アカデミーに馬が来た!「馬搬・馬耕体験実習」
森林文化アカデミーでは、林業を教える学校としては全国でも珍しく(日本ではおそらく唯一。ドイツの林業大学では普通にあるそうですが。。)馬で木を山から運び出す「馬搬」や馬の力で田畑を耕す「馬耕」の実践授業を5日間連続で実施しています。これぞ「森林文化」です。
実は、これからの時代に必要な「古くて新しい」技術だと感じています。伝統だけではなくこれからの時代に様々なことが期待できると考えています。林業の面からしても、道がつけにくく規模も小さい山で、持続可能に林業をしていくには、馬搬ほど優れたものはありません。「本当に山のことを考えたら、最終的に馬になった」とは岩手県遠野地域の山の古老たちから馬搬の技術を継承した今回の講師岩間さんの言葉。
そして単なる動力としてだけでなく、馬は、セラピーやレクリエーション、人材育成トレーニング(イギリスではリーダーシップ研修で使われている)、景観そして循環(下草を食べてくれる上に、馬糞は堆肥になる)を伝えるもの、などなどSDG’sのゴールをいくつも達成できてしまうような生き物なんです。
そんな馬搬馬耕の授業を、先月2月1日〜5日に実施しました。その時のレポートを、学生の酒井さんが書いてくれたので以下に紹介します。
<以下酒井さんのレポート>
2月1日から5日までの5日間、森林環境教育の授業「馬搬・馬耕体験実習」のために、岩手から、その道のプロ中のプロである岩間敬(イギリスの大会で優勝されている)さんと、弟子の倉本さん、そして2頭の馬(黒毛のテラと栗毛のキリ)がやって来てくれました。広いテクニカル広場の一角に、2頭の馬がいるだけで、景色が変わり、いろんな人が足を止め、遠目に眺めたり、近くに寄って来たりと、穏やかな空気が漂った5日間でした。
1日目は、馬との綱引き、引馬、スノーチューブ乗りなどの、馬とのふれあいから始まりました。
2日目には、演習林に行き、実施に伐採した丸太を引くところを見せてもらいました。岩間さんの指示で、どんな悪路も坂も登ったり下りたり、太くて長い丸太も一気に引いたりする、身体中汗びっしょりのテラの馬力に圧倒されました。
3日目は、実際に引馬をして、丸太を山から運ぶ体験をしました。木と木の間を抜けながら、丸太を木に引っ掛けないよう気を付けて、倒したところから玉切りした丸太を下まで運ぶのですが、なかなかお手本通りにいきません。「馬と丸太が見えるように」と言われ、馬の斜め前に立つのですが、キリに顔で押され、丸太を見る余裕もなく、後ろからの岩間さんの指示に頼りっぱなしで、何とか運ぶことができました。
4日目も昨日の作業を継続。そしてお昼休みには、うだつの街中にある「うまつなぎ石」に馬をつなぎに繰り出しました。テラが歩いているだけで、通りかかる人の顔が笑顔に。うまつなぎ石につながれたテラを、始めは遠目で見ていた人たちも、近くに寄って来て写真を撮ったり触ったりと、あっという間に人だかりに。みんなの笑顔が嬉しかったです。
最終日5日目も、演習林に行き、伐採した木を運びました。今回は倒した木丸ごとです。演習林からテクニカル広場まで、2~3本の丸太を一気に運ぶテラとキリ。
「とびと馬があれば、どんなところでも木を運び出すことができる」「日本の山の傾斜を活かせばエネルギーを使わずにに材を出せる」「ガソリンを使わずに木を山から出せる馬搬はアニマルカーボンオフセットですね」と、岩間さんはおっしゃいます。
馬を指示通りに動かす技、この木を運ぶならどのコースで行くかなど、馬を知り、山を知らなければできません。一流の技を目の当たりにし、教えていただいたことは、本当に素晴らしい体験でした。
馬がいるだけで、景色だけでなく、空気も人の心も穏やかになる。遊びもできる。仕事もできる。さらに、エコである。・・・馬と過ごした5日間は、本当に貴重な時間であり、癒しの時間でもありました。また、来年度の「馬搬・馬耕体験実習」を楽しみにしています。次は、馬耕かな。
森林環境教育専攻1年
酒井 浩美