換気や隙間風でどのくらい熱が逃げている?(心地よいエコな暮らしコラム21 断熱性能4)
建物からは、熱貫流による熱損失だけでなく、換気扇や隙間風によっても熱が逃げていきます。
どのくらい熱が逃げているかイメージできるでしょうか?
■「換気による熱損失量」を計算する
換気による熱損失は、空気1m3の熱量(容積比熱)0.35Wh/m3K × 建物内の気積(m3) × 換気回数(回/h)で計算できます。
「0.35Wh/m3K×気積」で建物内の空気が持っている全て熱量を計算し、それが換気によって熱が逃げているという考え方です。
ここで大切なのは換気回数をどのように見込むかですが、通常、新築時の換気回数には隙間風による漏気は考慮せず、機械換気を想定して0.5回/hで計算します。
つまり2時間でまるまる空気が入れ替わるように換気扇を回しているということで、新築ではこれが実現できるように設計されています。この0.5回/hは、健康に暮らすためにも必要な換気量から決められています。この空気質に関しては住まいの空気の大切さ(心地よいエコな暮らしコラム8)も参考にしてください。
例えば床面積120㎡、天井高さ2.5m(気積300m3)の建物の換気による熱損失は、、0.35Wh/m3K×300m3×0.5回/h=52.50W/Kとなります。
温度差が20℃(外気温0℃、室温20℃)では、52.50W/K×20K=1,050Wの熱を捨てていることになります。電気ストーブ1個分以上の熱が逃げています。
さらに、気密性能が悪いと勝手に外の空気が入ってくる隙間風の影響があります。実際、この隙間風が寒さの原因です。
表1に気密性能の違いによる参考の換気回数を示しますので参考にしてください。
一般的な新築住宅で特に気密を意識していないと、C値は4~5c㎡/㎡程度。機械換気と同じくらいの熱が逃げていくことになりますので、要注意です。
換気回数に隙間風の影響や熱交換換気の効果を見込むことで実際の建物状況に近づきます。
※1 表1の隙間風は外部風速2m/s、内外温度差20℃、隙間特性値N値1.5、風圧係数0.5(住宅地)と想定した計算値
※2 隙間風による漏気量は、換気方式によって異なります。換気設備がない場合と第一種換気設備は、漏気量がそのまま影響しますが、第三種換気では漏気分が換気設備で排出されるため、第一種換気よりも影響が少なくなります。
准教授 辻 充孝
※「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
断熱性能UA値の活用は、2021年8月号(第14回)で解説。
2021年8月号 第14回「断熱性能の基本④ 建物形状や規模を考えて設計する」
RULE1 換気や隙間風による熱損失を見込む
RULE2 熱損失を考える場合はQ値を使う
RULE3 断熱性能から室温低下をイメージする
RULE4 建物形状や規模の違いを考慮する
RULE5 施工精度を確認する
やってみよう! 「断熱性能から必要な熱量を求める」
計算演習や、このブログで書ききれない内容も書いてます。
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