心地よさは4つの要因で決まる(心地よいエコな暮らしコラム2)
コラムタイトルの「心地よさ」。今回はこの言葉について考えてみたいと思います。
図は、私の走り書きスケッチのため見にくいところはご了承ください。
心地よさは4つの要因(美的、心理的、機能的、生理的要因)で決まる
心地よさを決めるうえで暖かさや涼しさなどの「熱環境」はとても大切ですが、それだけで心地よさは決まりません。
デザインや使いやすい間取り、適切な収納量、静かな空間など、さまざまな要素がピタッ!と重なった時にこそ心地よさが生まれます。(下の図の上段)
つまり、熱や光、空気、音、エネルギーといった環境性能だけでなく、デザインや機能性といった意匠も大切な要素です。
性能だけ、あるいは意匠だけにこだわっても心地よい住まいは実現できません。
性能と意匠を行ったり来たり、時には同時に考え両方をバランスよく計画したり暮らしを考える力が求められます。
下の図の上段にあるように心地よい環境は4つの要因が影響しあっています。
・美的要因・・・好みのデザインや素材感、色使い、気持ちい吹き抜けなど
・機能的要因・・・動きやすい動線に加え、適切な収納量や位置、バリアフリーなど
・心理的要因・・・家族や気の知れた仲間たちと一緒にいる、部屋が片付いているなど
・生理的(物理的)要因・・・気持ちいい温冷感や不快でない臭いや音環境など
住まいを考えるときは、性能と意匠のバランスが大切。設計はこれらを行ったり来たり。
大きな窓や吹き抜けは開放的で気持ちいい空間かもしれませんが、冬は寒さが厳しく、夏は温室のようになってしまうこともあります。ですが、窓を小さくしたり、天井を抑えすぎると、窮屈な空間になってしまい本末転倒です。
大きな窓や吹き抜けといった計画の自由度を持ちつつ、弱点となりえる要素は性能をしっかり確保して心地よい暮らしを実現する必要があるのです。
デザインや性能のどちらか一方をあきらめるのではなく、全てをバランスよく実現すること。ちゃんとできます!!
4つの環境性能(熱、光、音、空気)
さて次に生理的要因と心理的要因に大きな影響を与える4つの環境性能も考えてみましょう。
環境性能は、大きく熱、光、音、空気の4つあり、評価指標がしっかりしてますので、計画や実測によって客観的に評価できます。(上の図の下段)
・熱環境・・・気温、湿度、放射温度、気流、熱浸透率など
・光環境・・・照度、輝度、素材反射率、グレアなど
・音環境・・・空気伝播音、振動音、衝撃音、騒音、明瞭度、エコーなど
・空気環境・・・CO2、O2、NOx、SOx、VOC、臭い、カビ、粉塵、病原菌など
森林文化アカデミー学内に建設したmorinosの建築秘話でもこれらの総合的な性能について書いていますので是非ご参照ください。
・環境性能を総合的に評価するCASBEE ~環境負荷低減の取り組み~(morinos建築秘話43)
・CASBEE Sランク~環境品質向上の取り組み~(morinos建築秘話44)
これら4つの環境性能の中でも、心地よさやエネルギー消費に大きな影響を与える熱環境はまず考えなければいけない大切な性能です。
暑さ、寒さは我慢してはだめです。
暑いとき、寒いときには小さなエネルギーできちんと空調できるようにして、心地よく健康的に暮らせる住まいが目指すべきすまいで、このコラムが目指す暮らし方です。
ここまで見てくると、建築や住まいは本当にいろいろなことを考えないといけませんね。
次回は特に熱環境における心地よさと快適さについて考えたいと思います。
准教授 辻 充孝
※イラストをたっぷり使った
「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」
を建築知識で連載中。
心地よさの話題は、2020年6月号(第1回)。こちらもぜひご覧ください。
心地よいエコな暮らしコラム
1.自分の暮らしぶりを見つめよう~環境家計簿~
2.心地よさは4つの要因で決まる
3.快適よりも心地よさを実現する
4.家の作り様は夏を旨とすべし?