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2022年07月06日(水)

いよいよ本番!初開催「アバター会議」(ファシリテーション実習 第3回目)

<2022.7.6> ファシリテーション実習、最終回となる第3回目はいよいよ「実践」です。

岐阜県郡上市の「Gujo Society 5.1」のみなさんにご協力いただき、学生がファシリテーターとして参加するワークショップ機会をつくらせていただきました。

当日朝、郡上市役所に集合。全国から学生が集まるアカデミーには、初めて郡上市を訪れる人も。午後からのワークショップに向け、ワークショップの大きなテーマともなっている地域の方々が大事にしている「郡上らしさ」を感じてもらおうと、午前中のエクスカーションを「Gujo Society 5.1」にご協力を伺ったところ、グループの代表である臼田和博(うすだ・かずひろ)さんと、メンバーの置田優一(おきだ・ゆういち)さんが快く引き受けてくださいました。

私たちを出迎えてくれた「Gujo Society 5.1」の臼田代表(中央)

 

郡上市の中心である郡上八幡の視察のために、臼田さんが「まちなみ観光案内人」を手配してくださいました。郡上八幡博覧館から古い町並みを抜け、清流・吉田川を通り、徹夜おどりで有名な「郡上おどり」の会場となるまちを抜け、郡上八幡旧庁舎記念館へと、約1時間の町歩きをしました。

途中、町をめぐる水利用のシステムや、名水百選第一号となった「宗祇水」など、「水と踊りのまち」と称される郡上八幡のまちの形成や魅力、暮らしの知恵などについて案内がされました。学生はもちろん、臼田さんも「普段は歩かないし、地元のもん(者)も知らんことがあるなぁ」と感心しきりでした。

 

まちなみ観光案内人から郡上八幡の水利用のひとつ「せぎ板」を聞く

名水百選第一号となった「宗祇水」

 


 

各自お昼をとって、会場の郡上市産業センター 交流ホールに再度集合。時間があまりない中、全員で協力して手早く会場セッティングを行ます。ワークショップに参加する国交省の地方応援隊の方はオンラインでの参加のため、グループセッションに対応したオンライン環境も整えていきます。さすがクリエーター科で、当日指示にも関わらず、自分たちでやることを積極的にみつけて準備をすすめてくれました。

アカデミー生による入口案内

 


 

そしていよいよワークショップ。参加者は「Gujo Society 5.1」のメンバー6名、郡上市役所 政策推進課の職員2名、オンライン参加の国交省の地方応援隊2名。そこにアカデミー生19名が”ファシリテーター”として参加します。

臼田代表の挨拶の後、早速ワークショップをスタートです。全体ファシリテーターを小林が務め、本日のゴールを確認した後、参加者は3グループに分かれました。

今回初トライが「代理会議」。学生が参加メンバー一人一人から今の思い、考えをヒアリングし、本人の代理(アバター)となって、本人になりきってディスカッションをしてもらい、「結論/ゴール」までアバター会議で決めてもらう、というものです。そのため、アバターのみなさん(学生)には、ご本人になりきるために、徹底的にヒアリングをしてもらう必要があります。市職員の方、国交省の方にもそれぞれアバターが着き、ヒアリングをしてもらいました。

地域の人々の思いに耳を傾ける

普段はあまり聞けない、行政職員の思いも引き出す

 

ヒアリング時間が終わって2グループになり、いよいよ学生による「アバター会議」がスタート。メンバーのみなさんには、アバターの後ろで見守ってもらいます。ワークショップ手法の「フィッシュボール」の応用編です。

アバターはなかなか熱い議論が繰り広げ、グループファシリテーターを努める学生のみなさんの活躍もあり、ディスカッションが盛り上がりました。途中、我慢できなくなった?メンバーの方からコメントが入るシーンも。ファシリテーターとしてはこれがねらいで、自分達の考えを客観的に見ていただくことで、メンバーのみなさんは伝えたいけど伝わらないこと、あらためてこの場で伝えたいことなどがより明確になったようでした。

ディスカッションする「アバター」とそれを見守る地域の方々

グループファシリテーター役が「アバター会議」の結果をシェア

 

アバター会議の後は、いよいよ第2セッション、会議の「本人編」です。アバターの役割をした学生のみなさんは、今度はご本人の後ろでことの成り行きを見守ります。

本人編は当然、「アバター編」よりさらに熱い議論になっていきます。熱がこもりすぎて、ディスカッションの趣旨から外れていくこともしばしば。
グループファシリテーターの学生が流れの修復に困っている場合は、少しだけ全体ファシリテーターが介入します。メンバーのみなさんにはこれが授業の一環であることをあらためてお断りして、学生向けに「場のつくり方」「そこに対してできるファシリテーター的視点」「ファシリターとしての姿勢や関わり方」について伝えました。ポイントとしてはファシリテーターはあくまでも場のサポートで、いかにメンバーのみなさん同士がより良い対話ができるかが大切であり、そのためにファシリテーターが”進行”しようとしてはダメ、というものです。言葉で伝えるのが難しい、ファシリテーターの「促進」という役割、そして「プッシュ&プル」というアプローチについて、現場だから実感できる機会となりました。

学生のファシリテーションで地域のみなさんがディスカッション

また、「アバター会議」の効果は、メンバーそれぞれの”本音”が、メンバー間で共有できたこと。ワークショップに先だったヒアリングで、「メンバー同士の議論は活発だが、なかなか先に進まない」ということを伺いました。いつもディスカッションしているというみなさんですが、”お互いをよく知っている”ことで、逆に「今どんなことを思っているのか」という”本音”がなかなか言えない状況にもなっていたのかもしれません。
学生のヒアリングで本音を言うことができ、それを反映してディスカッションが進行しているため、これまでとは違う内容、結論が導かれているシーンも見受けられました。

 

デュスカッションが盛り上がる中、まとめをお願いして、第2セッション「本人編」を終了。2グループ、それぞれメンバーの方から本日の”結論”を発表していただきます。別々にディスカッションしていたにも関わらず、思い描く方向性は全員同じだということが、あらためて明らかに!
短時間で2つのグループの結論を融合し、「Gujo Society 5.1」の今年度の目標、それに基づく直近の目標、そして次回のスケジュールや内容まで落とし込まれて、3時間のワークショップが終了しました。

「本人編」は地域のみなさん自身が結論をまとめる

 


 

今年の「ファシリテーション実習」はこれにて終了。新米教員のはじめての担当でしたが、学生のみなさんにファシリテーションについて伝えることができたでしょうか・・・。

宿題としたレポートでは、「これからファシリテーションやファシリテーション的な考え、ファシリテーター的なアプローチは必要になると思うか?」という質問に、提出した9割の学生が「必要になると思う」と答えてくれました。

社会課題が複雑化し、よりよい解決策を導くには、多様な人の協働がますます重要になります。多様な人々が集まり「共創(Co-Creation)」を創造するためには、立場や囚われを超えてつながる創造的な対話の場が必要になり、そこには集う人々それぞれが「ファシリテーター的アプローチ」を担えることが求められていきます。
アカデミー生のみなさんが、これを機に興味をもち、社会に「ファシリテーター的アプローチができる人」が一人でも増えるといいな、と思います。みなさん、お疲れ様でした!

そして、貴重な機会をご提供いただいた「Gujo Society 5.1」の皆様、本当にありがとうございました。今回のワークショップがみなさまのお役にどれだけなったか・・・はとても心配ですが、メンバーの方から「終了後の反省会は、とても盛り上がりました!」と聞いて少しだけほっとしています。

「郡上の明るい未来を、市民にわかりやすく示し、共有したい。それを郡上市と一緒に描きたい」

という、熱い市民がつくる「Gujo Society 5.1」の活動。これからも応援しています!ありがとうございました!!

 

「Gujo Society 5.1」のみなさんと記念撮影

准教授 小林謙一(こばけん)