エゴノキプロジェクト 保護チューブを設置しました
このチューブ、何のためのものでしょう?写真とタイトルだけで分かった方は、山の事情にかなり詳しい方です。
これは本来、林業現場でスギやヒノキなどの苗木をシカやカモシカから守るためのものなのです。「幼齢木保護チューブ」といいます。
森林文化アカデミーでは2012年度より、和傘部品に使われるエゴノキの収穫をお手伝いしています。和傘は岐阜県が全国生産量の9割近くを占める伝統工芸品です。(エゴノキプロジェクトの詳細はこちらをご覧ください)
直径4〜6センチのものを毎年200〜300本ずつ収穫しているのですが、切り株から芽が出て成長すれば8〜12年ほどで収穫できるほどの大きさに育つので、持続的な収穫が可能だと計算していました(萌芽更新)。
しかし、その切り株から出た芽が、ことごとくシカやカモシカに食べられてしまっているのです。シカは全国的に爆発的に増え、林業に大きな被害をもたらしています。このままでは日本中の和傘が生産できなくなってしまうため、エゴノキの切り株に保護チューブをかけて芽を守ることにしました。
保護チューブを提供してくれたのは、積水樹脂株式会社。新商品の試作品を4種類いただきました。今回は各50本ずつ、計200本を設置します。
森の中に入ってみると、去年11月に伐った切り株が盛んに水を上げていました!幹は伐られても、根は生きているのです。
そして根元付近からは、萌芽枝が伸び始めていました。この枝たちが競うように光を求めて伸びてくれれば、まっすぐで工芸部品に加工しやすい幹になります。シカし!この若い枝が、シカやカモシカにとってはとても美味しいらしいのです。
そのためシカが届かなくなる高さに育つまで、チューブで覆ってしまおうという作戦です。
設置作業に参加したのは、森林文化アカデミー教員・学生・卒業生、森林技術開発・支援センター職員、積水樹脂の職員、山の駅ふくべ(地元林業グループ)の会員、和傘職人、県職員など、合計16人。
1本のチューブを2本のポールで支えます。1本ずつナンバーを付けてGPSで位置を計測します。今後数年にわたって調べ、動物から守られたかどうか効果を測ります。
林内には、シカの動きを捉える監視カメラも設置しました。カメラの前を動物が横切ると自動で撮影します。
午前9時から始めて午後3時過ぎに終了。ササに隠れているエゴノキの切り株を1本1本探さなければならず、急な斜面もあるため大変な作業でしたが、大勢の協力でなんとか目標を達成しました。
伝統工芸を守るためにどれだけ手間暇をかけて原材料を育てるか、難しい課題です。和傘職人の若手グループの間では、休耕畑を使ってエゴノキを育てる試みも検討しているようです。森林文化アカデミーとしても、できる限りのことを支援していきたいと考えています。