活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2025年01月24日(金)

川で遊ぶビジネス(ローカルビジネス第4回目)

<2025.1.15> 
森林環境教育専攻1年の伊藤(レオ)です。2025年が始まり、冬休みが明けて久しぶりに同期や先輩方と顔を合わせました。年明けすぐの授業は、「ローカルビジネス」。1月は現地視察が多くあり、その第1弾として、「リバーポートパーク美濃加茂」に行ってきました。

リバーポートパーク美濃加茂

 

美濃加茂市は、岐阜県の中央最南部に位置し、江戸時代は木曾川の舟運や中山道の宿場町(太田宿等)で栄えた歴史ある町です。かつて行われていた木曽川のライン下り、その乗船場があった跡地に、本格的なアウトドア体験ができる河畔の公園として2018年オープンしたのがリバーポートパーク美濃加茂です。ラフティング,BBQ,ドッグランが楽しめるほか、飲食店やフォレストエリア、休憩所などが設けられています。

講師は、同施設の管理・運営を美濃加茂市から委託されている、有限会社EAT&LIVE代表の水口晶(みずぐち・あきら)さんです。

水口晶さん

水口さんに案内をいただき、リバーポートパーク美濃加茂の施設を巡ります。敷地内にはヤシの木が植えられていたり、米西海岸のストリートにあるような文字が案内板になっていたりと、おしゃれな雰囲気です。

ビジターハウスのすぐ横には「BBQエリア」が。BBQができるテントが多数あり、驚いたことに冬はこたつでBBQができます!BBQは夏のイメージでしたが、冬でもカップルや女子会など、利用が多いそうです。

地面に描かれたサイン

 

BBQエリアでは冬はこたつが置かれる

 

施設の横には、広い雑木林もあります。その入り口には「DUBBO」の見慣れない文字。美濃加茂市と姉妹提携しているオーストラリアの都市の名前だそうです。森の奥にはカンガルー像もありました。

フォレストエリアにある看板

 

ビジターハウスには飲食スペースもあります。「 CAFÉ&PIZZA DELTA」は白を基調とした開放的なつくりで、どの席からも木曽川を見ることができます。
「岐阜の美味しいものだけが集まる自販機」がコンセプトの、様々なビスケットやクッキーアソートが並ぶ自動販売機もありました。

施設を一周し、ビジターハウスに戻って水口さんからリバーポートパーク美濃加茂ついて伺います。運営の他、企画立ち上げから指定管理事業者となるまでのお話について、とても詳細に教えていただきました。

美濃加茂市の他、会社の本拠地である郡上市や福島県など、各地で様々な事業を手がける水口さん。事業を手がけるにあたり、大切にしてきた、共通することがあると言います。それが、「川で遊ぶビジネス」です。

 

 

京都出身の水口さんは、大学時代に長良川と出会い卒業と同時に郡上市へ移住しました。1997年、アウトドア活動を提供する「EARTH SHIP」を設立し、ラフティングや飲食、キャンプ場、アウトドアアクティビティなど、たくさんの事業を手がけられています。最近では郡上市との共同による電力事業会社「株式会社郡上エネルギーソリューション」を立ち上げられました。

事業の理念や自身のキャリア、現在関わっている事業など、様々なお話をいただきましたが、その中で私が印象に残ったことを二つ紹介します。

***

一つ目は、「なぜ京都出身の水口さんが、縁もゆかりもない郡上へ来ることになったのか?」ということです。
水口さんが語る、数奇な人生のきっかけに興味を惹かれました。

「大学3年生の時に、野田知佑さんというカヌーイストの本を読み衝撃を受けて、その生き方に憧れを抱いた。
すぐに折り畳みのカヌーを持って、郡上八幡から長良川を下った。途中幾度も転覆して死にかけて、家路につく際のヒッチハイクで郡上の人と運命的な出会いをした、その方の縁で、郡上へ移り住むようになった」

ビジネスの話は勿論面白いですが、それ以上に「なんでそうなったの!?」とツッコミを入れたくなる、水口さんの人生史が、私は大好きです。

そして二つ目は、水口さん達が立ち上げた電力会社「郡上エネルギーソリューション」のお話でした。
2024年1月に官民協働で設立したこの会社では、小水力や太陽光、そして木質バイオマスなど、再生可能エネルギーを販売する計画です。しかし、大手の電力会社に売電するのではなく、地域で発電した電気を地域に供給し、その利益を地域に還元していくことを目指す、とおっしゃっていました。

主な供給先は、大量のエネルギーを必要とする温泉施設やリソート施設を想定し、観光に係るエネルギーのグリーン化したいとのことでした。アカデミーで森林環境教育を学ぶ者として、この会社の今後の動向に是非注目してきたいと思います。

コロナ化を契機にアウトドア需要が増して、今ではキャンプや登山専門YouTuberがいたり、メディアも盛んに特集を組んだりしているのをよく見ます。一方で、競争業者が増えれば他社との差別化を図って対立するのが普通だと私は考えていました。

しかし、EARTH SHIPのある郡上市は、同業者で組織を作り一丸となってアウトドアを盛り上げていました。都市部と違い、ローカルビジネスを継続していくには地域の横の繋がりが必要不可欠になってくることを知りました。

そして、ビジネスを回していく上で重要なキーワードだと感じたのが、事業に対する自身の「想い」です。

「自分が何をしたいかを突き詰めないと、うまくいかない。外的な要因では必ず破綻する」

水口さんは、自身の失敗談から学んだ経営者に大切なことについて語っていました。

 

別の講義に来ていたNPO birthの佐藤留美さん達といっしょに

 

経営者として意識していることについて?と聞くと、「特にないっすね」と鮮やかに水口さんは答えます。
「トップは誰よりも楽しまなければならない」・・・そう解釈しました。

「好奇心のままに生きてみる。遊んでみる」―― 私もその実践者でありたいです。
水口さん。お忙しい中、貴重な講義をいただき、ありがとうございました。

<クリエーター科・森林環境教育専攻1年 伊藤悠貴>