建物の温熱性能を計算する「環境性能設計Ⅰ」
木造建築の「環境性能設計Ⅰ」では、主に建物の温熱性能を定量的に計算する手法を学びます。
「木造建築計画の基礎」で計画の流れを概ね押さえて、核となる性能部分に踏み込んでいく授業です。
温熱性能には、①断熱性能、②日射制御性能(日射遮蔽と日射取得)、③気密性能、④防露性能の4つがあります。それぞれ居住環境を構成する大切な性能です。
この授業では、これらの性能を定量的に計算ができて、デザインに落とし込めるこめるように、計算、実測を中心に進めています。
アカデミーの特徴は少人数で行える点。じっくり内容を見ながら進めていきます。
今回は、標準的な住宅と、自力建設の温熱性能を計算していきました。
今年度の自力建設は、「里山獣肉学舎」で、居住の用途がなく、使用頻度も毎日ではないため無断熱です。どの程度の性能差があるのか、実際に計算によって求めます。
当然断熱性能は、スギ板30mmしかありません。現在の断熱基準の外皮平均熱貫流率UA値だと、普通の断熱住宅の4~5倍くらいの熱損失ですが、床面積が小さいので、もう一つの断熱基準の熱損失係数Q値を計算すると、見たこともないような凶悪な数値に・・・。
でも、実際は気積が小さいので、暖房設備を入れたとしても小さくていいねとか、いろいろわかってきます。
普段はなかなか説明できない庇の効果も詳細計算を行って、軒の出等の効果を計算していきます。
今年の4月からは、開口部以外の外壁にも軒の出の効果が見込めるようになりました。軒の出でどの程度日射を遮蔽できるか、取得が減ってしまうかなど検討できます。
今回の温熱性能を基礎に、1月から始まる「環境性能設計Ⅱ」では、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)や一次エネルギー計算など、応用編に進んでいきます。
准教授 辻 充孝