やってみたいを応援できるまちづくり(ローカルビジネス)
<2022.1.22>クリエータ科・森林環境教育専攻1年、森田水加穂(みかほ)です。
アカデミーに来る前は、保育者として幼児教育に携わっていました。その中で、子どもを含めて<人間がどんな環境で生きていくことが”自然”なのか?>ということに疑問をもち、考えをより深めたいと思ってアカデミーに入学しました。最近は、人や自然、人同士が繋がって生きていく環境としての「社会」のあり方について考えています。そこに向かって私は何を目指すのか?を考え、行動する日々です。
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そんな私ですが今回、森林環境教育専攻の「ローカルビジネス」で、岐阜県関市の地域コミュニティー拠点「古民家あいせき」を訪れました。
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「古民家あいせき」の外観(関市)
関市では若年層の人口流出や少子化が進んでおり、人口減少が顕著な市街地中心部において、にぎわいと交流を創出し、市街地を活性化していく政策を展開されてきました。そのうちの一つが、まちなかの古民家再生による”にぎわい創出”です。
関市の商店街の真ん中に位置する「古民家あいせき」は、築約140年の古民家を耐震改修し、地域のコミュニティ拠点として再生した施設です。当時(明治20年頃)の建築様式を可能な限り元の状態に復元し、かつ公共施設としての機能を整備して、令和4年にオープンしました。
施設の基本情報はコチラ:
*開館時間は、朝9時から、夜は9時まで(!)
*休館日は、月曜日、休日の翌日、年末年始のみ(!)
*自習、作業、おしゃべり、会議、イベントなど、利用方法は自由(!)
*1部屋・1時間 100円で貸し切りOK。個人の利用であれば無料(!)
*飲食OK(!)フリーWi-Fi(!)
*老若男女、誰でも利用可能♫
古民家をリノベーションしたというだけあって、温かく落ち着く雰囲気です。私もついつい、座り込み、長く居座ってしまいそうになりました(笑)
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思わずくつろいでしまうような温かな空間
利用者は、午前中は高齢者の方、放課後は小学生、夕方からは高校生の利用が多いそう。休日はイベントを通して、多年齢での交流も見られるのだとか。
利用者の声が寄せられるスペースもありました。訪問したときは時間帯的に人が少なかったのですが、集まってくる人たちの温度感が伝わってくるようです。
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壁に貼られたメッセージボード。多くの人が利用していることが伝わってきます
この日、お話をうかがったのは関市役所 基盤整備部 都市計画課の那須政彦(なす・まさひこ)さんと、同課の粥川麻実子(かゆかわ・まみこ) さん。
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関市役所・都市計画課の那須政彦さん
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関市役所・都市計画課の粥川麻実子さん
お忙しい中、お二人は「古民家あいせき」とその経緯や運営について、たっぷりとお話をしてくださいました。その中で今回、私が印象に残ったことを3つに分けてお伝えします。
特に注目したのは「行政の場づくり」です。昨年の8月、アカデミーでドイツとノルウェーに視察へ行きました。そこでは、行政と民間の連携が自然な形でなされていると感じました。その経験から「行政と民間の連携」について、以前より興味を持つようになりました。
「市民からの税金で成り立つ行政」が、「どうお金を使うか」、実際に「どんな施設をつくるか、どのようにつくっていくか」という視点で、「古民家あいせき」で見て感じたことをまとめてみます。
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【視点1】 施設のカタチづくり「できる限り利用の制限を設けない」
- 一人でしっかり勉強したい・作業したい
- 勉強・作業したいけど、たまにはホッと一息、飲食できるスペースがほしい
- 温かい雰囲気の中、おしゃべりを楽しみたい
- 家や職場じゃない、心落ち着ける場所が欲しい
- 自分のペースで、いろいろな年齢層の人と出逢いたい
- 継続的に通いたい(= 安価で居続けられる場所がほしい)
このような、いろいろなニーズを持った人が集まることを可能にしているのが、
「飲食OK」「開館時間が長い」「使用料が安い(個人利用なら無料)」「古民家特有の明るく温かい雰囲気」という良さをもった「古民家あいせき」という施設です。
当初、どんな施設にしていきたいか?という話し合いをした際、「制限したらダメだよね」という声が、市職員の皆さんの中で上がったそうです。
小学生も、中高生も、バリバリ働く大人も、ゆったり過ごしたい高齢者の方も、みんながいて居心地のよい空間は、制限の少ない環境だからこそです。それを求めて形にした”市の方向性”のチカラがとても大きい気がします。
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自由で素朴な意見が寄せ書きされた「ことのはボード」
【視点2】 大人のお手本 「現地主義 × 情報をフランクに取りに行く」
那須さんは「~してみたい!」と事業を展開する具体案が浮かんできた際、
・事業を展開する場(地域)の環境を調査する
・実施したいことを、まずは試験的にやってみる
・試験後に、現地で利用されている方の声を拾いに行く
ということを意識されているそうです。
また那須さんは、取り組んでいる仕事に関する話を、さまざまな課の方とフランクにするそうです。会ったときに「〇〇についてどう思う?」「最近何やってる?」と、気軽な会話で相談し合うこともしばしばとのこと。
那須さんの言葉から、<”考えた案が、本当に現場に合っているか?”を多角的に捉える姿>や、<さまざまな立場の人と協力しながら、まちの活性化を実現させていく姿>が思い浮かび、「まさに、行政職員(というか大人)のお手本だ!」と感じました。
【視点3】 行政は火種。あとは民間の可能性を信じる
まちの活性化について、市はその起点をつくるスタートアップの支援(現地調査、魅力的な活動提案、多世代を巻き込んだ企画運営)をかなり丁寧にされていました。その一方で、行政が手をかけ続けるのではなく、その後の民間の積極的な行動を期待されていました。
「古民家あいせき」とは違う施設の事例ですが、実際に以前市が手掛けた事業で着想を得た市民の方が、市内で新たな事業を始めたという事例もあるそうです。
私自身の話になりますが、最初の一歩を踏み出すとき、具体的なイメージが湧かなくて躊躇してしまったり、仲間がいないと不安だったり、必要な手続きが分からず戸惑ったりすることが多々あります。そんな時、一緒に考え、共に歩んでくれる伴走者のような存在がいると、安心して一歩を踏み出せることが多いです。その後は、「自分で歩ける!」と思えて、伴走者がいなくても動いていくことができます。
だからこそ、行政が火種をつけてくれるのは有難いですね。何より、これだけ柔軟に、楽しそうに動かれているお二人を見て、「何かやってみたい!」「このまちをよくしたい!」と思える人はもっともっと増えていくはずです!
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お話を伺っている間、お二人はずっと楽しそうにされており、これからの希望や夢をもっている印象を受けました。目を輝かせながら、これまでの事業を「楽しかった~」と語り、「もっとこんなことをしたい」と意気込んでいる方が市の職員として活動されていることに、とても胸を打たれました。
職業、役職に関係なく、アツい想いを持った人たちが集まれば、もっともっと世の中はよく動いていける —— そんなことを強く思った1日になりました。
<クリエータ科・森林環境教育専攻1年、森田水加穂>