冬の森で”癒やされる”(森林空間利用の事業化 第3回目)
<2023.2.26-27> クリエーター科・森林環境教育専攻の「森林空間の事業化」を長野県松本市で実施しました。
今回のテーマは「癒やし」。講師は、昨年7月に「森林文化 〜森と癒やし〜」で講演いただいた、森林セラピストの甲斐原さなえさんです。1泊2日で、甲斐原さんのフィールドに伺い、「森林 ✕ 癒やし」の体験から学びます。
1日目は松本市の浅間温泉に集合。温泉街からつながる御殿山で、「香浴森林浴ガイド」を甲斐原さんに実施していただきました。香りをテーマに、木々の様々な香りを感じるとともに、光や風など、ゆっくりと山を登りながら五感で感じていきます。
山頂ではお茶をいただきながら、しばし目を閉じ寝転がったり、アロマオイルの香りを楽しんだり。しばし忙殺される日常を忘れ、ゆっくりと森に触れてきました。
宿に移動して夜の勉強会では、甲斐原さんのこれまでの経緯や、なぜ事業を自身で立ち上げようと思ったのか、そして日本における森林浴、森林セラピーのこれまでや原状など、幅広く講義をいただきました。体験を通して学んだ後、甲斐原さんの視点やアプローチを、それぞれが自身の学びに結びつけていきます。
2日目は前日と一転して雪景色の森へ。早朝から、乗鞍高原でのスノーシューのアクティビティと、雪の上でのリラックス時間を味わいます。最後には、参加者それぞれがオリジナルの香りづくりを楽しむなど、充実した体験プログラムを実施いただきました。
授業終了後の学生のみなさんのふりかえりの中で、
「森林浴とは、”緑茂った森の中で行うもの”というイメージがあった。今回のように、葉が落ちた冬の森でも「癒やし」をテーマにしたプログラムができる、感じられる、ということが印象的だった」
というコメントが印象的でした。それを成立するために必要なものとして、
「甲斐原さんのホスピタリティ」
「自然の魅力を引き出す着眼点」
「参加者同士の関係のあり方、つくり方」
「事前の準備と丁寧な対応」
などが挙げられていました。今回は1泊2日で、講師の甲斐原さんと学生がじっくりと対話できたこともあり、甲斐原さんの人柄を知ったうえで、「癒やし」をテーマにした森林活用をするときの甲斐原さん自身の視点やアプローチ、そして大切にしたいことなども含めて、多くの気づきを得ていたようです。
さらに、甲斐原さんのキャリアやアプローチの姿勢から、本科目のテーマである「森林空間を活用する」「それを事業化する」という視点について、学生それぞれがより具体的に、かつ主観的に持ってもらえたようでした。
深い学びと同時に、終始笑顔の学生をみて、今回のテーマである森林での「癒やし」もちゃんと達成されていたのでは、と思いました。甲斐原さん。2日間ありがとうございました。
1980年代に「森林浴」が提唱されてから40年が経った今、国は「森林サービス産業」を推進しています。「健康・観光・教育」がテーマとされる新しい産業は今後どうなっていくのか。その担い手は、どのような人材が求められているのか。岐阜県でも2022年度から本格的に着手されたこの動き、「森林空間の事業化」は新しい時代に入っていきます。
今年度のこの授業では、3名の講師・3つのフィールドで学びを深めました。3名の講師に共通していたことは「自分が本当に良いと思うもの」があること、そしてそれを「人に伝えたい」という愛情、さらに「伝えることを、どうやって成立し、継続するか」、つまり「事業化」というアプローチだったと思います。その時、経済的な視点での「事業」ではなく、森林やそこに関わる人々との共生の中で事業化のアプローチをする、ということがこれからの「森林サービス産業」にも求められていくのではないか、と考えさせられた1年間でした。
講師の皆様、本当にありがとうございました!
准教授 小林謙一(こばけん)