~里山の暮らしを守るために、動物との距離を考える~
引き続き、学生が実習の様子を報告してくれています。是非ご覧ください
前回の様子はこちらから
「森林獣害の基礎」の授業、今日は里山での獣害がテーマです。
現地へ行く前に担当教員がなめした野生動物のことを復習します。この毛皮はシカとカモシカ?いえいえどちらもシカ。夏毛と冬毛なんです。そして頭骨の骨格標本を観察。イノシシの頭・首の骨の頑丈さに少々怖気づきつつ、今回の視察先へ向かいます。
今回の視察先は美濃加茂市です。
美濃加茂市役所農林課の渡邉さん、藤吉さん、横家さんに、イノシシ等によって多発する農作物の被害と対策の取組についてお話を伺いました。
市では、「里山千年構想」として、イノシシやシカの防除・捕獲と里山整備に取り組み、鳥獣被害を減少させること、整備後の里山の森林空間の活用(森のようちえん、森のがっこう)、森林資源の活用(アベマキ学校机プロジェクト)などを進めています。
鳥獣被害を減らす対策としては、【狩猟免許取得の補助】 【ICTわなの活用】 【ネット柵の設置バッファゾーンの整備】【猟友会による毎朝パトロール】などが積極的に行われています。このような努力の結果、およそ10年間で鳥獣による被害額が当初の5516万円から2013万円まで減少しているそうです。
美濃加茂市の取り組みの説明を受けた後は、現場に出て市役所職員兼猟友会有害捕獲部会 会長の横家さんからレクチャーで実践的な罠の仕掛け方を学びました。我々も練習で罠を隠してみましたが・・・。実際にやってみると隠すのが意外と難しい。
野生動物は人が思っているよりも賢く、耳鼻もいいので、それをイメージした罠の設置が必要ということが良く分かりました。※体験後罠は回収しました。
お昼ご飯は美濃加茂市伊深地区にある「いぶカフェ」で、鹿肉のカレーライスと鹿肉ハンバークランチをいただきました。旧伊深村役場を改装したジビエ料理の店です。五感を使って獣害問題を考えます。
午後は三和地区の農事組合法人みわほたるさんへ伺い、国の交付金を受けて設置している防護柵や被害の状況を視察させてもらいました。
この地区では地域の水田や畑への農業被害緩和のため、防護柵の設置をしており、山林と田畑の境に20~21年度に約2㎞ずつ防護柵を設置しました。防護柵を設置するに当たって課題となるのが
・資材の費用
・設置するための労力
・設置後の維持管理
資材の費用は市の助成等で賄っていますが、施工は地域住民の方々で行う必要があります。
施工には膨大な労力がかかりますが、みわほたるさんでは付近に作られている林業作業道に沿って設置することで、移動や設置にかかる労力を低減するなどの工夫をこらしていました。
それでも、延々と柵を張っていくのは大変そう…
設置が完了してもそれで安心というわけにはいきません。
放置していると雑草が繁茂してきて、そこが破られると動物たちの通路になってしまうこともあるようです。そのため、設置後の草の管理や、網に穴が開いていないかの見回りも必要になってきます。
川の際まで柵を張って安心かなと思っていたところ、川の段差を利用してシカが侵入してきてしまったとのことです。野生動物も餌を探して何とか柵の向こう側へ行こうと必死です。
柵の内側にある田んぼの水稲の様子です。稲穂の先端に違和感が・・・。葉の先端を少しずつ食べられています。その付近には足跡もありました。これはシカの痕跡のようです。
現場を見せてもらい、防除と同時に捕獲の実際に罠の設置を体験して、罠一つ仕掛けるにも、捕獲したい動物の生態をよく知り効果的な場所を見極めること、山の中での作業に習熟することが不可欠だと思いました。視察を受け入れてくださった美濃加茂市の皆さま、本当にありがとうございました。
報告:クリエイター科1年林業専攻(小川・河合・紀平)
編集:新津裕