空間をトレースして理解する「空間認識」
今年も始まった自力建設。一年生は5月31日の公表会に向けて必死で設計提案をまとめています。
学内からの要望で決まった今年のテーマは「木造建築倉庫」。単なる倉庫ではなく、魅力的な建築空間を提案するのですが、ほとんどの学生が人生ではじめての設計です。
建築専攻では、まずこの「空間認識」という授業で、「自分の周囲の空間を正確に把握し、図面にするスキル」を身に付けます。
この授業では手描きで「実測野帳」を描き上げます。「実測野帳」とは、建っている建物を図面にすること。一般に新築工事では図面をもとに建物をつくりますが、その逆ですね。
今年は2007年の自力建設「地空楼」を改修して倉庫をつくります。改修は既存の建物をしっかり把握することがスタートなので、まず「地空楼」の平面図の実測から。
不思議なもので、そこにあるものを縮尺を持った図面に変換することで、漠然と見るよりもずっと多くの情報を得ることができるのです。
次は2020年度の自力建設「みどりのアトリエ」の平面図も採ります。こちらは壁があって、建具あって、床が切り替わって……地空楼より複雑な設計です。倉庫には壁をつくることになる可能性が高いので、壁や開口部のある建物を実測するとヒントになります。
まずグリッドに柱を落として……。軸組構法の基本も同時に身に付いていきます。
地空楼に戻って今度は高さ方向の実測。展開図を描いていきます。
そして「床伏図」という骨組みの図面も描けるようにしていきます。
フリーハンドで図を描いてから、後から二人一組になって採寸していきます。採り忘れた箇所はないかなー?
毎年、この5月中頃に晴天のもと行われるこの授業は気温も風もとても気持ちがよく、アカデミーの木々の新緑が、新たな道に進もうとする学生さんを祝福するかのようです。
初めて描いた実測図。よく描けていますね。
自分の周囲の空間を把握するこのスキルは、例えば自分が好きな部屋や、登りやすい階段や、趣のある飾り棚などをササッと描いて測ることで、設計力が目に見えて向上しますので、設計に関わる人にはとてもおすすめです。一年生もこれから何かと実測図を採ることになるでしょう。
地空楼をしっかり把握できたので、どんな提案になるか、楽しみです。
木造建築教員:松井匠