写真(スマホSNS)を活用した地域アイデンティティ調査ツールの開発
クリエーター科の「森林空間利用プログラムと事業化」という授業で、JICA技術顧問(環境教育分野)を務められている三好直子さんを講師にお招きして、プログラム開発の実習授業を行いました。
三好さんは、ネイチャーゲーム(シェアリングネイチャー)という五感を使った自然体験プログラムの日本における創設メンバーであり、それを土台にした持続可能な地域づくりの現場に国内・海外で携わってきた専門家です。JICA(国際協力機構)では環境教育部門の「青年海外協力隊」の採用・研修・現地指導などを担当されています。
実は、青年海外協力隊と国内の「地域おこし協力隊」の若者が現場で直面する課題はとても似た面があります。環境教育にしろ農村開発にしろ、ニーズ(政策課題)には具体的成果(アウトプット)が求められ、現場の行政・住民もそれを隊員に期待します。でも現場でアクションを創りだす根っこのところで、「地域アイデンティティ」(地域の好きなところ、誇れるところ、愛着や懐かしさetc.)を発見し共有できていないコミュニティは、活動が短期的な成果主義に陥ってしまうことが多いのです。
今回の授業では、アカデミーの学生達が事業化やプログラム設計を考える前に、「地域アイデンティティを共有する調査ツールを自分達で考える」ことを課題としました。その際「写真(スマホSNS)を活用する」ことをポイントにしました。写真は従来から有力な調査ツールですが、これほど高性能で多機能な携帯端末がひろく普及した時代は史上初めてで、スマホSNSを活用した発信・共有には大きな可能性が感じられるからです。
当日は「森の工房」を拠点に、アカデミー卒業生や地域の関係者も加わって、三好さん指導によるワークショップ型で授業が進みました。
1)始まりは大月ヒロ子さん開発の「廃材カード」を使った自己紹介
2)開発教育でよく使われる「地球家族」という写真集を使ったフォトランゲージ
3)屋外へ出てでネイチャーゲームの「音いくつ」と「私の暦」という2種類のプログラムを体験
ここまで全ての体験や情報が「写真を活用して地域アイデンティティを調べる」という目的に沿って編成されていることにお気づきでしょうか?同時にリラックスした楽しい場づくりも達成しています。さすがです。
4)スライドをを用いた事例紹介:「地元学」、「上毛カルタ」、「私の街の○と×」の紹介
ここは午後のグループワークに向けた情報提供になっており、学生からの質問に担当教員も一緒に回答しました。
5)午後は3人チームに分かれて企画グループワーク:「地域アイデンティティを調べる」×「写真(スマホSNS)の活用」を条件に。発想の導入として「○○を通じて地域アイデンティティを捉える」の言葉出しや、企画ワークシートの提示も行いました。
6)最後の企画発表会。さてどんな提案が出たでしょうか?
チーム①は「軒先はパブリックとプライベートの中間領域」を基本コンセプトに、5本もの企画を発表。
チーム②は「おぞうに」「民具」「民謡」と写真を組み合わせた4本の企画を発表。
チーム③は「昆虫食」、アニメ『君の名は』をヒントにした3本の企画を発表。
どれもユニークでありながら実現可能性の高い企画だと三好さんからも講評をいただきました。学生の皆さん、ぜひこれらの企画を課題研究などに組み入れて実践検証してくださいね。
7)ふりかえり:今回はアカデミー教員とゲスト講師の組み合せにより普段なかなかできない「海外⇔国内/自然体験⇔地域社会」を往復しての授業が実現しました。豊富な情報とたくみなワークショップ進行によって、主ラインの目的だけでなく、学生ひとりひとりが様々なヒントを受け止め持ち帰ったようです。三好さんありがとうございました。
担当教員: 嵯峨創平(揖斐川町駐在)