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2024年07月22日(月)

【アニュアルレポート2023】全国初!幼児自然体験指導者「現場交流研修」の可能性

〜公立・私立園・森のようちえんが混ざって学び合う超リアル研修の提案 〜

岐阜県立森林文化アカデミー活動報告2023より

教授 萩原・ナバ・裕作

まるで昔のサルの群れのよう。森の中で大人も子どもも同じ目線で過ごす

 

目的

 2022年、全国初の試みとして、保育士を対象とした「現場交流研修」を始めた。公立園、私立園、森のようちえん、行政担当者、保育士養成大学教授と学生が交流しながら、互いのフィールドで子どもたちと共に過ごし、参加者全員でじっくりふりかえりをする、今までありそうでなかった超実践型研修だ。その成果と可能性についてまとめた。

山の上に水を運ぶのもすぐ遊びに変わる

概要

背 景

 幼児期の身近な森の自然体験や自由な遊びを広めるため、2008年から保育士向けスキルアップ講座や出前保育を続けてきた。活動を続ける中、ほとんどの保育士が他の園の保育に触れたことがない事実を知った。「外の世界を全く知らない」保育現場の状況を知り残念に思った。

 

大人も子どもも一緒にワクワクする

 

全国初!「現場交流研修」のスタート

 2022年、森林総合教育センター「morinos(モリノス)」の指導者スキルアップ研修の一環として、公立園、私立園、森のようちえんの保育士と市町村関係者(子ども福祉や農林課)らが互いのフィールド(森)に集まり、子どもたちと遊びながら学び合いをする「現場交流研修」を企画した。参加メンバーには、岐阜聖徳学園大学の松本信吾教授と保育士養成課程の学生も加わった。年5〜6回平日開催で、ホスト園は毎回変わる。各園から限定1名(市町村は2名)で、毎回30名近い保育士が参加した。

 

見て見て!

 

一日の流れ

       朝9時半にホスト園もしくはフィールドの森に集合。参加者同士簡単な自己紹介をしてから子どもたちと合流。だいたい10時から14時が活動時間となる。森で子どもたちが自由に遊ぶ姿を観察したり、一緒になって遊んだりと、参加者は各自自由に過ごす。14時からは、その日に観察&体験したことのふりかえりを行う。野外や室内で車座になり、お茶をしながら、気づいたこと、エピソード、感じたこと、疑問に思ったことについて、16時くらいまで、みんなでじっくり話し合う。大学教授もコメントするが、有識者の考えとして尊重されつつも、決して一つの方向や答えに導かない。各自が感じ取ったことを、自分の言葉でアウトプットし、共有し、学び合い、考え続けることに重きを置いている。保育観の多様性が重要だ。

  • 各園のフィールドで実施
  • 森で子どもと一緒に過ごして体験から学ぶ 
  • 共通体験をもとに、みんなでじっくりとふりかえり
  • 一つの答えを出すのではなく、各自が感じたことを発言し学び合う。

   といったところがこの研修の肝となる。

 

森の中でのんびりと

これまでに見えてきた研修の成果 

  2年間10回(参加者のべ約250名。ホスト園園児込みだと約600名)の実施からその成果と可能性についてふりかえりと報告をもとにまとめてみた。

  • 森の中で園児が自由に遊ぶ姿をリアルに観察し体験することで、頭ではなく体感的に理解するため、保育士が自らの園に戻って実行しやすい。
  • 共通体験をもとに語り合い、多様な保育観を重ね合わせることで、答えが一つではないことを知り、自らの保育観や芯を醸成し始めるきっかけとなる。
  • 他園の保育士と交流することで、同じ境遇や悩みについて相談し合ったり解決策を見つけ出したりできる良い機会となる。
  • リアルな環境下で活動することで、リスクマネジメントについて現場で確認し合うことができ、身につきやすい。
  • 普段の多数保育ではできないが、本研修ではひとりの子どもをじっくりと観察することができ、子どものことを今まで以上に深く知ることができる。
  • 学生とホスト園とのマッチングにもなる。すでに3名が岐阜聖徳学園大学からホスト園に就職した。(保育士離職率低下につながる)
  • 同じ方向に向かう仲間の存在を知ることで、心の大きな支えとなる。
  • 異なる環境下で子どもの自由な遊びを観察することで、場の重要性より、関わり方、見守り方の重要性に気づくための良いきっかけとなる。

大人がわがままに遊べば子どもも遊ぶ

今後の可能性

 現場からのニーズは極めて高い。今後も継続し、さらなる成果が生まれることを期待する。将来的には、本研修が県内各地域で展開していくことが望ましい。

 

教員からのメッセージ

  室内研修より、森でリアルに子どもたちと接しながら仲間と学び合う方が圧倒的に効果がありますね。子どもたちのリアルな表情や反応に、心も体もグリグリ動かされちゃうからその後自分の園に戻ってからのアクションが早い!そして外の世界や違う考えを知り、いろんな人と混ざりあうのもやっぱり大事。こんなリアルな学び合いの輪を、これからもどんどん広げちゃいましょ〜。

 

ナイフは子どもを成長させる

 

活動 2022年〜(継続中)

連携団体 ぎふ森遊びと育ちネットワーク    
         

     morinos  

      

     岐阜聖徳学園大学(松本信吾教授)

     カワキタフィルム 

活動成果発表

動画: morinosチャンネル morino de van project富野保育園〜先生交流研修〜     

  (https://www.youtube.com/watch?v=aOqIIKOaC90&t=3s) 

     

書籍:「ずれ」を楽しむ保育シリーズ(中央法規 /2024.7出版予定)寄稿

 

アカデミーでの関連授業&課題研究

森のようちえん&プレーパーク実習 1&2(Cr科)

課題研究

 

過去のアニュアルレポートは、ダウンロードページからご覧いただけます。