わらび粉をつくる生き方(山村資源利用演習 第3回目・その3)
<2022.11.7-8>エンジニア科2年・林産業コースの選択科目「山村資源利用演習」の第3回目、レポートの続きです。
2日目も飛騨市神岡町・山之村の「わらび粉職人」、前原融さんの「わらび粉づくり」を通して山村資源利用の演習を行っていきます。
前日のように水にさらした”くず”を、この地域で使われてきた2つの木製の箱「舟」を用いて濾過をしていきます。
この地域では、上の舟は”揉む舟”という意味の「モンブネ」、下は”垂れ舟”という意味の「タレブネ」と呼ぶそうです。自然落下で、でんぷん質を取り出します。
取り出したでんぷん質を沈殿させ、乾燥させると、わらび粉が完成します。
木灰を布の上からかけ、水分を抜くなど、沈殿を繰り返していきます。
水分を見極めながら本沈殿を繰り返していって、ようやくわらび粉の完成です。
完成したわらび粉は、黒と白の2層になっています。ケーキみたいですね。
崩さないように、慎重にそっと取り出します。
白い部分が、和菓子の材料になります。
こうして膨大な手間と時間をかけ、食品用のわらび粉が完成します。
私たちが口にするもので「本物のわらび粉」が使われていないのは、こうした理由からそのほとんどが、安価な代替品で作られているからです。
貴重な「100%本物のわらび粉」でつくったわらび餅を前原さんがつくってくれました。
実食する学生たち。これまでに食べたことのない粘りと弾力、そして滑らかさです。
昨日からの実習で、わらびの根からわらび粉をつくる行程を理解しましたが、学生8人が1日目で掘った根っこ約40キログラムから取れるわらび粉は、たった2~3キログラムとのこと。
掘って、洗って、叩いて、濾して、乾かして・・・。前原さんは年間6キログラムのわらび粉を生産されているそうですが、体験を通すと作業の大変さが忍ばれます。
一方で、高価な本わらび粉とはいえ、そこから得られる収入は限られています。わらび粉だけでは生計は成り立ちません。前原さんは、農業の手伝いや除雪作業など、山之村で様々な仕事を手がけています。
「わらび粉が好きなんです。好きなわらび粉をつくるために、他に”稼ぐ仕事”をしています」
と笑う前原さん。
山村資源を利用する人、その生き方は、これから社会人になる若い学生たちにどう映ったのでしょうか。
そんな前原さんも、アカデミーの卒業生なのです。
この科目はエンジニア科向けのものですが、前原さんの生き方や考え方は、自身のあたらしい生き方に挑戦するために入学するクリエーター科のみなさんにも、ぜひ本人から直接聞いてほしいと思いました。
2日間の授業、次はいよよ最後のセクションです。(続く)
准教授 小林謙一(こばけん)