250人の集落に生業をつくる(ローカルビジネスの担い手に学ぶ 第1回目)
<2022.6.23> 森林文化アカデミーは、岐阜県美濃市にあります。
様々な思いをもって入学する皆さん。授業で県内の様々な地域を知るたびに、ここに住みたいなーと思う人も多々。アカデミー入学を機に岐阜に訪れ、そのまま定住する人も多いです。
でも、自分らしい生き方ができるしごとが地方にあるの?
ぶっちゃけ、地方で食べていけるの??
・・・という不安があるのも事実。
そんな中、「自分らしい生き方を実現する、自分らしい働き方は自分でつくる!」というマインドの人がチャレンジしているのが、岐阜県各地にある中山間地域のようなところです。
持続可能な社会の実現のため、これまでの考えの延長だけではない、新しい生き方、多様な社会づくりを目指すアカデミー生が先駆者のみなさんにお会いし、その”生き様”からこれからを考よう・・・というのがこの科目の目的です。
今年4月から就任した新米教員の私としては初めててがける授業なので、最高のインパクトを学生に持ってほしいと、私が最高だと思っている郡上のみなさんに、やはり胸を借りることに・・・。
そして、「ローカルビジネス」を理解するにはその事業の背景にある地域を知らないと理解できない!というのが私の信条ですので、地域を理解するには現地に行くしかない!ということで、この科目もすべて現地に伺います。第1回目は、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)へ。
まずは集落の一番奥にある白山中居神社をお参り
お一人目は、平野馨生里(ひらの・かおり)さん。
岐阜市出身で、東京で勤めた後。出身地の岐阜での地域活動したいと戻って来られました。仲間との活動の中で、現在お住まいの石徹白に出会い、この地に惚れ込んで移住を決意します。
約250人の小さな集落で生業をつくるために、「石徹白洋品店」を設立。地域の伝統的な「たつけ」の技術をつかった、機能的で新しい服を生み出し、全国的に注目されています。またこの「たつけ」は、布を無駄にしない直線断ちでつくるため、とてもエコとのこと。
かおりさんが、なぜ石徹白に惹かれたのか・・・。
大学時代にで訪れたカンボジアでの体験、そこから確信した「幸せにはたらき、暮らす場所をつくる」という自身のイメージについて。また石徹白での暮らしを始めた住まい、新しくつくった建物、作品となる服など・・・。それらを通して、かおりさんの想いとストーリーが語られました。
お昼は石徹白唯一の食事処「MAGOEMON」さんに。
それまで夜に空いているお店がなかった石徹白ですが、このお店ができたことで、若い人が集まる場ができたそうです。
ここで、朝からいっしょに参加いただいている石徹白洋品店のインターン生の杉本さんに加え、かおりさんのご主人の平野彰秀(ひらの・あきひで)さん、そして石徹白で地域おこし協力隊として活躍する加藤 健志郎(かとう・けんしろう)さんもご一緒いただき、お話を伺いました。
彰秀さんは岐阜市出身。馨生里さんと同じく、東京で勤めた後、石徹白に移住されました。
現在は小水力発電導入の事業をはじめ、様々な地域づくりをてがけています。
また、加藤さんは2021年度から地域おこし協力隊に就任し、山村留学のしくみづくりをてがけ、他に石徹白に来る前から手がけている「エディブル・スクールヤード」の業務も遠隔で行っているそうです。地域にこどもたちの溜まり場をつくり、親子で滞在して学べるようなゲストハウスなども手がけていきたい、とのことでした。
急な訪問にも快くお話をいただいた加藤さん。ありがとうございました!
たくさんの方々の刺激的なお話をうかがった後は、「御師(おし)の里」である石徹白という特別な場所をより深く理解するため、白山登山道入り口のシンボルにもなっている石徹白大杉にもご挨拶してきました。
推定樹齢1800年以上の石徹白大杉。杉の中に様々な生命が芽吹いている。
下山したみなさんから、本日の気づきを聞きました。
・田舎は不便という感覚だが、石徹白の人々は楽しく暮らしている印象だ。人々が、足元の魅力を知っている。その魅力を知っている人が、新しい人を呼び込んでいる。自分も、自分の住む土地の魅力に気づくことをしてみたい。
・かおりさんの「やりたいことを言う。はったりでもいいから、言葉にすると変わる」というのが印象的だった。アカデミー生になってやりたいことがどんどんできて悩みが、自分がやりたいことに、今はブレーキをかけなくていいのかも?、と思うようになった。一方で、自分はこれから、どこで何をするかを考えさせらる話だった。
・かおりさんは、カンボジアでの体験から、現在の事業まで、ひとつの「ストーリー」で語っていた。自分も将来、自分のやることをストーリーで語れるようになりたい。
・暮らしっていいな・・・と思った。昔、地域のおじいちゃん、おばあちゃんの家に泊まらせてもらって、楽しかったことを思い出した。将来はこどもに自然の楽しさを伝える仕事をしたいが、あそびも暮らしと関わっているので、暮らしについても大事にしたいと思った。
・・・などなど、学生同士で語りあっていました。
みなの熱心な対話から、かおりさん、そして石徹白とそこに暮らす人々から、少なからずインパクトを受けた様子でした。
平野馨生里さん、杉本さん、彰秀さん、加藤さん。ありがとうございました!!
帰路では、超豪雪地帯だということを聞いたのに「冬も来たい!」と言っていた学生もいて、石徹白の魅力は存分に伝わったようでした。石徹白に惹かれた人がまた伺うと想いますので、今後ともよろしくお願いします。
准教授 小林謙一(こばけん)