自力建設2019「Cobiki」最終回 竣工式を執り行いました
2020年6月24日、第19期自力建設簡易製材小屋「Cobiki」の竣工式を執り行いました。
コロナウイルスの影響で休校になっていたために6月になってしまったんだ!と声を大にしてお伝えしたい棟梁の太目です。
これまで、地鎮祭では雨上がりの蒸し暑い中、上棟式では作業を終えて式典の準備に取り掛かろうかという頃から雨。という雨と仲良しなCobikiでした。
竣工式も、前日まではちょうどその時間帯から雨がぱらつくかも…という不安がありましたが、午前中の曇天が嘘のような気持のよい晴れ空の下で竣工式を行うことができました。
初めに太目よりご挨拶とCobikiについて説明をさせていただきました。
が、久しぶりに大勢の前でお話をするため緊張していたことと、直射日光に当てられている参加者の皆さんのことを考えると長くお話するのが申し訳なくなってしまい、パッと終わらせてしまいました。
詳しくはブログをご覧下さいとお伝えしましたので、ここでCobikiについて振り返りたいと思います。
Cobikiは「見える」と「できる」をキーワードとして、設計、施工がされています。
元々はホリゾンでの作業ができる、その姿が見える。というものでしたが、スギとヒノキを使用することで、樹種による経年変化の違い、仕上げによる変化の違いなども「見え」、その違いを知ることが「できる」ようにしています。
また柱は、丸太柱や接着して製作した板柱、正角のものが。横架材は台持ち継ぎによる部分と、相決りに金物で補強しているものがあり、一つの建物でいろいろなことを見ることができます。
そして他にお伝えしようと思っていたことは、ほとんど以前のブログで昌太郎君が上げてくれています。
課題研究で木造建築のデザイン解析について取り組んでいる彼らしく、細かなところにも言及していますので、ぜひご一読を。
また製材した木材の一時的な置き場として、またレールを跨ぐのを防ぐために製作したレールカバーについては下田さんがブログに上げています。
→自力建設「Cobiki」用家具、レールカバー完成しました。
壁板に使用した相決り(あいじゃくり)板は久津輪先生に、レールカバーは前野先生にご指導いただくという、木工専攻の先生方の全面バックアップにより、竣工を迎えることができました。ありがとうございました。
さて、竣工式に話を戻します。
太目からの挨拶の次には施主の久津輪先生からのご講評です。
私が当日話しそびれた全体のプロポーションにも触れていただき、かっこよく仕上げてくれたとお褒めにあずかりました。
また現在の木工のトレンドとして、伐採された街路樹など、身近な地域の木をどう暮らしに活かしていくかがあり、その時にも活躍をしてくれるだろうとお話しくださいました。
さらに今年度から新たに「簡易製材と木材乾燥」という授業を設定し、ホリゾンを活用していくとのことで、Cobikiのこれからを想像できとてもうれしく思いました。
次に自力建設につきっきりでご指導いただいた、T-PLAN建築工房の田口さんからのご講評です。
1年前入学したてで建築経験者が少ない中、作業もして図面も引いて大変だっただろう、と労いのお言葉をいただきました。また建築専攻はみんな個性的でかまいやすかったとも(笑)。
私たちとしても一緒に作業をしてくださり、またいろいろなことをお話しいただきながらの日々はとても楽しいものでした。
そして記念撮影。撮影は旧知の仲のくまさんにお願いしました。50名を超す多くの方にお集りいただき、撮影です。
撮影の後はついに乾杯……の前に、今年度の自力建設棟梁兼代表設計者の木造建築専攻1年の杉山君からご挨拶です。
今年度の木造建築専攻は1人ということで、かなりの苦労が予想されます。ぜひ多くの方にお力添えいただいて、素晴らしい建築をしてもらえたらと思います。
今年度の自力建設テーマはこちら
そして乾杯。ご発声は長沼副学長です。
簡易製材機が活躍するのはこれからの時代。簡易製材機が各所にあるのが理想的な形であり、Cobikiはその先駆けになるだろうとご講評いただきました。
コロナウイルス対策として1人1本のペットボトル飲料で乾杯です。
その後は自由に見学してもらいつつ、今回はホリゾンの操作体験と、昔の製材方法であった大鋸(おが)挽き体験を企画しました。
ここでちょっとしたトラブルが……
長沼副学長に体験していただいたのですが、なぜか全然切れない……
しかし、ここには様々な分野のプロフェッショナルである先生方が!
帯鋸の切れ味の問題だろうとのことで、帯鋸を交換したら問題なく製材ができました。
このとき帯鋸の収納を作ってよかったと感じ、また切れ味が落ちた原因は、帯鋸のアサリの設定や、丸太に付く小石などだろうとのことで、製材は行為としてはとてもおおざっぱなように感じますが、とても繊細なものだと考えを新たにしました。
色々な方にホリゾン、大鋸挽きを体験していただき、製材の苦労、楽しみ、喜びなどなど…様々な思いを抱いてもらえたと思います。
最後にCobikiの名前について触れておきたいと思います。
なぜKobikiではなく、Cobikiなのか。
大鋸を挽いて木材を製材する人を木挽き(こびき)、大鋸挽き(おがひき)と呼ぶそうです。それをヒントにしているのはお気づきの通りです。
どれほど前までかはわかりませんが、流通が発達する前、製材は山で行なっていたそうです。
1494年に編纂された「三十二番職人歌合」には、
大がひき 杣板は世に出でながら哀れ身の おがひきこもる 山住ぞうき
という歌が載せられています。
大鋸挽きが挽いた板は世に出ていくのに、大鋸挽き本人は山にこもらなければならないのは憂鬱であるという歌です。
製材は大昔、世の中から遠い場所で行われていました。
少し前には街中に製材所があるのも当たり前なくらい身近なものになりましたが、丸太が海から来るようになってからそれらの数は減り、港湾部に移動したものも多いようです。
また製材が遠い存在となっています。
「Co-」には「共同」「共通」「相互」「同等」の意味があります。
Cobikiにいろんな人が集まって、製材を楽しんでもらい、木に、山に親しんでもらえるような場になってほしいと思います。
終盤にはコロナウイルスという社会の新たな課題に振り回されましたが、この日を迎えることができ、ほっとしています。
自力建設とはいいますが、自力だけでは竣工を迎えることはできません。多くの方にご理解とご協力をいただいたおかげです。どれだけ感謝を申し上げても足りませんが、この場を借りて感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
そして第20期の自力建設もコロナウイルスに振り回されて大変なスケジュールの中進んでいるようです。
ぜひ皆様のお力添えをお願いいたします。
木造建築専攻2年 太目光