太陽の傾きは季節と時間を読む(心地よいエコな暮らしコラム13)
夏至と冬至の太陽の傾きから軒の出を検討する図をよく目にしますが、日照検討はこれで十分でしょうか?
夏至は6月21日前後、暑くもなく気持ちいい季節ですね。
気候データからも、最も暑い時期は7月下旬から8月上旬頃(大暑)です。そのころには太陽の傾きも低くなってきていますし、残暑の時期はなおさらです。
また太陽は12時の位置で止まっているわけではなく、東から日が昇り、西に沈んでいきます。まだ暑い15時頃はすでに低くなってきているのです。
つまり日照を検討するには、「時期」と「時間」の2つの視点も合わせて考えるべきです。
季節を読む
地球は地軸が23.4°傾いた状態で公転(1年間で太陽の周りを1周)することで季節が生まれます。加えて中緯度の偏西風帯に位置する日本には明確な四季があります。
最も日が長いのが夏至ですが、最も暑くなるのは大暑と、ずれが発生しています。これは梅雨時期の曇り空の影響もありますが、地球の蓄熱効果による位相のずれです。1日の変化でも日射強度が強い12時ではなく14時くらいが最高気温になりやすいのもこのためです。
時間を読む
1日の太陽の動きを見てみると、日の出は東の地平線から昇り、太陽が最も高くなる南中時を迎え、西の地平線に沈んでいきます。
北緯35°の南中時(南)で考えてみると、夏至は78.4°と最も高いところから日が差しますが、最も暑くなる大暑の頃は75.4°と少し低くなります。暑さの残る8月下旬は63.5°とかなり低いことがわかります。
夏期における南の軒の出の検討は60~78°近くで検討すべきです。ただ、この軒の出は冬期には日照を阻害しますので出しすぎは厳禁です。
また、まだまだ暑い大暑の15時は45°とかなり低い位置から太陽が差し込みます。南西や南東に向いている窓は、より注意が必要です。
また、東西は、ほぼ真横から日が差してきますので、庇では防ぎようがありません。
一方冬期の検討は、最も厳しくなる冬至で検討することで安全側になるのでお勧めです。
軒の出の検討は重要な日射調整要素ですが、時間や季節を考えると、これだけではコントロールしきれません。すだれやカーテンなどの付属部材やガラスの性能も一緒に考えるべきです。
下図は北緯35°の季節ごとの太陽高度です。
准教授 辻 充孝
※私のつたないスケッチではなく、イラストをたっぷり使った
「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
太陽の動きと庇に着目した特集は、2021年2月号(第8回)。
気象データの演習用のシートや、このブログで書ききれない内容も書いてます。
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