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2022年05月27日(金)

エンジニア科2年生 山の資源の利用あれこれ

<2022.5.27> エンジニア科2年生の「山村資源利用演習」がスタートしました。

1年生のときは全員共通で授業を行うエンジニア科。2年生からは学生それぞれの将来目標に合わせ、「林業」と「林産業」の2つのコースに別れて授業を行います。また、自分のやりたいことに合わせた選択科目も出てきます。

新米教員・こばけんがエンジニア科を担当する唯一の科目がこちら。前任の嵯峨先生から、「アカデミーの外で身体を思いっきり動かすものを!」という引き継ぎをいただき、宿泊研修を含む、全4回の講座がスタートしました。

林業やそれにまつわる技術、経済、林産物、などをしっかりと学んでいる学生のみなさん。これまで学んだもの以外にも、森の恵みやそれを経済に結びつける先人が地域にはたくさんいるので、実践を通して多くの気づきを得てくれるといいな、と思います。

 


 

アカデミーの先輩!となるエンジニア科2年生とは「はじめまして」なので、まずは軽い作業をいっしょにしました。

個人所有の森林にお邪魔しての作業。昨年秋に建築用に伐られた森で、主材が搬出された後に森に残された枝や末玉(木の先っぽ)の利用をします。建材やものづくりの材料にはなりませんが、「木質エネルギー」にはなります!

薪ストーブと薪ボイラーを併用する家用に、林地残材を集材し、薪に加工します。

1年間技術を学んだ学生たちは、チームに別れ粛々と作業。トビもチェーンソーも見事に使いこなして次々と森に残された木を燃料化していきます。

およそ1時間作業して一旦終了。この日7人の学生が集めて加工した木はおよそ0.3立米くらいでしょうか。この家では、薪ストーブ用の薪を一冬で約5立米くらい使います(ナラの場合)。今回集材したのはスギやヒノキですが、林地残材を5立米を集めて薪にするのは、このチームで16時間くらいあれば一冬分をつくれる計算。

電気や石油は楽で便利ですが、手間はかかるけど燃料も森からいただくことができるーーということを伝えて午前の部は終了です。

 


 

午後は、郡上市明宝の「ジビエ工房めいほう」さんに伺いました。事務局長の元満真道(もとみつ・しんどう)さんから、獣害対策で捕獲された野生動物の活用について伺います。

福岡出身で、もともと自然体験のインストラクターとして郡上に来られた元満さん。狩猟は興味があり自宅の庭でシカを解体していたところを近所の人に声をかけられて本格的に狩猟の道に。今ではジビエ肉加工のための工房を任され、運営と経営の中心となっています。

獣害対策として捕獲された獣たちの現状に強い衝撃を受け、捕獲された獣のいのちを大事にいただくことを自分の使命と感じた元満さん。地域のみなさんと協力しながら、森の獣の様々な利用に取り組んでいます。

元満さんの深いお話をお話を聞いた後は、実際の山に入ってみます。

「この木は表面が削られている。シカがよく通るところ」
「ここは明るくて風も通るので、動物も気持ちいい。動物の遊び場かな」

・・・などなど、普段見慣れている森も、元満さんの目を通すと、動物の暮らしが生き生きと見えてきます。

元満さんといっしょに森を歩いた後は、「ここにワナをかけるとシカが捕れるのでは?」というポイントを、学生がチームに分かれてそれぞれ探します。これまで聞いた話を思い出しながら、シカの気持ちになって、通りそうな場所を探していきます。

一通り学生がワナのポイントを決めた後、ワナ猟の免許を持つスタッフのみなさんが実際にワナを設置。なぜここにしたのか?を学生チームがそれぞれ解説した後、元満さんに講評いただきました。

「ワナにかかる確率は?」の元満さんの評価は「40%」「45%」「50%」と、3チームとも及第点をいただきました!しかし、かかりそうなワナをしかけたあとも、日々観察して少しずつ調整して最終的にかかるようにする、しかも肉をとるためにできるだけ良い状態でワナにかけるようにする・・・という猟師の視点はとても造詣が深いものでした。

最後にみなでふりかえり。

○感想・気づき
・ワナをかけに行った森は、アカデミーの森より明るかった。
・くくり罠の免許をとったときは、これでかかるの?と思ったけど、今日のワナはかかる気がした!
・ワナの設置はカモフラージュすればいいと思っていたが、元満さんの置き方をみて”踏ませ方”がある、というのがすごいと思った。

○元満さんに質問
・鹿肉はいくらで販売している?
・鹿肉の美味しい食べ方は?
・骨や革は廃棄している?
・動物の動きが山の脈が関係していると話していたが、脈でシカはどう動いてくるのか?

・・・などなど、さすがアカデミー生、という気づきや視点でした、


天気にも恵まれ、1回目は無事終了。みなさんお疲れさまでした。
これからも、薬草や地域の伝統植物の復活など、様々な「山村資源」を、地域の方と一緒に汗を流しながら学んでいきます。お楽しみに!

准教授 小林謙一(こばけん)