとらわれず「仲間」として互いを認め合うことで、「やりたい・やれる土壌づくり」につながっていると考えられる。
さらに世代や役割を超えた「仲間」という感覚は、前例や慣習にとらわれてイノベーションが起こせない地域を、持続可能な形に変化させる力も持ちうる。益田市の事例では、大人が用意した一方的な「ふるさと教育」ではなく、こどもが大人と対等に関わる中で、地域の様々な人々の生き様に触れ、そこから自身のキャリアを考え、そして人々の生き方の根底にある「地域の魅力」に気づいていった事例があった。
・・・他にもまだまだありますが、ひとが育つ地域、その根底には「地域で暮らす幸福感」がある気がします。大畑さんの言葉が思い出されました。
「益田で生きていくのに、自分は困っていない。それは、助けてくれる仲間がたくさんいるから。無縁化社会といわれる中、地域で縁を感じられるのは、自分にとって『ソーシャル・キャピタル(社会的資本)』であり、それが生きていくうえでの安心感になっている。こどもたちにも、そうなってほしい」
今回受けたインパクトを消化するには、まだまだ時間がかかりそうです。
もやもやを抱えた帰路で、アカデミー生の梅村さんから提案が。
「今回のことを、アカデミーの教員、学生にも聞いてほしい。報告会をやりたいです!」
講師の伊藤さん、そして河田さんは「やろう!」と即答。「やりたい」「やろう」が、いつの間にか私たちにも伝播していました。
ということで、近い内に今回の旅の報告会を計画します。学校教育、社会教育、そして地域づくりに取り組む方々など「まちづくりは、ひとづくり」に関心がある方々といっしょに、島根県で起きていることを共有しながら「ひとが育つまちの姿」を考えたいです。そのときは、みなさんぜひお越しください。
伊藤さん、河田さん、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!
<追記>
視察が絶えない「すごい地域」には、必ず”おもてなし力”があります。それは”おもてなし力”をもった人の存在です。地域・教育魅力化プラットフォームのみなさま、津和野のみなさま、益田のみなさま、心温まる”おもてなし”、本当にありがとうございました。
そしてそして、益田の「シャカイノマド」の会場提供&たくさんの料理を一人でつくられた澤江さん(校長先生!)、すごい”おもてなし”をいただきました。本当にありがとうございました。
(森林環境教育専攻 小林(こばけん))