発想できれば、しごとはつくれる(ローカルビジネスの担い手に学ぶ 第3回目)
<2022.10.21> 「ローカルビジネスの担い手」3人目は、郡上市高鷲(たかす)町の蓑島俊介(みのしま・しゅんすけ)さんです。
高鷲町は郡上市の北端に位置し、現在は冬のウインタースポーツ、夏のレジャーなどで賑わいます。
そして、戦後の「開拓の村」としても知られます。先人の歴史と苦労を記録する「たかす開拓記念館」の見学からスタートです。
「たかす開拓記念館」で地域の気候風土、歴史背景や地場産業を少し知った後、本日の講師である簑島さんからお話を伺います。地域にあった任意団体「たかすのす」を2021年に法人化し、事務局を務めます。
地元出身の蓑島さんは、愛知の大学を卒業後、アパレル系のデザインやマーケティング、営業を手がけていました。
しばらく勤めた後、バックパックで海外を放浪して、外国にハマったそうです。ワーキングホリデーをつかいながら、様々な国を訪れた時、「田舎に行くと面白い」ということに気づき、出身地の高鷲町に戻ってきました。
生家が民宿をしていたこともあり、現在宿泊業に関わりながら、地域全体で新しい魅力発信をして観光を盛り上げる「一般社団法人たかすのす」を仲間と共に法人化しました。
自身の事業がありながら、なぜ新しく事業を立ち上げるのか?という問に、簑島さんは、
「一つの民宿だけが頑張っても仕方がない。<遊ぶ・食べる>でまち全体をつなげ、人を呼び込む新しいシステムをつくりたい」
と答えていました。
法人化した「たかすのす」は、20代から30代を中心とした若い組織。
デザイナーやビデオグラファー、ライターなど、多様な人々がメンバーです。
「たかすのす」は、これまでの観光の取り組みとどう違うか?と伺うと、
「まず、自分たちが遊んでみること」
と、簑島さん。普段からキャンプやウインタースポーツをやっている若いメンバーだからこそ、同世代がワクワクする、リアルな発信ができます。
今回お話を伺ったのは、貸別荘など多様な事業をてがける「オークひるがの」さん。
その中でも、2022年夏にオープンしたばかりの最新の施設、家キャンプをテーマにしたコテージです。
案内していただいたオークひるがの支配人・高橋史泰(たかはし・しいた)さんは、スキーをきっかけに高鷲町に移住。その高鷲町では今、ローカルビジネスなど、”小さなビジネス”を成功させようとする若者が増えている、と言います。
確かに、郡上市内でも高鷲町は特に、若者が新しい店や事業をはじめるケースを多くみられます。
学生からは
「逆に、なぜ多くの人は”仕事をつくる”とういうことができないのか?」
という質問に、簑島さんと高橋さんからは、
「”普通の人”は、暮らしの中で”考えること”が苦手なのではないか?」
「田舎の人は、普段の暮らしの中で、いろいろなことができないとダメ。スーパーマン的要素が求められる」
「だから、何をするか、どうするか、自分で考えないとダメ。発想できる力が必要」
「発想できれば、しごとをつくることも可能では」
などの意見が。
そして、新しい発想が生まれた若者に、資源や人をつないでくれる「ハブ」になる人、場所が高鷲にはある、といいます。
一般社団としての「たかすのす」は、利益追求ではない活動を目指していると、簑島さん。
しかし、その周辺ではLINEを活用した地域内広報が始まったり、新しく高鷲に住む人へのサポート、新しく事業を始める若者への応援が始まるなど、若者による「つなぐ」機能をもった新しいかたちの地域事業体が、暮らし、経済、環境など、地域の総合的な力を発展させる可能性を感じました。
「ローカルビジネス」は、直接的な利益だけではなく、それを成り立たせる「土壌」の育成も担っているのかもしれません。
地域で自分たちがワクワクする未来をつくろうとする「ローカルビジネスの担い手」のみなさんの言葉から、学生のみなさんは何を感じたでしょうか? いよいよ次回は最終回です。
貴重なお話をしていただいた簑島さん、高橋さん、ありがとうございました!
(記事中に登場していない、TANK CAFEさん、郡上市役所高鷲振興事務所のみなさん、オークひるがの・麦島社長 他、多くの方々にもお会いしました。ありがとうございました!)
※この記事のアイキャッチの写真は、オークひるがのさんのヒット事業「ふわふわクレープ」です。
准教授 小林謙一(こばけん)