「聴く」が基本(ファシリテーション実習第 2回目)
<2022.6.28> ファシリテーション実習 第2回目を実施しました。
今年の「ファシリテーション実習」のゴール目標は、郡上市で地域づくりに取り組む「Gujo Society5.1」のワークショップを開催することです。第1回目の授業の後、学生有志の企画チームがオンラインで先方ニーズをヒアリングしました。
第2回目の授業の冒頭、企画チームの学生からは先方ニーズについて、直接お話ししたニュアンスも含めて全体に伝えてもらいました。伺った課題としては:
・ メンバーの意見がなかなかまとまらない。まとめたい(会議は頻繁にしている。意見は出るが、先 に進まないもどかしさがある)
・自分達だけで話していても行き詰まる。いい意見が出ても深められない
・・・などが挙げられ、アカデミー生の参加に期待することとしては:
・学生と交わることで、新しい発想力が生まれるのではないか?刺激をもらって、メンバーの限界を超えたい。
・気持ちの後押し。自分達が次に進むきっかけづくりにしたい。そのヒントが生まれること。
・・・とのことでした。
これらから、実施するワークショップでは
1)議論のゴール目標と、そこに向けた現在地の確認
2)議論がすすむうちに曖昧になっているメンバーの本音の引き出しと共有
3)近い未来(今年度)のゴール設定と、次のステップの明確化
を行うことがよいのではないかと考えました。そうすると、ファシリテーションを学ぶアカデミー生の大きな役割は「2)メンバーの本音の引き出しと共有」となります。そこで学生のみなさんには、相手の想いを引き出す「聴く」を実践できるようにしてもらいました。
前半は「聴く」の実践を中心にして、元・トヨタ白川郷自然學校 校長・西田真哉さんの「バナナワーク」、三人一組での「ジャーナル」を行いました。
後半は、次回のワークショップを前提に、グループファシリテーションのシミュレーション(ワーク)を行います。プロジェクトの計画を立てたいグループの状態が「発散期」か「収束期」かによって、グループワークのファシリテーションで有効となりそうな技法の演習です。テーマは「持続可能な地域をつくるために必要なもの」として、「発散期チーム」と「収束期チーム」に分かれワークを実施しました。
ブレインストーミングなどお馴染みの手法でワークをしますが、違うのは”メンバー全員がファシリテーター”ということ。今回はアイデアを出したりまとめたりすることが主ではなく、目の前で進行しているワークを”ファシリテーター”の視点でとらえ、自分がどう関わるかを考え、判断し、行動することが求められます。
各グループの進行は学生のみなさんにお任せしましたが、テーマが大きく、具体的ではないのでみなさん悩んでいます。時折「今回はアイデアを出すことが目的ではなく、いかに今の場が創造的(クリエイティブ)になっているか、そのためにファシリテーター的視点では何ができるかを考えてください」とアナウンスしながら、硬直している場面では流れをつくるために少しだけ介入します。
発散期チームのワーク
収束期チームのワーク
時間となり、ワークを終了して、ふりかえり。テーマが大きいだけに、アイデアや意見は出ますが、各グループは結論までは至りませんでした。この時間、対話の中でどんなことが起き、どんなことを思ったか、個々にふりかえってもらいます。
「今回使った技法を、来週の実際のワークショップでも使えそうか?」と質問したところ、皆それぞれ怪訝そうな顔をしています。技法が難しいのではないか、現場で本当に有効な方法かわからないなど、さまざまな意見がでました。素晴らしい!
ワークショップにおいて議論を活発にするための手法や技法は有効ですが、ファシリテーターが用意したプログラムにとらわれてしまい、実際の場に寄り添えていないことがあります。私がアカデミーで初めてファシリテーションについて学んだ際、担当の八尾さんからは「ファシリテーターは準備を徹底する。そして現場では、その全て捨てる勇気も必要」と教わりました。その言葉を私も実践するようにしていますが、だからこそファシリテーションを学ぶには実際の現場で起きること・・・「場数」が必要なのだ、と痛感しています。
ファシリテーションで最も重要なのか、人と人との良質な対話の関係をつくることです。そのための基礎であり、そして最大の武器が「聴く力」です。ファシリテーションとは、そしてファシリテーターの役割について、全体、グループ、個々に対して、ここにいる全員がそれぞれできることがあることを確認しました。ファシリテーターの立ち位置や心構えについても、もう一度共有しました。
いよいよ次回は実践です。一番大事なのは、協力いただける「Gujo Society5.1」のメンバーのみなさんが、ワークショップが終わった時に「楽しかった!このメンバーで次に進みたい」と思ってもらえることです。そして参加する学生の「学び」になること。あと1週間、本番に向けて準備を詰めていきます。
准教授 小林謙一(こばけん)