オープンカレッジ「ハチの家をつくろう」第3回目実施しました
10/22にオープンカレッジ「ハチの家をつくろう」の第3回目の講座を開催しました。最終回となる今回は5月の初回講座で作った「ハチの家」の観察がメインです。初回の講座では様々な昆虫達が利用できるような小屋(ハチの家)をつくり、そこに穴等に巣をつくるハチ類のために竹筒の束を設置しました。小屋やすみか作り、それを利用する昆虫の観察を通して、森林をはじめとする自然環境や人と野生生物との関わりについて新たな視点を得ていただくことが講座のねらいです。
まずは設置後、これまでに竹筒を利用しにやって来た昆虫達を写真で紹介。竹筒を利用するハチには獲物の昆虫を捕まえてきて幼虫の餌とする狩り蜂の仲間や、花粉を集めてくるハナバチの仲間がいます。ハチ類以外にも竹を食べるカミキリムシや、竹筒に棲むハチに寄生するハチ(寄生蜂)やアブの一種等も紹介しました(以下の三枚の写真は夏の間に撮ったものです)。
写真紹介の後、小屋の観察へ。もう竹筒にやってくる虫は減って来ていますが、それでも寄生蜂の一種がうろちょろ飛び回っていました。設置した竹筒にはドロや枯れ草のようなものが詰まっているものがあります。径の違うものを選んで室内で観察することにしました。
鉈で竹筒にすこし切れ込みを入れ、少しずつそっと割ってみると‥‥
ドロで仕切られた小部屋が。そしてそこには幼虫が。
ドロではなくセロファン膜のような仕切りのものもありました。
獲物のクモ(ワカバグモだそうです)が生きたまま詰まっているものもありました。(これはハチがクモを捕えて針で毒を注入して麻酔をかけているものです。動けないけど生きている状態でハチの幼虫の餌になります)
自分たちで仕掛けた竹筒のなかで起こっていたことに、皆興味津々。スタッフも盛り上がっていました。
午前中の観察で充分満足しましたが、昼食時にはすこしスペシャルな食材を準備していました。
ひとつはヘボ(黒スズメバチ)の佃煮。これは岐阜ではそれなりにポピュラーな食べものですが、口にしたことのない人も多かったようです。最初はおそるおそる、でも食べると笑顔に。子供さんも積極的に食べていました。
そしてオオスズメバチの試食も。少し油で揚げるようにして、ぱくり。幼虫、蛹はとろっとした濃厚な中身で特に子供さんは競うようにぱくぱくと。東京の料亭だと一匹千円(!!)ということもあるそうです。成虫の唐揚げもかりっとして殻付きのエビのようでした。
さらにニホンミツバチの蜂蜜とドイツから買って来たWaldHonig(直訳すると森の蜂蜜)も試食してもらいました。WaldHonigはビンにマツの絵が書いてあって変な蜂蜜だなあ、と思って購入したのですが(マツは風媒なので花蜜は作らない)、先日の小田先生の講演でhoneydew honeyのお話を聴き、ハッと思って調べてみるとこれもそのようです(カイガラムシ等の甘露、つまり排泄物をミツバチが集めたもの)。濃い茶色の少し粘りの有る蜂蜜でした。
ちなみに虫はどうしても、気持ち悪い、怖い等のネガティブな印象を持たれがちです。講座の合間に、そういったネガティブな言葉は使わないで、使っていいのは「かわいい」、「きれい」、「かっこいい」などだけにしましょうと伝えました。でも参加している人はあまりそのような偏見はなかったようです。昆虫が絡む食べ物もほとんど抵抗なく口にされていましたので。
午後は持ち帰り用のハチの家づくり。海外ではInsekten Hotel(ドイツ語)、Insect house、Bug house等と呼ばれ、ガーデニングの一環として作られているようです。せっかくなので玄関先に置いても違和感のない置物となるような、可愛らしい見た目のものを作ってもらうことにしました。形は3種類。子供さんには可愛らしく組み立てが簡単なものを、大人の方は少し手の込んだものを作ってもらいました。
子供さんのものは木片にドリルで穴をあけて屋根をつけるのですが、穴の配列で絵を描いてみたり、ランダムにしたり、個性にあふれていました。大人用のものは作った箱の部分に長さをそろえた竹を詰め、余ったスペースに松ぼっくりを入れたり。だれかが「クリスマスの飾りみたい!」と言っていました。インテリアとしても飾れるような、しかも自分で作ったものに様々な虫達が入ってくれると、さらに愛着がでるのではないでしょうか。そこに棲みついた虫もともに。
今の我々の居住空間はすっかり自然から離れてしまっています。虫を始めとする人間以外の生き物は、(ペットを除いて)家の中から徹底的に排除される傾向にあるようです。けれども少し前までは家のつくりにおいて自然素材のものが多く使われ、そこに生き物が棲みついたり、家の周辺、ときには中にも生き物が出入りすることが有る程度まで許容されていました。昔の生活に還れとは言いませんが、多くの生き物が身近にいて当たり前、でもその状態が徐々に失われつつある現状を身近なところから振り返ってもらえたら、うれしく思うのです。
講座修了後、建物の近くにカマキリがいるのを見つけました。ハラビロカマキリのようだけど、どこか違和感が、と思って調べてみると、ムネアカハラビロカマキリと呼ばれているものでした。正体がはっきりしないようですが、国外外来種であると考えられており、最近国内で分布を拡大しつつあることがわかってきています。岐阜での記録は既に有るようですが、美濃市で見たのは初めてでした。あまりうれしくない出会いですが‥‥(津田)