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2025年02月17日(月)

「馬搬馬耕実習1&2」残雪の中充実した4日間でした!

森林環境教育専攻では、全国でも珍しい(というか唯一)「馬搬馬耕」を体験できる
4日間の実習があります。これにはいくつか理由があります。

(ドイツの森では馬搬が当たり前に見られる)

(ドイツの森では馬搬が当たり前に見られる)

連携協定を結んでいるドイツの林業学校では、最先端の林業機器と並んで馬搬という
伝統的な丸太の搬出方法を習います。単に文化や歴史を学ぶためでなく、林業の
選択肢の一つとして紹介されているのです。実際、馬搬を専門にしている林業家
にも現地でお会いすることができました。ドイツと同じように日本の学生にも林業
の一つの選択肢として紹介したいという理由が一つです。

さらに、ドイツでは馬を馬耕やセラピー、観光、スポーツ、レジャーだけでなく、
子どもたちの情操教育や自己肯定感を養うために活用したり、循環型農業や山を
痛めない林業の主役となったり、大人向けにリーダーシップトレーニングをしたり、
教員向けに子どもとの対峙の仕方を学ぶ研修の教材となったり、さらには馬耕に
よる付加価値をつけた農作物を販売したり。。とマルチに活用されているのです。

(自分より大きな馬の世話をすることで自己肯定感が高まる/ユースファームにて)

(自分より大きな馬の世話をすることで自己肯定感が高まる/ユースファームにて)

森づくり、食べ物作り、人づくりなど、多面的に活用されている馬を実際に感じる
ことで、アカデミーの学生にも多くの選択肢が広がることを願っての授業です。

残念ながら岐阜県には、同じ林業県でもあるお隣長野県とは異なり、馬搬や馬耕の
馬や技術が残っていません。ほんの数十年前まで残っていたのに。。非常に残念です。
なんとかしてその文化を復興させたいというのももう一つの大きな理由です。

さてさて、そんなアツイ想いのこもった「馬搬馬耕実習」を受講したクリエーター科
1年生の「レオ」こと伊藤悠貴君が授業の感想を書いてくれたの紹介します。

ここまで、なんちゃって先生 萩原ナバ裕作

******ここから 伊藤くんの感想 ********

導入のナバさんから引継ぎました、森林環境教育専攻1年のレオです。

見たこと、感じたこと、なるべく自然な文体でレポートしたいと思います。
よろしくお願いします。 さてさて、馬。みなさんは、お馬さんと言えば
どのようなイメージを持つでしょうか? 

私は、地元に上げ馬神事というお祭があって、お馬さんは小さい頃から
飼い猫と同じくらい身近で親しみがある存在です。一方で馬搬。現代林業は
効率能率重視の機械優勢で、そこに動物の姿は想像できないのではない
でしょうか?

一体どのような手法で馬を使い、急峻な日本の山から材を運び出すのか。
皆目分からないし、また想像もしたことがない未知の世界。
そんな疑問符を頭いっぱいに抱えて臨んだ、24年度馬耕馬搬実習。
今回は馬搬をメインに、5日間みっちり実習させて頂きました。

初日  2/10(月) 晴 午前:学生で授業準備。 午後:岩手県遠野から講師の
岩間さんと共に馬2頭(リュウグモとユウロウ)が到着。そこにmorinosに遊びに
来ていた子供達が合流し、みんなでお馬さんと触れ合いました。

(右:ユウロウ 左:リュウグモ 手綱を引く倉本さん)

(右:ユウロウ 左:リュウグモ 手綱を引く倉本さん)

二日目 2/11(火) 晴 午前:本格的に練習が始まりました。最初は平地で
手綱引きから。ゆっくりと駆け足を体験したあと、2チームに分かれて競争
しました。結果は、二回ともリュウグモ組の勝ち。この日のユウロウは入り
から超スローモードで、中々早く歩いてくれませんでした。

午後:平地で丸太1本を引く練習。最後は2頭立てのロングレーン(馬の後ろから
引く長い手綱)による馬走を見学しました。舌鼓の合図で前に進み、狭い幅で
あっても自在に馬を操る岩間さんの技術力にみんな脱帽です。

三日目  2/12(水) 曇り後雨 午前:演習林で馬搬のロールプレイング。雪上の
斜面を、実際に馬を引いて登って降りてくる練習をしました。
午後:平地にコーンを置いて、丸太を繋いでの馬搬練習。感覚に慣れたら、
次はもう1本丸太を縦に連結させて、計2本。学生や参加者達も初日と比べて、
だいぶ慣れてきた感じです。その後は、昨日見学したロングレーンを練習しました。

(リュウグモと手綱を引く私)

(リュウグモと手綱を引く私)

四日目 2/13(木) 晴 午前:演習林で馬搬見学。かかり木を馬力で落とし、
それを4m間隔の丸太にして学校まで馬搬します。岩間さんや倉本さんによる
馬搬技術(馬の操縦、木材の搬出経路、道具使い)と、真剣な眼差し思わずに
見惚れてしまいました。

(岩間さんとユウロウ)

(岩間さんとユウロウ)

午後:卯建の街並みに、”馬” 登場。 私がどうしても見たかった、、そのわがままを
叶えて頂きました。NIPPONIA美濃商家町と美濃町家Mam’sさんの協力の元、
お店の前にある馬繋石にリュウグモとユウロウを繋ぎました。昭和30年代まで
普通に見られた光景が復活した瞬間です。

足を止める人、ついてくる人、仕事の合間に抜け出して来る人、老若男女問わず、
みんな驚きと温かくて優しい表情をしていました。

(馬つなぎ石と馬&ヤギ)

(馬つなぎ石と馬&ヤギ)

五日目 2/14(金) 晴 午前:演習林で馬搬体験。岩間さんと倉本さんの
サポート付きで、昨日伐木した木と丸太を斜面から下の林道まで馬搬集材します。
実際やってみて、滑りやすい足場と馬の圧力からくる恐怖心で、正規の搬出
ルートから逸れてしまいました。 午後:2頭立てで残木1本をロングレーンで馬搬。
林道から学校までのルートを参加者で回します。三日目に平地で練習しましたが、
実際に林道となるとカーブや傾斜を考慮するので、全く勝手が違っていました。

学生の中には丸太の上に乗って馬搬するガッツある女子もいて、岩間さんと2人で
「格好良いなぁ」と話していました(笑)

(二頭立てによる馬班の様子)

(二頭立てによる馬班の様子)

 

〜実習を終えて〜

 まず、5日間お疲れ様でした。そして、ありがとう。実習の他に、朝昼晩のご飯作り
とその為の段取り。それぞれが得意を生かし、阿吽の呼吸で動けていたかなぁと
振り返ってます。私は朝が弱くて、他のメンバーに助けてもらいました。

他にも自分が気付いていないだけで、色々な場面で助けてもらっているはずです。
本当に本当にありがとう。 続いてお馬さんのお話。 まず、馬のポテンシャルの高さ
に驚嘆しました。人間が危ないと思う斜面や石がゴロゴロして不安定な場所でも、
彼らは難なく登っていきました。

私は完全にお馬さんを見くびっていたことを知りました。平地ではいつも穏やかな
表情をしてるのに、山地では大きな材木を運び出す強馬になる。人間が古来から
仕事のパートナーとして馬と共に生きてきた理由を理解できました。

環境面から見ても、林業機械を通すための道や橋を作る必要もないし、CO2も
出さない。エネルギー源の草と馬搬技術者がいればいい。そして、実際に体験して
分かったことですが、馬と一緒に働くことは、危険もありますが、それ以上に
楽しいんです。今回はできませんでしたが、次は機会を見て馬耕に挑戦してみたい
と思うようになりました。

この意識変容は私が人間である以上、他の人にも起こり得ることです。この連鎖が
続けばもっともっと馬耕馬搬限らず、動物と協働することに関しての認知が広まって
いくはずで、岩間さんが提唱されている”アニマルカーボンオフセット”の可能性を
肌で感じました。また、化石燃料がいずれ尽きることを考えると、牛馬が主力を
なしていた時代に戻ることは想像に難くないし、環境意識が高い世界において、
機械力から畜力に転換していく時代はもう目の前に迫っているのではないかと
予感させられました。

まとめると、五日間という短い期間の中で ・動物と触れ合うことで起きる
心の変化 ・畜力の素晴らしさと可能性 ・馬の魅力 そして何よりも岩間さんと
倉本さんの ・馬搬技術と馬への向き合い方 をこの目で見て感じ取れたことは、
私にとってかけがえなのない学びになりました。

この授業のためだけに、わざわざ遠方の新潟と岩手からお越し頂き、本当に
ありがとう御座いました。貴重な体験の場を用意して下さった、我らがNAVAさん
にも感謝申し上げます。最後に来年もみんなが健康で会えることを願い、筆を
置きます。

以上、

 

森林環境教育専攻1年 レオ