グリーンウッドワーク指導者養成講座 ⑤森を見る
グリーンウッドワーク指導者養成講座、9月に実施予定でしたが台風で延期になり、11月に2回分まとめて開催しました。この講座、ふだんは私(木工教員の久津輪)と加藤慎輔さん(グリーンウッドワーク研究所)の2人で教えているのですが、今回はさまざまな人や団体と連携してみました。
前日の「器を作る」に続いては「森を見る」。今年は初めて、会場を森林文化アカデミー周辺ではなく美濃加茂市の「みのかも健康の森」とその周辺の里山にしました。
理由は、美濃加茂市と可茂森林組合が「里山の利活用」をテーマに取り組みを続けていること。かつて使われてきた里山林が放置され、民家を覆うほどになったり、シカやイノシシによる獣害が深刻化したりしたためですが、必要に迫られたとはいえスギやヒノキの生産が中心の森林組合にあって、里山を事業の柱にするのは珍しく、ある意味で先進事例とも言えます。
さらに森林文化アカデミーの女子学生が2人、来春から可茂森林組合に就職し、業務の1つとしてグリーンウッドワークの講座を運営していくことになったのです。
キーパーソンである美濃加茂市里山再生係長・山田夕紀さんに取り組みをご紹介いただきました。
民間の補助金を得て、3年かけて手入れした里山に足を踏み入れます。「人が手を入れた里山とはこんなに気持ちの良いものなのかと感激しました。今回の講座のクライマックスでした」と後で参加者が語ってくれました。
午前中は、植物図鑑を使って樹木を同定する実習。森林文化アカデミーの柳沢直 教授(植物生態学)が分かりやすい解説でガイドします。今年の参加者には森林総合研究所の研究員や、長野市の林務関係職員など、ふだん樹木解説をしている人たちもいるので、他の参加者をサポートしてくれました。
柳沢さんが植物としての樹の特徴を語り、木工教員の私が材料としての特徴を説明します。
加藤さんの指導で3本の樹を伐りました。アラカシ、ヌルデ、ウワミズザクラです。
午後は伐ってきた材で「鍋敷きにもなる樹木サンプル」づくり。樹皮を残して、四角い棒を1本ずつ作り、穴を開けて革紐で結びます。この指導者養成講座では削り馬と銑(ドローナイフ)を使うのが初めてだったので、削り馬の練習にもなりました。
この樹木サンプルは「身近な木を削ってもっと増やしたくなる」と参加者に好評でした。1〜2時間ほどで作れるので、今回のような講座に向いています。加工前に、樹皮をよく洗って綺麗にしておくのがポイントです。
講座の最後に、参加者のお住まいの地域でも樹木に詳しい人や、里山の利活用に取り組む団体はきっといるはずなので、そんな方たちと連携してグリーンウッドワークの活動を広げていってください、とお話ししました。1人で講座を運営する方が準備は楽だし費用も安く済みますが、いろんな人と連携することで講座は深みを増し、活動は広がっていくことを、私たち自身も実感しています。
ご協力いただいた美濃加茂市里山再生係、可茂森林組合のみなさん、ありがとうございました。